【連載】臨床で使える精神科看護

精神科の疾患と治療を知っておこう(統合失調症・うつ病)

執筆 荻野夏子

東海大学健康科学部看護学科 講師

精神科医療での基本疾患の理解を深めよう!

精神科疾患の患者さんは増えている

精神疾患を持つ人は2014年の調査では39万人を超えています。疾患は多い順にうつ病、統合失調症、不安障害となります。入院患者さんにおいては、統合失調症が最も多くを占めています。今回は、代表的な精神疾患である統合失調症とうつ病の理解を深めましょう。精神科の診断では、国際診断分類(ICD-10)やアメリカ精神医学会によるDSM-5などが活用されます。症状や経過、社会的な活動の低下などのさまざまな面から総合的に判断することができます。

精神疾患の患者数グラフ

厚生労働省:精神疾患の患者数.知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス.(2017年6月4日最終閲覧)
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html

統合失調症

統合失調症の理解

統合失調症では、一般的に思考の障害、知覚の障害、感情の障害、認知障害などがみられます。意識状態は清明で知的な能力は通常保たれています。疾患の原因は不明ですが、素因(体質や遺伝、病気のなりやすさ)や誘因(きっかけとなる出来事)、持続因子(家族の特性や社会的な環境など)が絡み合って発症に至ると考えられています。慢性疾患であるため、活発な症状を呈する病勢増悪期と比較的安定した寛解状態を呈する時期があります。

統合失調症の症状の分類表

統合失調症の病状を理解するには古典的な分類も手掛かりになります。クロウによる統合失調症の陽性症状と陰性症状を手掛かりに整理すると以下のようになります。

クロウの分類表

陽性症状の特徴

 陽性症状では、幻覚などの知覚の障害や、妄想などの思考内容の障害が出現します。刺激に対して過敏になり、精神的に不安定な状態を引き起こします。ただし患者さんはこのような病状を客観的に把握することが困難で、周囲の人が指摘しても考えを修正することが難しくなります。陽性症状は中脳辺縁系のドーパミンの過剰が背景にあると考えられています。本人を脅かさない静かで穏やかな環境が求められます。

陰性症状の特徴

陰性症状は通常の機能よりが低下している状態で、意欲が低下したり周囲への関心が低下するなどの症状が現れます。陰性症状は中脳皮質系のドーパミンの低下が背景にあると考えられています。患者さんはパターン化された生活の中に引きこもりがちになり、清潔行動などのセルフケアの低下がみられます。陰性症状には精神科リハビリテーション等が重要になります。

統合失調症の治療

統合失調症においても、早期発見・早期治療は重要です。早期に治療を始めることで病気からくる機能低下の程度が低くできると考えられているからです。

① 薬物療法

抗精神病薬が用いられます。第一選択薬として、セロトニン・ドーパミン拮抗薬などが用いられ、非定型抗精神病薬と呼ばれています。以前の定型抗精神病薬より副作用が少なくなっています。薬物療法は、急性期では鎮静や症状の低減、回復期には症状の安定、寛解期には維持および再発防止を目的としていますが、服薬の中断によって再発のリスクがあるためアドヒアランスの向上が重要です。

②精神療法

患者さんの気持ちの表出を助け、安全感や自尊感情を向上させるために、精神療法が実施されます。日常生活の困りごとにアドバイスをしたり、できているところを認め、支持するかかわりが行われます。

③心理社会的療法

リハビリテーションとして、作業療養、生活技能訓練、レクリエーション、生活指導、心理教育、家族会など、さまざまな治療活動が実施されています。作業療法士、臨床心理士、看護師、精神保健福祉士などの多職種がかかわり、地域の場合は、さらに福祉職もかかわって実施されます。

うつ病

うつ病の理解

うつ病は気分障害の中に分類される疾病です。気分障害には気分が高揚する場合も気分が抑うつ的になる場合も含まれますが、今回は気分が抑うつ的になるうつ病を中心に整理します。
うつ病は気分および欲動の障害を主徴とする原因不明の精神疾患です。DSM-5では2週間以上ほぼ毎日の「抑うつ気分」または「興味もしくは喜びの著しい減退」のどちらかまたは両方があり、さらに「体重の変化」「睡眠の異常」「焦燥または思考制止」「易疲労性・気力の減退」「無価値観」「思考力・集中力の低下」「死について考える」などの項目を合計5項目満たす場合に、うつ病としています。

うつ病の症状の分類表

うつ病の種類

うつ病は、病状や背景に特徴があり、臨床的に役に立つ類型もあります。特徴的な類型を以下に挙げます。

①大うつ病

DSM-5の基準を満たす病像で、強い抑うつ状態が持続的に現れます。「大」は「major」の訳でうつ病の中心的なカテゴリーです。

②退行期うつ病(初老期うつ病)

発症の年齢が50歳以降(40歳以降という説もある)で、初老期という身体的な機能の低下(とその自覚)やさまざまな社会的背景のもとに発症したうつ病です。老いを意識し始めることや、社会的責任の重さなどが背景にあると考えられています。

③回避型うつ病(未熟型うつ病、逃避型抑うつ)

近年青年層などにみられるうつ病です。職場にうまく適応できない状況、例えば、職場での些細な注意や仕事の評価などの困難状況に直面すると、患者さんは自分が否定されたように感じてしまいます。人格的な未熟さや回避的な傾向から困難な状況を避けてしまい、うつ状態になると考えられています。職場には行けませんが、レジャーや趣味の活動はできるために、抑うつ状態の持続性の強い従来のうつ病とは病状が異なります。

④仮面うつ病

精神症状よりも身体症状を強く訴えるうつ病です。身体の治療を受けるために内科や婦人科等のさまざまな科を受診します。うつ病であることが見落とされると、症状が改善しないので注意が必要です。

うつ病の治療

①調整や指導

うつ病の治療では、まず休息が取れるように調整します。仕事を休職したり、生活上の負担を軽減することが大切です。「がんばれ」という言葉は患者さんがつらくなるので避けます。また病気であることを伝え、やる気や能力などの個人的な問題ではないことを伝えます。

②薬物療法

抗うつ薬が用いられます。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)や選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)が第一選択薬として用いられます。その際、効果の発現に1〜2週間かかることを知っておく必要があります。抗うつ薬だけでは十分な効果が得られない場合には、抗精神病薬等を併用します。

③精神療法・生活指導

うつ病の患者さんには、出来事を悲観的・否定的に意味づけしやすい傾向があるといわれています。この意味づけの特徴を「認知の歪み」といいます。この認知の歪みを自覚し、現実的に修正する精神療法を「認知療法」といいます。認知療法はうつ病の再発の予防にも効果が期待されています。また、もともとストレスの多い環境で発症した場合には、治療後の環境の調整が必要です。産業医や産業保健師、家族等の協力を得て調整をしていきます。



【参考文献】
大熊輝雄:現代臨床精神医学,現代臨床精神医学第12版改訂委員会 編,金原出版,2013.

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