【連載】よくわかる! 気管切開の大事なところ!

【気管切開】乾燥した硬い喀痰、どう吸引する?

執筆 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

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気管切開とは? 気管切開の看護


喀痰のトラブル(乾燥した喀痰)

どうして起こる?

 肺胞において効率のよいガス交換を行うためには、相対湿度100%の吸気であることが重要です。ヒトの自然の気道は鼻腔から咽頭を通じて下気道につながっていますが、なかでも鼻腔が温度と湿度の調節に大きな役割を果たしています(図1)。例えば砂漠のような乾燥した場所の空気を吸っていても、鼻呼吸であれば吸気が気管分岐部に到達するまでに、37℃で湿度100%になるように鼻腔やそれより下部の粘膜から水分が蒸発して調整しています。

気道が加湿をするしくみの図
(図1 気道が加湿をするしくみ)

 しかし、気道の一部が人工気道に置き換わっていたらどうでしょうか。気管切開の場合には、鼻から吸い込むときに比べて吸気が気管分岐部に到達する距離は非常に短くなります。そして、そのうちの半分以上は挿入されたチューブであるため、蒸発はなく加湿効果がありません。

 吸気は、気管切開チューブを通り抜けた後、気管・気管支を通ってより細い気管支に吸い込まれていく途中で、気管支の粘膜から蒸発した水分で加湿され、肺胞にたどりつくまでには37℃湿度100%のコンディションに整えられるのです。

 気管切開チューブより下部の気管や気管支から持続的に水分が蒸発すると、その部分にある分泌物や喀痰は水分を失って硬くなり、吸引しても引きにくくなることがあります。

 また、咳嗽等によって気管から気管切開チューブ内に入り込んだ喀は、チューブ内を通る吸気によって次第に乾燥してチューブの内側にこびりつき、チューブの内腔を狭くしてしまいます。これが吸気の湿度の不足によって起こる、乾燥した喀痰のチューブトラブル(閉塞)です。

こう対応する!

人工鼻や加温加湿器を使用して吸気の乾燥を防ぐ

 対策はなによりも吸気の乾燥を防ぐことです。人工呼吸器を使用している場合には、人工呼吸器用の人工鼻(HME)または加温加湿器を必ず回路に組み込む必要があります。これは通常の人工呼吸器であればセッティングに含まれていますので、問題ないでしょう。問題になりやすいのは、人工呼吸器を使用していない気管切開患者さんの場合です。

 気管切開の患者さんが人工呼吸器から離脱した場合、十分な加湿をもっとも効果的に供給することができるのは、大容量ネブライザー(インスピロン等)です。酸素吸入と組み合わせて行うことも可能ですし、圧縮空気の配管があれば、空気用の流量計を介して室内気で設定することも可能です。白い霧状の水分が患者さんの呼気時だけでなく吸気時にも漏れている状態にセットすることで、確実な加湿を行え、乾燥によるチューブの閉塞を予防できます(図2)。

ネブライザーと人口鼻の図
(図2 ネブライザーと人口鼻)

 また、人工呼吸器用ではない気管切開用の人工鼻もの湿度の不足によって起こる、乾燥した喀痰のチューブトラブル(閉塞)です。あります。人工呼吸器用の製品よりも軽くて安価です。少量の酸素を添加できる製品もあります。

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