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【連載】よくわかる! 気管切開の大事なところ!

気管切開 チューブの種類

執筆 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

気管切開チューブを使用する状況は、①気管切開術の直後、②陽圧人工呼吸が必要な場合、③陽圧人工呼吸が必要でない場合に分けられます。それぞれの状況で、どの気管切開チューブを使用するとよいか解説していきます。


目次


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気管切開チューブの種類と使い分けを理解しよう!

気管切開チューブを使用する状況は大きく3つ

気管切開チューブが必要とされる患者さんの状況は、おもに次の3つに大別されます。
❶気管切開術の直後
❷陽圧人工呼吸が必要な場合
❸陽圧人工呼吸が必要ではない場合
使用目的やそれぞれの状況に応じて、必要とされる機能を有したチューブを選択します。
現在、市場に出回っている気管切開チューブは比較的高機能のものもありますが、患者さんの状況によっては不要な機能もあります。また、高機能のチューブは購入金額が高額なうえ、状況によって保険請求ができない場合もあります。そのため、適切にチューブを選択することが必要です。

気管切開のチューブの種類と使い分けの理由

気管切開直後に使用する場合:カフ付き、カフ上部吸引付き

カフ付きが必要な理由
気管切開術の直後は、切開部からの出血があります。出血が止まるまでは血液が気道に流れ込む可能性があるため、カフ付きのチューブを使用します。カフがあれば完全に流れ込みを防げるわけではありませんが、ある程度の防御にはなります(図1)。ただし、小児は気管壁が脆弱であるため、一般的にカフなしチューブを使用します。気管切開に先立って、経口または経鼻挿管されていることが多いので、そのチューブがカフなしの場合には、気管切開チューブもカフなしのものを準備します。

気管切開術を行った患者さんの呼吸と嚥下の図

カフ上部吸引付きが良い理由
切開部からの出血とともに、口腔から流れ込んでくる唾液や、鼻腔・副鼻腔などから流れ込んでくる分泌物がカフ上部に貯留します。気管切開チューブには、カフの上部に吸引チューブが装備されている製品(図2)があり、貯留した分泌物を吸引して除去することができます。元々は発声を目的に開発されたチューブのため、「スピーチカニューレ」などと呼ばれることもありますが、現在はおもに吸引に使われます。

吸引が不十分であったり、カフ上部吸引が装備されていないチューブを使用している場合、カフの圧が減っているタイミングで首を曲げたり、チューブに接続されている人工呼吸器回路や酸素チューブなどを動かすことで気管切開チューブの位置がずれると、カフと気管壁の間に隙間ができることがあります。すると、貯留していた分泌物が一気に肺に向かって流れ込んでしまいます。

カフ上部吸引付きの図

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陽圧式の人工呼吸器を使用している場合:カフ付き、カフ上部吸引付き、カフ自動調整付き

カフ付きが必要な理由
現在、一般的に使われている侵襲的人工呼吸器(IPPV)は、陽圧式の人工呼吸器です。患者さんの気管に挿入・留置されたチューブに陽圧の吸気ガスを送り込み、その圧力で肺を内側から膨らませます。患者さんの身体と機械の接点となる部分がぴったり閉じていないと、圧力が漏れてしまい十分に肺を膨らませることができません。
気管切開チューブで患者さんの身体と接点となるのは、チューブの中央から先端にかけての部分で、気管とほぼ並行になっているところです。成人の気管の太さは直径約2.5㎝といわれています。気管切開チューブはできる限り太いほうがカフと気管壁の接触がよくなり、低いカフ圧で確実に上気道と下気道を分離できます(図3)。また、長期間の陽圧人工呼吸を行う場合には、カフの形状もできるだけ大きく、柔らかい素材が理想です。

チューブの太さと陽圧の図

カフ上部吸引付きが良い理由
気管切開術直後のようには出血や分泌物が多くない場合でも、長期人工呼吸を継続する患者さんは喉頭蓋の機能が悪く、口腔や鼻腔からの分泌物を常に誤嚥している状態がよく見受けられます。カフ上部吸引を定期的に行うことで、分泌物が下気道へ流入し、感染症などを引き起こすのを防ぐことができます。

