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【連載】山内先生の公開カンファランス

第37回 胆嚢炎の治療後、下痢が続く患者さん

解説 山内豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

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[はぴぃさんから提供された事例]
胆嚢炎で入院している80歳代の患者さん。2週間近く絶食となり、輸液と抗生物質を投与していました。その後、食事を再開しましたが、1日5回以上の泥状~水様の便がありました。便検査では異常はなく、整腸剤が追加されました。
下痢で食事を思うように摂ることができず、皮膚トラブルも発生、抗生物質の投与が終わった後も排便状態は変わりませんでした。

→あなたなら、こんなときどう対応する?


上記の事例についてみなさんに考えてもらいました。
アンケートは、ナース専科「コミュニティ」にて、実施、回答社数は98人です。

みんなの回答

Q1.下痢の原因をアセスメントするために、集めたほうがよいと思う情報をすべて書いてください。

●食事内容と摂取量の観察。水分量の観察。入院前の排便状況。また腹痛の有無(CITYさん)

●発熱の有無、食事摂取量、腸の蠕動運動の状態(聴診器で聴取)、血液検査データを見る(WBC、CRPなどをみて炎症、感染は起きていないかを確認)、抗生剤のアレルギー反応はないか、ほかのアレルギー疾患の既往、排便はトイレか、おむつ使用か→おむつ使用なら下痢が続いている
ので、臀部の皮膚トラブルを起こしていないか観察する(匿名さん)

●内服薬、食事内容と摂取量(こばこさん)

●輸液のみで食事を取ってないことと、抗生剤により腸が弱っていると考えられるため、腸蠕動音を聴取する。また、胆嚢炎により胆汁分泌が異常で、脂質吸収が困難になっていると考えられるため、脂質の摂取状況を確認する。皮膚トラブルは黄疸も考えられるため、直接ビリルビン値を検査する必要があると考えます(ねじまき鳥さん)

●発熱、腹部症状、食事の種類、油物が多くないか、抗生物質が長期で投与されていたので、それにより下痢を起こしやすい腸内環境かもしれない(いしこさん)

●食事の形態や摂取量の把握、便の1回量、ノロウイルスの検査(りんさん)

●血液データ、腹部レントゲン、CT(あきさん)

●抗生剤の変更の必要性(青空さん)

●水分摂取量、輸液種類、腸蠕動音、活動量、腹痛(匿名さん)

●腹部症状の有無・程度、熱、食事内容、抗生剤の種類、投与期間(ななさん)

●感染徴候、便検査、血液検査、腸音(ニョニョさん)

●抗生剤の使用期間、食事形態、脱水の有無、口腔内の状況(にさん)

●抗生剤の種類、食事形態、口腔内の状況(あたみさん)

●体温、脈拍、血圧、腹痛・吐き気・嘔吐の有無、腸音、採血データ(血算、生化学)、腹部緊張感(私も我が子も三姉妹さん)

●排便の量、性状、臭い、出るタイミング、食欲、食事形態、採血データ、腸蠕動、腹部レントゲンやCT、随伴症状(ももさん)

●便の色、下痢腹痛が出るタイミング、腹痛、嘔気嘔吐、肛門痛、腸蠕動音、腹壁が固さ柔らかさ(ひなさん)

●便潜血検査、CD抗原検査、血液検査、下血・吐血などの出血の有無、嘔気・嘔吐の有無、腸蠕動音の聴取・腹壁の固さ・腹部膨満の有無、腹部CT検査(ひとみんさん)

●電解質の異常を知るために、血液データの情報。炎症反応の程度の情報。抗生剤の効果の情報。胆嚢炎は主に結石がある場合が多いため、その有無の情報。食事が開始され、水分摂取量と、食事の摂取量の情報(しおりちゃんさん)

このような状態の患者さんには、どのようなケアが必要であると考えますか。

●下痢による脱水に注意が必要。また、下痢によって皮膚トラブルも起こしているので、清潔の保持に努める(CITYさん)

●臀部の皮膚の清潔保持に努める。食べやすい性状のものから食事摂取を促す。高齢であるため、トイレ歩行時は転倒に配慮し、必要時は介助する。臀部の皮膚トラブルを悪化させないように、離床を促す→高齢でもあり、胆嚢炎を発症した後のため。発熱などバイタルサインに留意しながら離床を促していく(匿名さん)

●おむつ交換や体位変換をまめにして皮膚トラブルを防ぐ。脱水にならないようにする(こばこさん)

●下痢により、臀部にびらんや痛みが起こる可能性があり、清潔に保つ。脱水の早期発見(ねじまき鳥さん)

●食事をお粥や脂質の少ないものから始める。腹部症状や発熱を観察しながら少量ずつ摂取する(いしこさん)

