【連載】山内先生の公開カンファランス

第39回 脳梗塞による高次脳機能障害重度の患者さん

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

わかりやすい答えが出せないような事例のなかで、問題にどう対応するか、臨床課題にはどんなことが挙げられるのかを読者のみなさんに考えてもらいました。


【事例】
[なすさんより提供された事例]

急性期病棟に入院している脳梗塞による高次脳機能障害重度の60歳代の男性患者さん。夫婦で自営業を営んでおり既往症はなし。かかりつけ医なし。数年前に高血圧を指摘されましたが治療をしていませんでした。

本人の友人が言語障害に気づき、救急搬送されてきました。妻は仕事が終わらないと来院できないとのことで、入院した日の夜に来院。夜勤医から妻へ左上下肢不全麻痺と言語障害、高次脳機能障害が出ていること、発症から日にちが経過していることから、点滴などの急性期治療は適応ではなく抗凝固剤の内服とリハビリを行うことを説明しました。妻は自分が早く病院に連れて行かなかったのが悪いんですねと落ち込み、夫の病状についてまで考えることができない状態でした。

本人は、高次脳機能障害が強く現状を理解できない状態。言語障害があり「はい」「いいえ」など単語は話せるが、言いたいことは「あれあれ、そのその」など言葉が出ず、相手の言っていることも全ては理解できていない様子。

麻痺があることも認識していないため、一人で立ち上がろうとして転倒を繰り返していました。そのため、臥床中はセン
サーマットと転落マットなどを使用していました。トイレ介助中も空間無視で壁に頭をぶつけることがあり、ヘッドギアを装着していました。リハビリは拒否が強く、進めることができませんでした。

→こんなとき、あなたならどうする?


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みんなの回答

事例について、ナース専科コミュニティの会員に聞きました。
回答者数は、47人。

Q1.妻に病状を理解してもらうためには、どのようなアプローチが必要だと考えますか。

●妻が早く病院に連れてきたとしても、病状は同じであったかもしれないことを説明し、できる限り患者さんと接する時間を長く持ってもらったり、毎日面会に来てもらうようにする(CITYさん)

●まずは、妻がその時来られなかった事情を受け止める。患者さん(夫)自身も現状把握は困難な状況であるが、簡単な応答は可能なので、伝達事項は「yes no」で答えられるようシンプルにとどめるようにする。また妻からの話しかけ等も、そのように指導する。夫も妻もそれぞれ混乱している状態であると思われるが、まずは今すぐできることから実践してもらい、少しでも現状を理解していくための一助とする(ごろんごろんさん)

●妻の気持ちを吐き出させ、受容。その上で現状をどう理解しているか確認し、補足説明(ななさん)

●妻の落ち込んだ気持ちが回復し、夫の脳梗塞の状態を受容できるまで待つ(nさん)

●今は受け入れ難い状態なので、時間をかけて理解してもらう(まなさん)

●これから先、夫とコミュニケーションを取るうえでの工夫が必要。道具を使ってコミュニケーションを取る(魚ちゃんさん)

●時間をかける。まずは妻自身の感情が落ち着くまで見守り、感情を吐露できるように努める。社会資源について伝える。医療従事者との関係が構築されるようにする。患者さんのほうに意識が向いてきたら、少しずつ障害について説明する(めるもさん)

●リハビリの様子を見てもらうようにして、実際に見てもらいながら、少しずつ現状を説明していく。現在、急激な環境の変化で、需要するための段階には程遠い。時間の経過とともに、ゆっくりと慣れていくので、今は、傾聴して、指導前の関係性を築くようにアプローチする(Mさん)

●まず、奥さんの思いを受け止めることから始めなければ行けないと思います。それからでないと、病状の理解は難しいと思います(Aさん)

Q2.患者さんのリハビリを進めるためには、どのようなアプローチが必要でしょうか。

●繰り返し説明するとともに、患者さんの安全を守りながら、本人が快と感じるリハビリから行い、受け入れやすくする(CITYさん)

