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【連載】臨床で使える精神科看護

精神科看護にはこんな役割がある

執筆 吉川隆博

東海大学健康科学部看護学科 准教授

S seisinkango  1  min

まずは精神科医療における看護の役割を学ぼう!

変化している精神科看護

精神科看護は、これまで入院看護を中心に看護機能と役割を発展させてきました。その背景には、精神科医療自体が入院医療を中心に展開されてきたことが大きく影響をしています。ところが近年では、精神科看護にも、身体疾患の場合と同じような看護の機能と役割が求められるようになってきました。それは、入院期間をできるだけ短縮し、患者さんが治療を行いながら地域生活を送れるよう支援すること。そのため、バイオ(生物学的視点)、サイコ(心理学的視点)、ソーシャル(社会的支援)から患者さんを理解し、その人に必要な看護を提供することが大切になってきています。

精神科の現場はこうなっている

医療機能に応じて看護を提供

現在、精神科看護では、「急性期」「回復期」「慢性期」に分けて考えることが一般的になってきました。この区分は疾病の治療・回復の段階を軸に考えており、身体科(一般科)の区分と大きくは変わらないと思います。
 
急性期は精神疾患の病状が重い患者さんを対象としており、病気の治療に伴う看護を提供するとともに、患者さんの安全を守るための観察・アセスメントに重点が置かれます。回復期には、病状の管理と生活面を整えることを重視しながら、退院に向けた看護を提供します。さらに回復期から慢性期にかけては、退院と地域生活の支援に重点を置いた看護を提供します。退院後は、外来看護や訪問看護により必要な看護を提供することになります。

入院形態や病態によって異なる看護

統合失調症などの疾患の場合、患者さんが自分の病気や状態を十分に理解することが難しい状況にあります。そのため自らの意思によらない「非自発的入院(例:医療保護入院)」という形で入院治療を受ける人が少なくありません。このような状態で入院した患者さんに対しては、病院が安心できる場所であることを説明しながら、入院治療の必要性や疾患や治療の理解が深まるように看護を行っていきます。
 
また、病状や認知機能障害の程度によっては、治療等の説明を受けても自分で判断することが難しいケースもあります。そのような患者さんに対しては、看護師がわかりやすく繰り返し説明を行い、患者さんの意思表明や意思決定の支援を行うことも精神科看護の特徴になります。

精神科看護における看護師の役割

地域包括ケアシステムの一部を担う

精神科医療の領域においても、地域包括ケアシステムをめざす時代に突入しました。そのため精神科看護の役割として「外来看護」「入院看護」「在宅看護」というそれぞれから考え、病院から地域へつなぐ看護を実践する必要があります。そのときには「慢性疾患に対する看護である」という視点が大切です。

入院看護での看護師の役割

入院看護でも、地域包括ケアシステムの面から退院支援が重要になってきます。身体科(一般科)と同様に、入院早期から退院困難要因をアセスメントし、早期から退院支援に取り組むことが必要です。また、退院後の継続医療・看護との連携や、福祉・介護サービスなどの利用調整を行うことも重要な役割になります。精神疾患は再発することが少なくありません。したがって退院後の再発防止に向けた看護と、再発時の対応に向けた看護(クライシスプラン)を、患者さんと一緒に検討することも大切です。
 
福祉・介護サービスの利用調整は、看護師がすべてを行うのではなく、精神保健福祉士(PSW)などの職種と連携をつなぐことも大切な役割になります。

外来・在宅看護での看護師の役割

精神疾患の多くは慢性疾患です。したがって精神疾患をもつ人が安心して地域生活を送るためには、「地域での継続医療・看護」が重要視されます。外来・在宅看護では、患者さんが疾患の治療の継続と地域生活を両立できるよう支援することが重要になります。治療継続のためには、治療中断(服薬中断)を防ぐ看護指導等が大切になりますが、精神科訪問看護では、服薬管理のみならず、生活面の援助や家族支援とその関係調整なども併せて行います。最近では、「看護外来」や「看護相談」を行う精神科病院も出てきました。

精神科看護師に求められること

精神的健康問題を抱える人や精神疾患をもつ患者さんは、精神科病院(病棟)以外にもたくさん存在します。精神疾患以外の疾患やけがで入院・通院することが少なくないからです。ところがそういった場面で、身体科(一般科)の看護師は精神疾患をもつ人への対応や看護に戸惑ってしまうようです。ですから、精神科看護師には、自らの知識と技術を幅広い領域で活かすことが求められるのです。精神科領域以外の医療機関、地域で働く看護師と連携を図りながら、彼らに精神科看護のノウハウを提供する機会をつくることが必要です。