カフ圧自動調整機能付き:特殊なチューブ
数時間ごとにカフ圧をチェックするだけでは、適切なカフ圧を継続させることは困難です。長期人工呼吸が必要な患者さんには、カフ圧の調整を自動的に行う気管切開チューブの使用を考えます。特に上気道からの分泌物の流れ込みで、肺への障害が重大な問題となる病態の患者さんには、このようなチューブも適応があります。

人工呼吸器から離脱を進める段階で使用する場合:カフ付きまたはカフなし

一般的な気管切開チューブ:一重管(カフ上部吸引付き、またはなし)
人工呼吸器からの離脱を短時間から進めている時期であれば、最も確実なのは、大容量ネブライザー(インスピロン®など)で持続的に加湿する方法です。そして、人工呼吸器を使用しているときはカフが必要であるため、一重管チューブ(図4)を使用します。気切孔からの分泌物の流出が多い患者さんには、カフ上部吸引付きが必要です。

一重管の図

また、人工呼吸器からの離脱を開始する場合、呼吸器を外している間にチューブ内の分泌物が乾燥してチューブ内部にこびりつき、チューブが閉塞するおそれがあります。そのため、加湿管理が重要です。人工呼吸器を装着していない状態で、気管切開チューブの乾燥を防ぐための加湿方法は、以下の4つがあります。

人工呼吸器からの離脱が成功した場合:カフ付きまたはカフなし

二重管(内筒を引き抜いて洗浄できるチューブ)
人工呼吸器からの離脱が成功した患者さんは、状況によっては長期にわたり気管切開チューブを留置します。ただ、人工呼吸器を使用しない状況となるので、最も安心な気道管理方法は❹です。

二重管チューブは、全体が同じ角度で曲がっていて、管が内筒と外筒の二重になっています。外筒は患者さんの身体に固定し、内筒だけを取り出したり、交換したりできます(図5)。二重管チューブの最大の利点は、チューブの閉塞対策です。乾燥した分泌物がこびりついて内筒が狭窄しても、洗浄することができます。また、チューブ本体の交換頻度は一重管に比べて少なくできます
ケアとしては、分泌物の量や性状によって適切な間隔を決めて内筒を引き抜き、洗浄して元に戻します。内筒の清潔管理としては、在宅では水道水での洗浄と水切りで十分です。病院や施設内では交差感染の危険性があるので、自施設の感染予防指針に従うようにします。

二重管チューブの図

発声訓練を行う場合:一方弁が付いている、または付けられるチューブ

一方弁や蓋の装着が可能
意識レベルが良い患者さんは、気管切開をされた状態で発声訓練を行うことがあります。人工呼吸器を外した状態で、①自分で気管切開チューブから吸った空気を、②気管切開チューブを通さずに直接声帯から口腔へ流して発声する、という練習をします(図6)。

気管切開を行った患者さんの発声と気管切開チューブの図

声を出す場合には、呼気が声帯へ流れるようにカフを脱気するか、カフなしのチューブに変更して呼気の流れ道を確保します。そして、呼気が気管切開チューブから出てしまわないように、一方弁は吸気に開き呼気で閉じるので、吸い込む力が弱い患者さんにも使用できます。また、チューブ自体に蓋をして吸気も呼気も自力で行う練習も可能ですが、抵抗が大きいので、適応できるかの評価が必要です。

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スピーチカニューレ
完全に陽圧人工呼吸から離脱している患者さんで、嚥下機能障害がなく、カフを膨らませなくても分泌物の誤嚥による問題が生じない場合には、カフなしで入口に一方弁の付いたスピーチカニューレを使用します。入口にある一方弁を外せば、吸引ができるチューブです。発声と同時に咳嗽の練習も行い、自力で痰が出せるようになれば吸引も必要なくなり、気管切開は閉鎖できます。徐々に細い口径のチューブに変更し、最終的に抜去します。

二重管チューブ
陽圧人工呼吸が一時的にでも必要な患者さんは、人工呼吸器も使用するため、カフ付きのチューブが必要です。内筒を入れた状態では通常のカフ付きチューブとして使用でき、内筒を抜去して一方弁を装着すると、発声練習が可能となる二重管チューブを使用します。



(ナース専科マガジン2016年2月号より転載)


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