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【連載】パートナーシップ・ナーシング・システム(PNS)について知ろう!

パートナーシップ・ナーシング・システム(PNS)とは何か

執筆 橘 幸子

福井医療大学 保健医療学部 看護学科

Pns

新たな看護提供方式ーPNSー

看護提供方式は、「限られた人員で効率よく患者や家族に質の高い看護サービスを提供するという看護管理の目的を達成するため」1)に編み出されたものです。日本では、機能別看護方式、チーム・ナーシング、固定チーム・ナーシング、受け持ち看護方式、プライマリー・ナーシング、モジュラー・ナーシングなどの看護提供方式1)が普及しており、人員に応じて、施設ごとに選択し実践しています。平成18年の診療報酬改定で、40数年ぶりに看護師の人員配置が見直され、急性期医療の実態に即した看護職員配置として、いわゆる7対1看護が新設されました。この改定で多くの施設の看護管理者が看護師職員の確保に奔走しました。同時に多く新人看護師を採用したものの、その教育や先輩看護師の反応などで臨床現場が混乱するようになったことも記憶に新しいところです。どのような状況でも私達は、1日24時間、365日にわたり継続的に看護ケアを提供していかなければなりません。パートナーシップ・ナーシング・システム(Partnership Nursing System 以下PNS)は、そのような混乱する看護現場で新たな看護提供方式として、平成21年に福井大学医学部附属病院で開発されました。

1.PNSとは何か

 これまで看護師1人で数人から10数人の患者を受け持ち、責任を持ってその日の看護をやり遂げるという自己完結型の看護を行ってきました。これを、看護師2人で数人から10数人の患者を受け持ち、協働しながら対等な立場で毎日の看護ケアを行うとともに、病棟内の係りの仕事や委員会活動なども相互に補完し合って、その成果と責任を共有する看護提供方式としたのがPNSです。これを以下のように定義づけました。

「看護師が安全で質の高い看護を共に提供することを目的とし、2人の看護師がよきパートナーとして、対等な立場で、互いの特性を活かし、相互に補完し提供しあう看護提供方式。2人の看護師は、毎日の看護ケアを始め、委員会活動、病棟内の係りの仕事に至るまで、1年を通じたパートナーとして、その成果と責任を共有する。」2)

 自己完結型看護の中では、若手看護師は軽症患者を受け持っていても、変化していく患者の病状や訴えに即時に反応し判断を下すことは、ベテラン看護師より難しいと容易に考えられます。指導するベテラン看護師自身も重症患者を抱えながら指導に気を配ることはなかなか困難です。コミュニケーション不足の若手看護師は言い出す勇気も乏しく、勤務終了時間の間際になって、たくさんの業務が残っていてびっくりする。また、1人で受け持ち患者のすべてに責任を持って行う自己完結型の看護では、看護師の経験によって、患者観察や状況判断に差が出ます。こんな状況の中で起きたオカレンスがPNSを生み出しました。患者も看護師も安全で、安心できる看護を提供したいという看護師長の強い思いによって誕生したのがPNSです。

 PNSで生まれた成果を一部紹介します。

1)安心で安全な看護の提供ができる。

看護師の仕事は2人で行ったほうが患者、看護師とも安心、安全、安楽なことが多くあります。体位変換、車椅子への移乗、オムツ交換、陰部洗浄などは、いずれも看護師1人では時間がかかったり、患者に苦痛を与えたり、危険であったりなど。これらを2人で行ったほうが、看護師の労力も軽減され、看護ケアも効率よく実践できます。頼んだり頼まれたりではなく、共に看護を行うペアとしてスムースに実践できるのです。大柄の患者を看護師1人で動かして、自身の腰を痛めたりなどの心配もなくなるわけです。

2)看護の可視化が看護の伝承・伝授となり教育効果が生まれる。

自己完結型の看護をしているときは、看護師同士がお互いの看護実践を見るということはないでしょう。2人でベッドサイドにいると、ペアの看護師の知識や技量(会話、ケアの実際、気配りなど)など日ごろ見えなかった看護師の持つ「経験知」を間近で看ることになります。「経験知」は実践を通してのみ伝わる3)ものです。経験知の中のマニュアルだけでは伝わらない知識が、ベテラン看護師から若手看護師へ、時にはその逆の伝わり方で伝わっていきます。若手看護師への教育だけでなく、ベテランといわれる看護師も自分の看護を振り返る機会となります。また、患者観察方法をその場で見て、直接間違いを指摘したり、正しい方法を教えたりすることができます。

患者観察の結果、どのように判断するか迷って不安になったとき、相談する相手が目の前にいて適切な判断を下すことができます。

3)看護記録をリアルタイムで記載できる。

PNSでは、ベッドサイドで看護記録を記載し、看護過程の展開を行います。1人の看護師が患者観察やバイタルサインの測定を行い、もう一方のペアの看護師はリアルタイムで電子カルテに記載していきます。これまでのように夜にならなければ、午前中の看護記録が入力できないということはありません。今看たことを今記録し、患者の状態がリアルタイムで確認できます。医師も患者の変化をリアルタイムで捉えて適切な医療を迅速に提供することが可能になり、電子カルテのメリットを医療チームで共有できることに繋がりました。

4)ワークライフ・バランスの実現

PNSによる補完体制の充実は、残業時間(超過勤務時間)の削減に繋がりました。
PNS体制の中で、受け持ち患者1人ひとりの本日のスケジュールの下で業務計画を立案し、ペア同士が協働しながら看護を行います。このことで、日勤の業務が定時終了し、これまでより早い時間に帰宅することが可能となりました。定時終了という夢が実現した瞬間でした。これにより、看護師のワークライフバランスが実現し、個人の自由な時間、家族との時間が持てるようになりました。さらに、翌日が日勤でも、疲れを癒す十分な時間も持てるようになりました。

5)職場の活性化

ペアの看護師同士が患者の情報を共有するためには、コミュニケーションは欠かせません。上下関係で黙々と看護ケアを行っていては仕事が進んでいかないのです。話し合い協働しなければ看護実践が滞っていきます。お互いが何かひとつケアを行うたびに、何かを報告するたびに「ありがとう」という看護師が増え、「ありがとう」が飛び交うようになりました。準備してくれて「ありがとう」、患者ケアを終えて患者に対して、「ありがとう」と。忙しそうに看護師が走り回っている病棟が、明るく活気のある職場に生まれ変わりました。

1人ではなく2人で看て判断する二人三脚の看護は、これまでの看護から想像もつかない画期的な成果が見られるようになったのです。 


【引用・参考文献】
1)井部俊子・勝原裕美子,編:看護管理学習テキスト看護組織論,医学書院,2017,p.178-182
2)橘幸子:PNSの特徴とパートナーシップ・マインド、看護管理 2014;24(9):p.820-4.
3)橘幸子、上山香代子:「経験知の補完」「協働による対等な関係づくり」「ワークライフバランスの実現」に役立つ新看護方式PNS、看護部長通信、vol.10、NO.1、2012
4)福井大学医学部附属病院看護部編、橘幸子、上山香代子:新看護方式PNS導入・運営テキスト、日総研出版、2014