ゴーシェ病患者さんの看護

解説 吉橋香穂里

東京慈恵会医科大学附属病院 小児科 看護師

ゴーシェ病の患者さんに必要な看護とは

 ゴーシェ病は、神経症状の有無や重症度により、酵素補充療法が有効で予後が良好な1型、酵素補充療法が無効で神経症状などが強く現れ予後不良の2型、1型と2型の中間ともいえる3型に分けられます。治療方法や経過が違うため、必要な看護も型によって異なります。

 各型に共通しているのはこの疾患と一生つきあっていくことになる点です。したがって看護師は、患者さんやその家族がこの疾患と向き合い、自分たちらしく生活していけるように、さまざまな職種の人とも連携しながらサポートしていく必要があります。

ゴーシェ病の臨床病型分類

1型患者さんの看護

 1型は、2週間に1回程度の酵素補充療法により神経症状が出現することなく健康な人と同じように生活していくことができます。したがって1型の患者さんの年代は幼児から成人まで幅広く、年齢に応じた支援が求められます。成長に応じて患者さん本人と家族が病気や治療の必要性を理解し受容することができるように、医師とともに説明や指導を行ないます。
 
 

 定期的に通院して酵素補充療法を受けるため、学校や仕事を休まなければならない人もいます。その場合、学校や職場などの理解が不可欠なので、養護教諭などと連携をとることもあります。

 定期的な検査や薬の調整などの目的で入院することがあります。入院時は、病棟看護師が両親の話に耳を傾け、日頃の生活や悩みなどを把握してその後の支援につなげるよう心がけます。

2型患者さんの看護

 2型は主に乳児期に発病します。おすわりができていたのに首がグラグラしてくるなど、順調に発達してきた子どもの機能が後退するのを見て受診のきっかけになることもあります。近医では診断がつかず、何カ所も病院をまわってやっと診断がつくケースもあります。そういった場合には、両親の心労や、子どもの機能が低下していくことへの不安を受け止めることが大切です。また遺伝性疾患のため両親ともに保因者で、強い自責の念を抱いている場合があることも忘れてはいけません。

身体的な支援

 けいれんに対する処置と呼吸のサポート、栄養補給が生活の質を左右する重要な課題です。有効な治療法がないため症状は確実に悪化し、徐々に医療的なケアが必要になっていきます。

 けいれんは、苦痛をともない激しく消耗し、呼吸停止の危険もあるので薬で抑える必要がありますが、完全に抑制しようとして薬で眠らせてしまうと、家族といっしょに過ごす機会を奪うことになります。その子と家族にとってもっともよい状態になるように薬を調整するとともに、症状を落ち着かせ苦痛を軽減する方法を両親とともに模索します。

 自力での呼吸が難しくなって気管切開や人工呼吸器が必要になり、食事の経口摂取が困難になって胃瘻を造設することになります。入院中はこれらの管理を確実に行ない、その一方で在宅療養を見据えて両親がケアの方法を身につけられるように支援します。人工呼吸器などは両親にとって未知のもので不安も大きいので、両親がケアに自信を持てるまでサポートします。そして患者さんと家族が在宅で苦痛なく安全に、その家族らしく安心して暮らせるように、病院のソーシャルワーカーや在宅支援室とも連携し、緊急時の対応や日々のケアについて居住地の病院の医師や訪問看護師と連絡をとったり、家族会を紹介するなどあらゆる支援を行ないます。

精神的な支援

 予後不良のため、家族への精神的支援は重要です。疾患を受容したつもりでも、病状が進行すればまた不安でいっぱいになるなど、常に気持ちは揺れ動きます。きょうだいがいる場合は、その子の気持ちや、その子に十分に手がかけられないことへの両親の思いにも配慮が必要です。病状の悪化や薬の調整のため再入院してきたときは、受容段階を見極め、困っていることや悩みごと、どんな風に生活していきたいかをよく聞いてケアにつなげます。

 重い疾患を抱えていても、その子なりの成長発達がみられます。ごはんの経口摂取はできなくなっても、綿アメや氷を口に含むことができ、それが刺激になって表情が豊かになったりします。音に反応するようになったり、身長や体重が増えるといった変化がみられることもあります。そういった様子を家族とともに喜び、見守っていくことが大切です。

3型患者さんの看護

 3型の場合、酵素補充療法に一定の効果が期待できますが、症例によって神経症状などの症状がある程度現れます。たとえば字が上手に書けない、ものをうまくつかめないなど、細かい動作が難しい子どももいます。学童の場合、一般の学級は難しくても支援学級などでの学習が可能な場合もあります。症状の現れ方や重症度はケースによって違うため、患者さんの状態や年代等に応じて、その家族らしい生活が送れるように支援します。

 酵素補充療法に関するケアについては1型と同様に、神経症状などに対するケアは2型に準じて行なうことになります。


【引用・参考文献】
・ゴーシェ病 診断・治療ハンドブック編集委員会:ゴーシェ病 診断・治療ハンドブック.イーエヌメディックス,2014.



ゴーシェ病の診断や治療についてはこちら
ゴーシェ病とは? ゴーシェ病の診断と治療

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