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【連載】山内先生の公開カンファランス

第122回 【解説編】胆嚢炎の治療後、下痢が続く患者さん

解説 山内豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/米国・登録看護師、診療看護師/保健師

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[はぴぃさんから提供された事例]
胆嚢炎で入院している80歳代の患者さん。2週間近く絶食となり、輸液と抗生物質を投与していました。その後、食事を再開しましたが、1日5回以上の泥状~水様の便がありました。便検査では異常はなく、整腸剤が追加されました。
下痢で食事を思うように摂ることができず、皮膚トラブルも発生、抗生物質の投与が終わった後も排便状態は変わりませんでした。
→あなたなら、こんなときどう対応する?


事例からわかることと情報収集が必要なことを考える

 まずは、事例からわかること、気になることを整理していきましょう。絶食後に食事を再開したところ、下痢になったということですね。まず、抗生物質の副作用で下痢になることがある、ということはみなさんご存じだと思います。ですから、患者さんが下痢を発症したのは、抗生物質の投与が終わってからなのか、終わっているなら何日経っているのか、もしくは継続中なのかといったことが、気になります。

 次に、絶食後の食事の再開というところ。入院中ですから、絶食後に合った食事が提供されていると考えられますが、本当に合ったものになっているのか。医師のオーダーが違っていることはないかを確認することも必要かもしれません。

 便の性状は、泥状~水様便であることから下痢といえますね。この状況での便検査に異常はなかったとのことですが、ここで行った便検査というのはどこまでのものだったのでしょうか。通常の便検査であれば、便潜血などはわかります。下痢便の原因を突き止めるためには、細菌検査も必要だと考えられますが、そこまで行ったかどうかは事例からはわかりません。異常なしと書いてあるところを、通常の便検査で便潜血などはなかったと解釈するか、細菌検査でも異常はなかったと解釈するかで、Q1の回答も変わるでしょう。

 整腸剤が処方されています。この整腸剤が患者さんの状態に合っているのかどうかもアセスメントして確認しなければならないことの1つと考えられます。事例を読んで、考えてほしいこと、アセスメントしなければならないと思うことは、このようになります。それでは、回答をみていきましょう。

何のためのアセスメントなのかを考えながら実施する

 Q1では、下痢の原因をアセスメントするためにはどのような情報が必要かを聞きました。回答をみていく前に、下痢のアセスメントについて整理しておきましょう。下痢の患者さんのアセスメントは特殊な疾患や症状ではないですから、病棟や在宅で働いている看護師であれば、行ったことがあるのではないでしょうか。ですから、あまり迷わなかったかもしれません。

 下痢の患者さんのアセスメントは、大きく3つの目的に分けられます。1つは下痢の原因を突き止めるため、次に今、起こっている下痢に対処するため、今後、下痢によって引き起こされる可能性のある症状があるかどうかの確認のため。普段、下痢の患者さんのアセスメントをするとき、みなさんはこういった目的を意識し、区別してアセスメントを行っていますか? 今回はあえてQ1では、原因に限定して聞いており、そこを意識して回答できているかどうかが、ここでのポイントになります。

 回答をみてみると、下痢の原因のアセスメントに関することのみを書いている人もいれば、下痢の患者さんのアセスメント全般を書いている人もいます。例えば、食事内容や摂取量などは原因を突き止めるために必要な情報といえますが、IN-OUTバランスとなると、下痢によって脱水が引き起こされる可能性があるかどうかを確認するための情報といえ
ます。

 もう少し詳しくみていくと、下痢の原因を突き止めるために必要な情報は、便の細菌検査や食事内容の見直し、抗生物質の副作用の有無などが挙げられます。今、起こっている下痢に対処するための情報収集は、便の性状や服薬している整腸剤の種類などが挙げられるでしょう。最後に、下痢によって引き起こされる可能性のあることといえば、脱水や皮膚障害などが考えられます。これらは、血液検査の結果や皮膚の状態などを確認することで情報が得られます。

 このように普段は一連の流れで行っていることも、何のために行っているのかを考える習慣をつけるようにしてください。そうすることで、あなたの頭の中も整理され、人に伝えたり、指導したりするときにも役立てることができるでしょう。

ケアのリストアップとその実施の手順を考える

 Q2は、現在起こっている下痢のケア、これから起こるかもしれないことへの予防などをリストアップしてもらいました。ここでは、考えられるものをすべて挙げてほしいですね。具体的にここで挙げられるのは、皮膚トラブルや低栄養、脱水、整腸剤の見直し、食事の見直しなどが考えられます。ケアというとちょっと違うかもしれませんが、何か別の疾患が潜んでいないかを確認することも必要かもしれません。また、1つやることをみつけたら、それで安心してしまうのではなく、ほかにないかを考えることも大切です。

 Q3は、Q2で行うことがある程度リストアップできていないと、特に書くことがないという状況になってしまったかもしれません。Q2で挙げたものに、優先順位をつけ、どう実施するとスムーズに行うことができるか、具体的にどのように行うのかを考えてもらいました。

 臨床では、いつも思いついたものがすべてできるとは限りません。時間がない、マンパワーがないという問題はどの施設でもあることです。限られた中で、何から行うとよいのか、スムーズに行うためにはどんな手順で行うとよいのかを考えられなければなりません。また、看護師だけで完結できず、医師などの協力が必要な場合には、どう伝えると協力・実施してもらえるのかを考えることも必要です。


事例つづき
管理栄養士と相談して、食形態を変えたり、整腸剤の種類や量を変えたりすることで改善できました。それと並行して、皮膚トラブルには軟膏を塗布するケアを実施しました。