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【連載】帰国ナースの伝えたいこと

第1回 アメリカではいかにして看護師になるのか

執筆 荒川邦子

America nurse

Nursing Programを受けるまでの道のり

 「荒川さん、アメリカの看護は日本の看護の30年も40年も先を行っているらしいよ。」と、一緒に夜勤をしていた先輩看護師に言われた言葉。好奇心旺盛な私は翌朝、「私、アメリカで看護師になるので退職します!」と師長へ申し出ました。皆が唖然とする中、それから三ヶ月後にスーツケース一つと愛車を売った少ない資金を持って渡米しました。英語が大嫌いだった私は、英語の習得に1年半を要し、やっとの思いでカレッジへ入学できるレベルへ到達することができました。

しかし、本当の闘いはこれからでした。アメリカではNursing Programに志願する前に、解剖生理学・科学・微生物学・統計学などの必須科目を習得しなければなりません。その上、すべての必須科目においてA以上のスコアが必要です。なかでも、解剖生理学は日本の看護学科で学ぶ内容とは全く異なり、解剖学者や医師を目指す学生達と一緒の教室で同じ内容を学ぶといったハードルの高いものでした。【You are Freak】(訳:あなたは尋常じゃない)と言われるほど、解剖生理学が大好きだった私でも、勉強中に何度か片頭痛を起こすほどでした。

さて、全ての必須科目を習得した何百人もの学生達は、自分のスコアを提出しNursing Programに志願します。そのProgramに入れたのは上位たったの25名程度ですが、Programが始まっていない時点ですら十分な基礎医学の知識を持っていると感じました。

テストは一発勝負の厳しい世界

私の入ったNursing Program ではテストの成績が80%以下は落第点となり、追試験や再試験もなく、80%以下の成績を一回でも取ってしまった場合は即Programから追い出される厳しいものでした。そのため、Nursing Program の学生達は、毎回早くから講義を受ける教室の廊下に並びに、教室のドアが開き次第我先にと教壇前の先を奪いあいます。その後、学生達は講義を担当する教員に許可をとり、教壇にICレコーダーを置いて講義内容を録音し講義の復習に使います。

日本の看護学科の疾病論の講義は医師が講義を行いますが、アメリカでは疾病論もNursing Program の専属教員が講義を行います。しかし、講義の内容が疾病論だけの一括りで構成されているのではなく、一つの疾患に対し検査データの見方や、その疾患の治療で使用される薬剤の薬理学、そして看護ケアに至るまで一回の講義で全てを一連の流れで学ぶことができ、看護学生の私達にとっては、とても理解し易かったです。それだけ、Nursing Program の教員達は医学的な知識が豊富であり、そこで学んだ看護学生もまた医学的知識が豊富で、アセスメント能力や緊急時の対応に優れた看護師に育っていきます。

私事ですが、先日父親が日本の病院に入院して、看護師の方々にお世話になりました。面会に行く度に、日本の看護師からは他国にはない思いやりと優しさを感じます。日本で頑張っている看護師の方々に、アメリカの看護師と同等の知識と技術が備われば、より良い看護が提供出来ると私は確信しています。今後、日本の看護教育に対して出来ることはないか、次回からお話していきたいと思います。