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高齢発症てんかんについて知ろう

  • 公開日: 2017/9/7

7月20日に大塚製薬株式会社東京本部にて、プレスセミナーが開催されました。朝霞台中央総合病院 脳神経外科 統括部長で、脳卒中・てんかんセンターセンター長の久保田有一先生が、高齢者のてんかんについて解説しました。その模様をレポートします。


小児だけではない、てんかんは高齢者が発症することもある

 てんかんというと小児が発症する疾患というイメージがありますが、後天的に発症することもあります。てんかん年代別発症率をみると、50代を境にゆっくりと発症率が上がって、さらに80歳を超えると発症率は非常に高くなります。

 今回は、高齢者が発症するてんかんについて紹介します。

 高齢者のてんかんの原因は、脳卒中が35.8%、神経変性疾患が12.0%、外傷6.9%、脳腫瘍2.7%、不明24.6%、動脈硬化14.9%、その他18.8%となっています1)。高齢者のてんかんには、2つの発症形式があり、1つは、脳卒中などの器質疾患に伴うてんかん(脳卒中後てんかん、外傷後てんかん)、もう1つが加齢に伴うてんかん(高齢発症てんかん)です。脳卒中後に起こるてんかんは、痙攣や意識障害を伴うものが非常に多く、痙攣のあとに意識障害が起こることがあり、これをてんかん重積状態といいます。一方、生来健康な高齢者に突然発症するてんかん(高齢に伴うてんかん)の原因は、神経変性疾患や原因不明、動脈硬化などが挙げられます。症状も痙攣などはなく、一見ボーッとしているように見えることが特徴です。その他、高齢発症のてんかんの特徴は下記のようなものが挙げられます。

● 通常の側頭葉てんかんの複雑部分発作と比べ、症状が地味(運動症状がわずか、意識障害のみ)
● 発作後のもうろう状態が長い
● 発作頻度が少ない、でも危険
● 発作が時にNCSE(非痙攣性てんかん重積)に移行
● 明らかに、意識が清明なときがある

 このような症状の高齢発症のてんかんを診断する際のポイントは、主に以下の3つとなります。
● 特徴的な症状
● 外来での脳波の検査
● 長時間ビデオ撮影しつつ行う脳波の検査

 特に脳波は重要で、脳波を読むことができれば、高齢発症てんかんを診断できるという報告が多々あります。朝霞台中央総合病院では、ビデオ脳波モニタリング室を作り、脳波の検査ができるようになっています。これをできる日本の施設は、残念ながら非常に限られています。

高齢発症のてんかんについて、まずは知ることが大切

 このような高齢発症てんかんについての知識がなく、てんかんと診断できないケースも多く見られます。認知症やうつ病と診断されることもあるのが現状で、認知症やうつ病の薬を服用しても症状が治まらないため、薬が増量されていくということもあります。こういった事態に陥らないためには、高齢発症てんかんについて少しでも多くの人に知ってもらうことが必要だと考えます。

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