【連載】腹腔ドレーン管理のこんなことが知りたい! Q&A

腹腔ドレーンの目的、種類、挿入部位

執筆 小貫智美

筑波メディカルセンター病院 看護部 看護師


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ドレーンとは|ドレーンの種類と管理


Q.腹腔ドレナージの目的は何? どんな種類があるの? ドレーンはどこに挿入されるの? 

 A.腹腔ドレーンは、主に治療や感染の予防などを目的として、術後などに体液が貯留しやすい部位に挿入されます。排液方法によって大きく開放式と閉鎖式に分けられます。

ドレナージの目的による分類

 腹腔ドレナージを目的別に分類すると、治療的ドレナージ、予防的ドレナージ、情報的ドレナージの3種類があります。治療的ドレーンは、臓器障害や炎症の原因となっている腹腔内の廃液や膿汁を体外に排出するために、予防的ドレーンは、リンパ液、血液、滲出液の貯留による術後感染と創傷治癒の遅延を予防するために、情報的ドレーンは、縫合不全などの合併症を早期発見するために挿入されます。


 ドレーンが挿入される部位としては、右横隔膜下、左横隔膜下、ウィンスロー孔、モリソン窩、ダグラス窩など、体液が貯留しやすい部位が選択されます(図1−1)。


図1-1 腹腔ドレーンの挿入部位
腹腔ドレーンの挿入部位の図

●右横隔膜下:右横隔膜と肝臓の右葉に囲まれたスペース
 主な手術 汎発性腹膜炎手術、肝切除術、胆道手術、胃・十二指腸潰瘍穿孔など
●左横隔膜下:左横隔膜と胃・膵尾部・脾臓に囲まれたスペース
 主な手術 汎発性腹膜炎手術、胃切除術、膵臓切除術、脾臓切除術など
●ウィンスロー孔:肝臓・胆嚢、十二指腸と膵頭部囲まれたスペース
 主な手術 胃切除術、肝切除術、膵頭十二指腸切除術など
●モリソン窩:肝臓の右葉と、右腎臓の間のスペース
 主な手術 胆道手術、右半結腸切除術、十二指腸切除術など
●ダグラス窩:直腸と膀胱の間のスペースで、仰臥位で低位に位置する(女性の場合は、直腸と子宮の間)。
 主な手術 S字結腸切除術、汎発性腹膜炎手術など


ドレナージの排液方法による分類

 ドレナージは排液方法によって、開放式ドレナージと閉鎖式ドレナージに分けられます。どちらも体内に貯留する液体を体外に誘導させるためのものですが、それぞれに利点と欠点があり、ドレナージの目的や患者さんの状態などに応じた適切な選択と管理が求められます(表1-1)。

 開放式ドレナージは、体外側のドレーンの端を切離開放し、ガーゼなどで排液を吸収することでドレナージを行います(図1-2a)。開放式の利点として、ドレナージが効果的に働くことが挙げられますが、一方で外界と通じていることで逆行性感染のリスクが高くなるといった欠点があります。排液量が多い場合や逆行性感染の危険がある場合などは、開放式ドレーンにパウチを取り付けた半閉鎖式を選択することもあります。留置は短期間に限定されます。

 閉鎖式ドレナージは、体外側のドレーンが排液を貯留するバッグに直接接続され、ドレーン内の陰圧を利用してドレナージを行います(図1-2b)。閉鎖式は、開放式と比較して逆行性感染は起こりにくく、排液量の計測や排液の採取がより正確に行える利点があります。しかし、体外部のチューブが長いうえに、排液バッグまで付いているため、ADLの拡大とともに事故抜去が起こりうる可能性が高くなる欠点があります。

表1-1 ドレーンの種類と特徴

開放式ドレーン 閉鎖式ドレーン
体腔と体外の交通 体腔と体外に交通がある 体腔と体外に交通がない
ドレーン排液の回収方法 主にガーゼ吸収による回収 排液バッグでの回収
逆行性感染のリスク リスクは高い リスクは低い
身体的制限、拘束感 体に密着しており少ない 排液バッグがつながることで拘束感あり
ドレーンの屈曲 体外部が短く屈曲しにくい 体位や体動によって屈曲しやすい
ドレーンの閉塞 体外部が短く閉塞しにくい 目詰まりや、屈曲による閉塞が起こりやすい

図1-2 開放式ドレナージと閉鎖式ドレナージ
開放式ドレナージの図  
閉鎖式ドレナージの図

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