お気に入りに登録

【連載】手術室看護の基本を知ろう!

手術体位の目的、体位調整と注意点とは?

執筆 佐藤大介(所属は執筆時のもの)

東北医科薬科大学病院 手術部 手術看護認定看護師

 手術をする際にはそれぞれの術式に合わせた体位を取る必要があります。手術室の看護師は外科医師、麻酔科医師と協力しながら体位を作っていきます。体位を取る上で、重要なポイントについてお話していきます。


手術時の体位の目的

不適切な手術体位は、患者さんの体重や外部からの圧迫による末梢神経障害、発赤や褥瘡などの皮膚トラブル、呼吸・循環障害などの様々な合併症の原因となり、その持続時間が長いほど発生頻度や障害の程度が大きくなります。
患者さんには安全・安楽を保障され最高の看護を受ける権利があり、医療者はそれを保障する責任があります。

体位固定の条件として

①循環障害や換気障害を起こさない
②過度の圧迫や伸展、牽引による神経系の障害を残さない
③圧迫による発赤・褥瘡、金属への接触による火傷などの皮膚障害を起こさない
④術者にとって良好な術野を確保し、麻酔科医・看護師が患者を管理しやすい

があります。

手術時の体位調整の基本

手術操作が安全で効率的に行われる為に、十分な手術視野を得ることを目的として、術式に応じた体位が取られます。しかし、手術のしやすさや術野を確保することだけを考えてしまうと、良肢位とかけ離れた体位を取ってしまうことがあります。体表近くや関節周辺部を走る神経が、過伸展・過屈曲や、突出した骨や固い支持組織によって内部から圧迫されたり、血管の捻転や圧迫による虚血により、しびれや運動麻痺が起こってしまうことがあります。また、全身麻酔により患者さんが痛みを訴えられないだけでなく、全身麻酔による筋弛緩により生理的な可動域を超えてしまう恐れがあります。

体位調整時の注意点

安全を確保するためには、患者さんの覚醒時の状況(しびれが元々あるか等)や、関節の拘縮や変形による可動域制限がないか確認し、それらを体位固定の際に考慮して作成しなければなりません。また、体位固定を行う上で良肢位とはどういうことか把握しておくことは特に重要な項目になります。

良肢位とは
肩関節 外転0~30° 外旋20° 内分回し30°(挙上時は90°以内)
肘関節 屈曲90°
前腕 回外回内中間位
手関節 背屈10~20°
手指 ボールを軽く握った位置 母指は対立位
股間節 屈曲15~30° 外転0~10° 外旋0~10°(切石位時は40°以内)
膝関節 屈曲10°
足関節 背屈0~10° 底屈0~10°

 基本的には手術申し込みの時点で体位が決まっているのですが、まれに間違った体位で申し込みがされている場合があり、その際には手術室看護師の方から担当の外科医師に申し送りをするとスムーズに進みます。看護師も手術体位をしっかりと把握し、外科医師や麻酔科医師と協力していくことは非常に重要になります。

主な体位と起こりやすい神経障害と圧迫部位について

仰臥位

 神経障害
  ・橈骨・尺骨神経損傷…上肢の手術台への圧迫による
  ・腕神経叢損傷…上肢の90°以上の拳上と頭部の反対側への回旋による
  ・腓骨神経麻痺…固定帯などによる腓骨小頭部周辺の圧迫による
 圧迫部位
  ・後頭部、肩甲骨部、肘頭部、仙骨部、踵部

側臥位

 神経障害
  ・腕神経叢損傷…下側の腕神経叢の圧迫と上側の腕神経叢の伸展による
  ・腓骨神経麻痺…総腓骨神経圧迫と膝関節部の圧迫による
 圧迫部位
  ・頬部、耳介部、肩甲骨部、肋骨部、腸骨部、大転子部、膝蓋部

腹臥位

 神経障害
  ・顔面の圧迫、特に眼球の圧迫による眼圧上昇により視力低下
  ・上肢固定台が尺骨神経を圧迫していると、尺骨神経麻痺が起こる
 圧迫部位
  ・前額部、頬部、眼球、肋骨部、膝蓋部、下肢指先、胸部、腹部

切石位

 神経障害
  ・膝窩部の圧迫により腓骨神経麻痺を生じる(コンパートメント症候群)
 圧迫部位
  ・後頭部、肩甲骨部、肘頭部、仙骨部

同一体位による褥瘡にも注意する

 長時間にわたる同一体位や不適切な体位固定によって、圧迫・摩擦・ずれが起こり、発赤や褥瘡の原因となります。毛細血管が32mmHgを超えると循環不良となり、さらに毛細血管圧70mmHgで2時間を超えると、組織は不可逆的な阻血性障害に陥ります。手術体位による褥瘡が発生しやすいのは、脂肪や筋肉が少なく、骨が突出していて、手術台や固定具に接触する部位です。
 ・基本的なスキンケア(洗浄・清潔・保湿・保護)を行い、体圧を分散させる
 ・皮膚の浸軟(ふやけ)がないよう、洗浄液や血液、便などから皮膚を保護する
 ・接触面積をできるかぎり広範囲にし、褥瘡発生部位の体圧をできるだけ分散させる
 ・支持器や医療機器が直接皮膚に当たらない様にする
 ・体位固定や体位変換の後は、チーム全体が協力して声出し、指差し確認を行い、正しい体位固定になっているか確認する
などといった対策が必要です。

 患者さんによって可動域が異なっていたり、元々脳梗塞などで神経障害があったり拘縮があったりと、個別性があります。術前から術後にかけて皮膚トラブルが無い様に、また神経障害が術前から比べて悪化させない様に体位固定を行うことが重要です。


【参考文献】
1. 公益社団法人 日本麻酔科学会,他:日本麻酔科学会・周手術期管理チームプロジェクト,周術期管理チームテキスト 第2版.公益社団法人 日本麻酔科学会,2011.
2. 雄西智恵美 秋元典子,編:成人看護学 周手術期看護論 第3版.ヌーヴェルヒロカワ,2014.
3. 竹内登美子,編著:周手術期看護Ⅰ 外来/病棟における術前看護.医歯薬出版,2000.

ページトップへ