●絶食の期間が長かったので1回の摂取量を減らして回数を増やす。皮膚トラブルに対して外用薬を使用し、食事への意欲を増進させる(りんさん)

●整腸剤の確実投与、医師と栄養状態の評価、皮膚トラブルの増悪予防のための体位変換や保清、皮膚保護、廃用症候群の予防(あきさん)

●低栄養状態と脱水に対するケア、および皮膚トラブルに対するケア(かみださん)

●胃腸に優しい食事を与えるくらいしかなさそう。あとは高カロリー輸液で絶食を続けて経過観察とか? でも、それでは退院できませんね。そのほかには皮膚トラブルに対する観察とケアは忘れずに(設定さんさん)

●皮膚トラブルの改善、栄養士の介入、インアウトバランスの適正化(かんこさん)

●下痢が出ると、肛門周囲がただれるので、微温湯で洗浄して清潔にする。水分補給する(リーフレタスさん)

●下痢で食事が思うようにとれないため、下痢の原因を探し下痢が治まるよう整腸剤、場合により医師に下痢止めを打診する。皮膚トラブルの改善に努める(匿名さん)

●食事形態を消化吸収のいいものへ変更、医師に輸液の検討を促す、臀部の皮膚ケア、オムツを軟便などを吸いやすいものへ変更(のんさん)

●抗生剤が使用されているときや後は下痢をしやすいので使用期間を調べます。また医師に相談したり栄養士に消化のよいものを依頼します。栄養剤で慣らしてから食事に切り替える方法もあるかと思います(にさん)

●皮膚トラブルに対するスキンケア。食事の工夫。脱水の予防(ももさん)

●スキントラブル防止のケア。十分な保清。頻回な下痢により脱水状態が考えられるので、補液されていなければoutオーバーのはず。歩行してる人であれば転倒転落のリスクもあるので環境整備。寝たきりになってしまっているなら廃用症候群の予防(イルカさん)

Q3.Q2で必要と考えたケアを実施するために、どのように段取りを行いますか。具体的に教えてください。

●下痢の回数、量と水分摂取量の観察を行い、水分バランスに問題があれば補液などを行う。排便後は、速やかに臀部の汚物を取り除き、清潔を保つ(CITYさん)

●1.胆嚢炎で点滴治療、絶食期間も長く、長期に臥床していたため、体力の増強を考え、食べやすいものから食事摂取量を増やしていく。
→食事摂取が難しいようであれば、主治医と相談し、経口栄養剤なども検討する。栄養士とも相談し、食べやすい食事の性状も検討する。
2.発熱がなく、バイタルサインに異常がなければ、ポータブルトイレの使用から、手すり使用によるトイレ歩行の介助と離床時間を長くしていき、臀部の皮膚トラブルの改善に努める(匿名さん)

●2時間おきの体位変換(こばこさん)

●検査結果で、電解質異常がないかを見る。尿量、皮膚や粘膜の乾燥の観察。頻回に病室を訪問して、様子を観察し、おむつなどに便の付着がないかをみる(ねじまき鳥さん)

●医者や栄養士と食事の種類について相談する。発熱や採血のデータなどを観察するようにする(いしこさん)

●栄養科との相談。N S Tとの相談。WOCナースとの調整(りんさん)

●医師とカンファレンス、皮膚保護はWOCと相談して、ケアの計画を立てて、スタッフで実施していく(あきさん)

●どのような食事なら取れるか聞き取り、水分摂取を促す(あいさん)

●医師に食事内容・回数・皮膚トラブルに対する軟膏等の処方について相談。対象と現在の状況と今後の対応を検討し、ケアの計画を経て、実施する(ななさん)

●まずは情報収集、薬剤師にも聞いて薬で下痢をしやすいものを使っていないかを確認。現状で考えられる原因を予想する(にさん)

●褥瘡チームまたは、皮膚科にコンサルトして、受診結果で皮膚トラブルに対してケアします(かめさん)

●看護師間ではカンファや送りで共有し、必要なことはドクターやリハにも相談していく(イルカさん)

●医師に下痢が続いていることの報告。(抗生物質終了しても改善していないということ)。
さらに、医師から管理栄養士へ食事について話をしてもらう(kさん)

●栄養部との食事内容の調整を行い患者へゆっくり食べるよう指導。臀部へ塗布できる保湿剤がないか医師へ確認する(Yさん)

●食事中の様子を観察する。下痢の原因となる要素があれば患者さんに伝え、どのように食事をしたらよいのか伝える。チームに報告し、今後も食事摂取状況、受け入れ状況をチームで観察していく(潤さん)

