高齢発症てんかんについて知ろう

編集 ナースプレス編集部

Webサイト「ナースプレス」編集部

7月20日に大塚製薬株式会社東京本部にて、プレスセミナーが開催されました。朝霞台中央総合病院 脳神経外科 統括部長で、脳卒中・てんかんセンターセンター長の久保田有一先生が、高齢者のてんかんについて解説しました。その模様をレポートします。


小児だけではない、てんかんは高齢者が発症することもある

 てんかんというと小児が発症する疾患というイメージがありますが、後天的に発症することもあります。てんかん年代別発症率をみると、50代を境にゆっくりと発症率が上がって、さらに80歳を超えると発症率は非常に高くなります。

 今回は、高齢者が発症するてんかんについて紹介します。

 高齢者のてんかんの原因は、脳卒中が35.8%、神経変性疾患が12.0%、外傷6.9%、脳腫瘍2.7%、不明24.6%、動脈硬化14.9%、その他18.8%となっています1)。高齢者のてんかんには、2つの発症形式があり、1つは、脳卒中などの器質疾患に伴うてんかん(脳卒中後てんかん、外傷後てんかん)、もう1つが加齢に伴うてんかん(高齢発症てんかん)です。脳卒中後に起こるてんかんは、痙攣や意識障害を伴うものが非常に多く、痙攣のあとに意識障害が起こることがあり、これをてんかん重積状態といいます。一方、生来健康な高齢者に突然発症するてんかん(高齢に伴うてんかん)の原因は、神経変性疾患や原因不明、動脈硬化などが挙げられます。症状も痙攣などはなく、一見ボーッとしているように見えることが特徴です。その他、高齢発症のてんかんの特徴は下記のようなものが挙げられます。

● 通常の側頭葉てんかんの複雑部分発作と比べ、症状が地味(運動症状がわずか、意識障害のみ)
● 発作後のもうろう状態が長い
● 発作頻度が少ない、でも危険
● 発作が時にNCSE(非痙攣性てんかん重積)に移行
● 明らかに、意識が清明なときがある

 このような症状の高齢発症のてんかんを診断する際のポイントは、主に以下の3つとなります。
● 特徴的な症状
● 外来での脳波の検査
● 長時間ビデオ撮影しつつ行う脳波の検査

 特に脳波は重要で、脳波を読むことができれば、高齢発症てんかんを診断できるという報告が多々あります。朝霞台中央総合病院では、ビデオ脳波モニタリング室を作り、脳波の検査ができるようになっています。これをできる日本の施設は、残念ながら非常に限られています。

高齢発症のてんかんについて、まずは知ることが大切

 このような高齢発症てんかんについての知識がなく、てんかんと診断できないケースも多く見られます。認知症やうつ病と診断されることもあるのが現状で、認知症やうつ病の薬を服用しても症状が治まらないため、薬が増量されていくということもあります。こういった事態に陥らないためには、高齢発症てんかんについて少しでも多くの人に知ってもらうことが必要だと考えます。

 高齢発症てんかんは薬での治療が可能です。ただし、治療開始時には高齢者の特性を考慮し、抗てんかん薬は低量から開始し、薬物動態、肝代謝、低アルブミン血症に気をつけます。

表1 高齢者の特性
・胃酸分泌が減少し、抗てんかん薬の吸収が遅くなる
・特にフレイルの高齢者では、体内の脂肪が減少し、脂溶性薬剤の分布が減少する
・血清アルブミンが減少しており、アルブミンに結合していない薬剤の比率が高くなる
・年齢を重ねるうちに糸球体濾過能の低下が起こり、薬剤の排泄に影響を与える

抗てんかん薬は、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、フェニトインなどが昔から知られていますが、最近では、副作用や薬物相互作用などの問題の少ないレベチラセタムのような新規抗てんかん薬も登場しました。特に、糖尿病や高血圧など、てんかん以外の疾患の治療のための薬剤を飲んでいることが多い高齢者に処方する機会が増えています。


 最後に久保田先生は「高齢者がてんかんを発症するのは、意外と多いと感じています。てんかんと診断されれば、適切な治療を受けることができ、発作をなくすことができます。今後も啓蒙に力を入れていきたいと考えています」と話し締めくくりました。


【引用・参考文献】
1)日本神経治療学会治療指針作成委員会,編:標準的神経治療:高齢発症てんかん,2012.:p.464

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