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【連載】山内先生の公開カンファランス

第38回 認知症で食欲不振から脱水になった患者さん

解説 山内豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

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今回の事例のように高齢の患者さんの場合、在宅に戻ったときにどのようなリスクがあるのかも念頭に置いてアセスメント・ケアを行っていくとよいでしょう。


[はぴぃさんから提供された事例]
80歳代の認知症のある患者さん。食欲不振から脱水となり入院となりました。維持輸液とビーフリード®を点滴し、脱水は改善されつつありましたが、認知症の影響もあり、食事やβ遮断薬の内服を拒否することがありました。
→こんなとき、あなたならどうする?


みなさんは、どう考えたのでしょうか。ナース専科コミュニティ会員に考えてもらいました。回答者数は、97人。

みんなの回答

Q1.この患者さんに起こるかもしれないリスクとして、どのようなことが挙げられますか。

●認知症のために食事をするという行為自体がわからず、自分で摂取する方法を忘れている。そのため、食欲低下、栄養低下、再度の脱水、最悪は餓死が考えられる。また、内服拒否による疾患の悪化、それに伴い脱水も含めて脳梗塞などの脳疾患のおそれが考えられる(ようこさん)

●食欲不振による脱水や栄養状態の悪化。認知力低下によって体調不良を表現できないために不穏行動を起こす可能性がある(ハムちゃんさん)

●入院中は輸液、点滴で脱水が改善されましたが、退院したら、認知症があるので、自分からは率先して水分を摂らないので脱水を起こすおそれがあると思う(美女さん)

●内服ができないことで血圧の変動が出る可能性や、栄養状態が悪化した場合、生命維持にもかかわる。また動けなくなれば褥瘡など新たな問題が生じる可能性も出てくる(いしこさん)

●食事の拒否があるということは、再度、脱水になる可能性がある(3さん)

●栄養低下、便秘、ADL低下、意欲低下(ご老体さん)

●食事が摂取できないことによる体重減少、便秘、貧血、体力の低下。内服拒否のため、不整脈の出現(knさん)

●点滴の自己抜針。電解質異常。脱水による発熱。意識レベル低下(よしさん)

●栄養状態の悪化や、筋力低下により褥瘡ができる可能性や、転倒による骨折のリスクがあると思う(かるがーもさん)

●内服状況や食事や水分摂取状況、また血圧の変動に注意していく必要がある(CITYさん)

●再度食欲不振による脱水や栄養状態の悪化。認知力低下によって体調不良を表現できないために不穏行動を起こす可能性(ハムちゃんさん)

●認知症の悪化・進行、食欲不振により体重低下、栄養低下、排泄コントロール不良、血圧の上昇(ひなさん)

Q2.この事例で情報収集やアセスメントの際に、特に気をつけなければならないことはなんだと思いますか。

●家族構成、キーパーソン、日常生活、日常のADL動作、保清や排泄、摂食状況。さらには内服の管理、服用方法など(ようこさん)

●検査データや、食事摂取、内服状況、本人の精神状態を気をつけてみていく必要もありますが、生活歴から趣味や嗜好を把握して、興味をもつことや好むものなどで対応を試みる(ハムちゃんさん)

●本人の理解力がどこまであるか、周りの環境(誰か気にかけて様子を見たり、世話をしてくれる人がいるか)を確認する(美女さん)

●なぜ食事が摂取できないか。食べられるものがないか。血液検査データを見ながらアセスメントが必要(いしこさん)

●なぜ、拒否をするのかという本人なりの思いを聞くこと。本人の立場に立ってみること(3さん)

●食事が摂れない原因は、認知症だけなのか、義歯は合っているのか、食事形態は合っているのか、腹部症状があるのか、環境が変わったからなのか等をアセスメントしてみる(ご老体さん)

●認知症により、本人からの情報収集は困難であるが主訴を大事にし、全身状態の観察に努める。家族から情報を得られるようにする(knさん)

●バイタルサイン、意識レベル(よしさん)

●ごはんが食べられていたときの様子と今の様子の違い(かるがーもさん)

●普段のADL、基礎疾患の有無、BPSDのうち、特に出現しやすい症状(ぷらんぷらんさん)

●β遮断薬が飲めないことによる症状、いつ認知症状が強くなるのか、どの程度の認知度なのか、何ができて何ができないのか(ぱんさん)


山内先生の回答

入院中・退院後も含めてリスクを考える

 早速、みなさんの回答とともに事例をみていきましょう。Q1の回答は、大きく2つのグループに分かれていました。1つのグループは症状や状況を、もう1つのグループは疾患名を書いている人たち。Q1は、どのようなリスクが考えられるかという質問ですから、どちらも間違いではありません。ただ、どちらかというと症状や状況を挙げたほうが、具体的になっているため、次に何をするかという考えにつながりやすいため、よいのではないでしょうか。

 回答をみてみると、認知症によるリスク、今起きている脱水によるリスク、β遮断薬を内服していないことで起こるリスクなどを挙げていました。これらはもちろんリスクとして想定しなければならないことですが、記載されている内容が院内のことばかりの人が多かったように思います。

 この患者さんは、もともと在宅か介護施設などで生活していたと考えられます。今回の入院の原因である脱水症状が改善され退院となったとしても、何の対策もせずに同じ生活に戻ったら、また脱水を繰り返す可能性があるのではないでしょうか。入院中に新たな症状が出ないようにすることも大切ですが、退院後の患者さんのリスクも想定して、回避す
る方法はないかと考えることも、看護師としては必要なことだと思います。

 Q2は何を情報収集してどうアセスメントするかという質問ですね。まず、情報収集やアセスメントは、目的をもって行うものです。ただ単に患者さんのバイタルサインなどを確認するのではなく、必ず、どういうことを確認するために、どうアセスメントをすればよいのかを考えるように習慣づけてください。ここでの情報収集とアセスメントの目的ですが、今回の場合は、Q1で挙げてもらったリスクについて、予測し、予防するためというのが考えられますね。ですから、Q1で挙げたものについて、確認するという内容が入っているとよいでしょう。Q1とQ2を連動させて回答しているとよいですね。



次ページも引き続き、みなさんのアセスメントの結果と山内先生の解説を紹介します。