山内先生の解説

事例からわかることと情報収集が必要なことを考える

 まずは、事例からわかること、気になることを整理していきましょう。絶食後に食事を再開したところ、下痢になったということですね。まず、抗生物質の副作用で下痢になることがある、ということはみなさんご存じだと思います。ですから、患者さんが下痢を発症したのは、抗生物質の投与が終わってからなのか、終わっているなら何日経っているのか、もしくは継続中なのかといったことが、気になります。

 次に、絶食後の食事の再開というところ。入院中ですから、絶食後に合った食事が提供されていると考えられますが、本当に合ったものになっているのか。医師のオーダーが違っていることはないかを確認することも必要かもしれません。

 便の性状は、泥状~水様便であることから下痢といえますね。この状況での便検査に異常はなかったとのことですが、ここで行った便検査というのはどこまでのものだったのでしょうか。通常の便検査であれば、便潜血などはわかります。下痢便の原因を突き止めるためには、細菌検査も必要だと考えられますが、そこまで行ったかどうかは事例からはわかりません。異常なしと書いてあるところを、通常の便検査で便潜血などはなかったと解釈するか、細菌検査でも異常はなかったと解釈するかで、Q1の回答も変わるでしょう。

 整腸剤が処方されています。この整腸剤が患者さんの状態に合っているのかどうかもアセスメントして確認しなければならないことの1つと考えられます。事例を読んで、考えてほしいこと、アセスメントしなければならないと思うことは、このようになります。それでは、回答をみていきましょう。

何のためのアセスメントなのかを考えながら実施する

 Q1では、下痢の原因をアセスメントするためにはどのような情報が必要かを聞きました。回答をみていく前に、下痢のアセスメントについて整理しておきましょう。下痢の患者さんのアセスメントは特殊な疾患や症状ではないですから、病棟や在宅で働いている看護師であれば、行ったことがあるのではないでしょうか。ですから、あまり迷わなかったかもしれません。

 下痢の患者さんのアセスメントは、大きく3つの目的に分けられます。1つは下痢の原因を突き止めるため、次に今、起こっている下痢に対処するため、今後、下痢によって引き起こされる可能性のある症状があるかどうかの確認のため。普段、下痢の患者さんのアセスメントをするとき、みなさんはこういった目的を意識し、区別してアセスメントを行っていますか? 今回はあえてQ1では、原因に限定して聞いており、そこを意識して回答できているかどうかが、ここでのポイントになります。

 回答をみてみると、下痢の原因のアセスメントに関することのみを書いている人もいれば、下痢の患者さんのアセスメント全般を書いている人もいます。例えば、食事内容や摂取量などは原因を突き止めるために必要な情報といえますが、IN-OUTバランスとなると、下痢によって脱水が引き起こされる可能性があるかどうかを確認するための情報といえ
ます。

 もう少し詳しくみていくと、下痢の原因を突き止めるために必要な情報は、便の細菌検査や食事内容の見直し、抗生物質の副作用の有無などが挙げられます。今、起こっている下痢に対処するための情報収集は、便の性状や服薬している整腸剤の種類などが挙げられるでしょう。最後に、下痢によって引き起こされる可能性のあることといえば、脱水や皮膚障害などが考えられます。これらは、血液検査の結果や皮膚の状態などを確認することで情報が得られます。

 このように普段は一連の流れで行っていることも、何のために行っているのかを考える習慣をつけるようにしてください。そうすることで、あなたの頭の中も整理され、人に伝えたり、指導したりするときにも役立てることができるでしょう。

ケアのリストアップとその実施の手順を考える

 Q2は、現在起こっている下痢のケア、これから起こるかもしれないことへの予防などをリストアップしてもらいました。ここでは、考えられるものをすべて挙げてほしいですね。具体的にここで挙げられるのは、皮膚トラブルや低栄養、脱水、整腸剤の見直し、食事の見直しなどが考えられます。ケアというとちょっと違うかもしれませんが、何か別の疾患が潜んでいないかを確認することも必要かもしれません。また、1つやることをみつけたら、それで安心してしまうのではなく、ほかにないかを考えることも大切です。

 Q3は、Q2で行うことがある程度リストアップできていないと、特に書くことがないという状況になってしまったかもしれません。Q2で挙げたものに、優先順位をつけ、どう実施するとスムーズに行うことができるか、具体的にどのように行うのかを考えてもらいました。

 臨床では、いつも思いついたものがすべてできるとは限りません。時間がない、マンパワーがないという問題はどの施設でもあることです。限られた中で、何から行うとよいのか、スムーズに行うためにはどんな手順で行うとよいのかを考えられなければなりません。また、看護師だけで完結できず、医師などの協力が必要な場合には、どう伝えると協力・実施してもらえるのかを考えることも必要です。


事例つづき
管理栄養士と相談して、食形態を変えたり、整腸剤の種類や量を変えたりすることで改善できました。それと並行して、皮膚トラブルには軟膏を塗布するケアを実施しました。