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【連載】訪看ステーション「よつば」の公開カンファレンス

CASE17【続編】 主治医の方針が見えないときのアプローチ

執筆 川上 加奈子(かわかみ かなこ)

株式会社のものも よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任

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困難事例17 主治医の関心が薄いと感じる胆管がん末期のBさん


今回は、前回ご紹介した「困難事例17のBさん」のその後をお伝えします。

ケースの振り返りとその後

82歳男性のBさん。末期の胆管がんであることが判明するも、積極的な治療はしないという方針から小さなクリニックで疼痛コントロールのみ行われていた。
クリニックの医師は、通院が大変だろうからと「代理受診でかまわない」と家族に話したため、本人は受診せず。
しかし、麻薬が開始され増量されても、まだ訪問診療には切り替えられず、診察もなく採血検査もされないまま状態が悪化してきたため、なんとか訪問診療に切り替えてもらえるように主治医へのアプローチを試みた。
しかし往診はいぜん入らぬまま、かなり状態が悪化してきたため、そろそろ緩和ケアの申し込みが必要ではないかと考え、家族から主治医に尋ねてもらった結果、主治医からは「まだ必要ない」という返事があり、担当看護師として、主治医の今後の方針が見えない状況に困惑していた。



かな:結局かなり具合が悪くなるまで主治医の先生は往診してくださいませんでしたね。
「看護師からの依頼があれば往診に行くよ」という娘さんへの答えもとても曖昧だと思うんです。というのも、私たち看護師は、状況を観察して報告することはできても、診断はできませんから。
ですから腫瘍が圧迫したための胆道閉鎖が疑われるなとわかっていても、「便の色が白っぽくなってきて、黄疸が出てきているように思われます」と、あえて状況をそのまま書いて小まめにファックスしていたんです。これを読んで、何が起こっているかを察して診察に行く判断をするのは主治医の仕事だと私は思っていましたから・・・。
そこで私もいつも、「往診に来てください」とは書かずに、「ご家族が往診を望まれています」という書き方をしてきました。


ほのか:でも結局それでは主治医は来てくださらなかった。本当に具合が悪くなったとき、緊急に私たちが訪問して、状況を先生にファックスしたら、はじめて私たちに先生から電話があり、往診に行くと言ってくれたんでしたよね。


りん:そのことなのですが・・・。先生の電話を受けて話したのは私なのですが、意外なことがわかりました。実は先生は毎回ちゃんとファックスは読まれていて、つど娘さんにも今後について話をされていたようなんです。


かな:え? どういうことですか? 娘さんからはそのような話は私たちには全然ありませんでしたが・・・。


りん:先生は看護師から送った胆道閉鎖が疑われるファックスを読み、ステントを入れて症状を緩和させる手術をしなくていいのかとご家族に提案してくれたそうです。でも、ご家族とは、はじめに「積極的な治療はしない」という方針を決めていたので断られたのだそうです。
もしかしたら、結論として同じことだから、あえて私たちには詳しくは話されなかったのかもしれません。


かな:そうだったんですか。先生とそんなお話をされたなんて、娘さんは話してくださらなかったですね。
先生からは、ファックスへのお返事も全くなく、往診にもきてくださらないから、あまり考えてくれていないのかと正直誤解していました。


りん:積極的な治療をしないことは、家族のなかでは既に決まっていたことで、看護師も知っていると思っていたから、娘さんもあえて話されなかったのかもしれませんね。
緩和ケアの予約にしても、私たちは娘さんから「まだまだ必要ないよ。厳しくなったら病院紹介してあげるからと言われた」としか聞かされていなかったので、正直なところ、「緩和ケアの申し込みは早く動かないと間に合わないのに」とヤキモキしていました。
けれど先生は、実は具合が悪くなったらすぐ入院できるように病院に話をつけておいてくださっていて、そこから緩和ケアにはつなげようと段取りを考えられていたようなんです。


かな:そんな・・・。それがもっと早くにわかっていたら、私たちこんなにヤキモキしなくて済みましたね。先生のことを完全に誤解していました。反省です。
ただ、往診にギリギリまで来られなかったのはなぜでしょう。家族が積極的な治療を望んでいないため、検査をしたところで何もできないことがわかっていたから、ということでしょうか。


りん:そこのところは正直なところわかりません。でも、今回の事例で明らかになったことは、ご家族からの情報だけで判断してはいけないということですね。ことにターミナル期という、ご家族にとっても非常につらい環境のなかでは、先生から聞いた言葉を正確に看護師に伝えることも難しいのかもしれません。
先生からファックスの返事がこなかったところに、娘さんから聞いた先生の話が合わさり、私たちは娘さんの言葉だけを鵜呑みにしてしまい、先生の真意を直接確認できていなかったですね。ここが1番の問題だったのではないでしょうか。


かな:たしかにそうですね。小まめにファックスは送っていましたが、先生のやり方に疑問を感じた時点で、電話で直接報告するなど方法を変えて、もっとコミュニケーションを取ればよかったのかもしれません。そうすればもっといいケアを提供できたかもしれませんね。


たーちん:今回は私たちにも、通院から訪問診療に切り替えてほしいという思いがあったため、先生と家族の関係性を壊さないようにと慎重になりすぎた面もあったと思います。しかし、主治医の方針が見えないときは、勇気をもって直接話をする場をもたないと、医者と看護師が二人三脚を組めなくなってしまいますね。


りん:本当ですね。これからはより一層、主治医の先生との連携をしっかりしていきたいと思います!


このカンファレンスのあと、まもなくBさんには往診が入ることになり、血液検査の結果、かなり状態が悪いこともわかった。
しかしすぐには入院せず、訪問看護師のサポートを受けてギリギリまで自宅で診たいとの意向で、ご家族も看護を頑張られた。
Bさんは、さらに1週間、ご自宅で過ごされたあと、状態がさらに悪化したためついに入院となり、最期は病院で息を引き取られた。


次回は、禁煙指導が必要な利用者さんのケースについて紹介します。



ステーション「よつば」スタッフプロフィール

りん(所長)
訪問8年目(看護歴32年救急他)在宅ケアでの創意工夫の才能はピカイチ。勉強家で人情が厚く面倒見がよい。スーパーポジティブ思考の持ち主。
さき
訪問6年目(看護歴28年オペ室他)
神社仏閣巡りが趣味の歴女。またDIYも得意。面白き事もなき世をおもしろくが座右の銘。夢への妄想パワーは半端なし。
たーちん
訪問11年目(看護歴33年):スーパーグランマナースで超自由人。しかし可愛い笑顔で憎めない。利用者さんの為ならエンヤコラ。テニスから茶道までサラリとこなす我がステーションの親分的存在。
ほのか
訪問1年8カ月(看護歴15年小児科他)老若男女に好かれる天性の明るさの持ち主。癒し系キャラ。現在、スポーツクラブのZUMBA(ダンス)にハマっている。
かな(主任)
訪問5年目(看護歴16年。NICU他)思い込んだら一直線。やや天然ボケあり。訪問看護と猫と執筆活動(この原稿含)と音楽活動をこよなく愛している二児の母。