●セルフケアができないのは人間にとってかなりの苦痛であるため、できるようになりたいというニーズはあるはず。リハビリ拒否とはいっても、正直、レベルに合った技術を提供できているかどうかは疑問でもある。病棟・リハの連携がどうなっているかも気になるところであるので、医療者側(可能なら本人も)でカンファレンスをし、問題と課題をできるだけ共通化する(ごろんごろんさん)

●その人が理解できる単語で麻痺があること、1人で動くことは危ないことを説明。家族にも協力してもらいながら、リハビリをしていく。またPTのリハビリ時はできる限り同席し、本人のやる気を引き出させる工夫を一緒に考えていく(ななさん)

●根気よく接する(nさん)

●できることや興味のあることから、始めていく。行動をよく観察して、先を読んで援助していく(まなさん)

●病気を受容できるような働きかけ。患者さんに寄り添い、気持ちを受け止める。同じ体験をした方の話を聞く機会を設ける(魚ちゃんさん)

●まずは、本人に自分の状況を理解していただけるようなかかわり方をする(プーさん)

●空間無視については、しばらく様子をみるとして、まずは、鏡など姿がみえるものを利用してのリバビリはどうでしょうか? と提案してみる(みぃきさん)

●実際に転んだりしているので、危険であり高齢の方は見守ったりする介助が必要であることを伝える。また詰め所の近くに配置する。リハビリは予防目的も含めることを伝える(あたさん)

●リハビリを行うことができるよう、前向きな声掛けを行ったり、楽しみを見つけながらリハビリを行うことができるよう援助する(みまさん)

Q3.この患者さんが退院または転院する際に、課題となることはなんだと思いますか。

●退院する場合、妻が患者さん本人のケアを行えなかったり、安全を守ることができない可能性がある。転院するにしても、自宅から遠い病院だと、妻が面会に来れない可能性がある(CITYさん)

●転院であれば、どの段階まで回復できているのかいないのかをしっかり伝達すること。自宅退院であれば、おそらく夫婦で生活していくのはかなりの困難が予測されるので、利用できる医療サービス 社会資源等の情報提供。自営業とのことだが、職場と住宅がほぼ同一の場合、いわゆる「他人の目」が当事者にとって回復へのやる気につながることもあるかもしれないし、その逆に世間体を過度に気にしすぎて、必要なサービスをもうけず病状悪化することも……(ごろんごろんさん)

●退院時は介護に対するマンパワー不足、住宅改修が必要。転院時は受け入れ先確保が難渋する可能性あり(ななさん)

●骨折や転倒時の打撲(nさん)

●退院するのであれば、自宅の様子やサポート状況(まなさん)

●日常生活をスムーズに送れるようにすること(魚ちゃんさん)

●退院する際には住宅改修、介護体制、医療体制を整えること。転院する際には、環境の変化による精神状態の悪化(VVVさん)

●自分のADLが理解できていないので、介助する人にどこまでできているのか詳しく説明し徐々に本人に認識してもらう援助が必要(あたさん)

Q4.Q3で挙げた課題をどのように解決しようと考えますか。

●ケアマネジャーに介入してもらい、訪問看護やヘルパーに入ってもらう(CITYさん)

●医療サービスだけでできることには、限界もある。家族でできることにも、限界がある。
地域でできることも、限界がある。それらの持てる力と、努力してもなしえないことを見極めた上で、各々が最大限の能力を発揮できれば、と思う(ごろんごろんさん)

●使えるサービスを使い、家族の介護負担を軽減できるよう考えていく。手続きに時間を要するものが多く、調整が遅れ退院が長引く可能性があるため、早期介入し方向性の確認、プランニングしていく必要がある(ななさん)

●車いす、補助具の活用(nさん)

●退院調整カンファレンスを行う(まなさん)

●リハビリや社会福祉をとうして、情報提供する(魚ちゃんさん)

●リハビリをすることのメリットをわかるようにする。妻のことを理解して、サポーティブに接する(めるもさん)

●高次脳機能障害があるけれど 自分の意思や思い、感情があるはずなので、受け止めて理解し、気持ちに寄り添い相手の了解や意欲を育てることが先決かと思います(さはらさん)

●本人が病状を理解しないと何も始まりません。それが難しいのあれば、患者さんが安全に暮らしていけるよう環境を整えなくてはならない。それには妻の病状理解が必要(ぴさん)

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