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【連載】山内先生の公開カンファランス

第41回 冠動脈造影で入院している80歳代の女性患者さん

  • 公開日: 2017/9/12

今月の事例
[ほんとけーきさん から提供された事例]
心不全の既往もあり、治療薬も服用中でした。入院時や冠動脈造影前後の血圧は100~120mmHgでした。翌日、血圧が80~90mmHg台と低く、また治療前から治療翌日までに輸液を2000mL入れていますが、腎機能がやや悪いからか、尿量は少なめでした。

→あなたならどうする?


≫山内先生の解説を先に読みたい方はこちら

みんなの回答

2017年7月にナース専科「コミュニティ」会員のみなさんに聞きました。回答者数は、74人。

Q1. この患者さんにはどんなリスクがあると思いますか。

●心不全、腎不全(CITYさん)

●既往歴でもある心不全の急性増悪、冠動脈造影に使用した造影剤の副作用(S.K.さん)

●急性腎不全、うっ血性心不全、肺水腫、内服薬の副作用(Mさん)

●腎不全で透析になる可能性あり(あしさん)

●冠動脈造影の遅延性ショック。腎機能障害、腎不全、慢性心不全(はなこさん)

●循環器や解毒の力が弱く、合併症の危険がある(ぷーさん)

●輸液負荷によるうっ血性心不全、造影剤による腎機能低下、感染症による敗血症(Qatsiさん)

●腎機能悪化、心不全(tさん)

●心不全、腎不全(ななさん)

●インが多くアウトがあまり出ていないことから心不全の増悪、造影剤アレルギーによる腎機能障害(めぐさん)

●腎機能の低下、心不全の悪化、服用中の薬の副作用がある(みっきーさん)

●再度心不全になるリスク。造影剤による影響。胸水貯留。腎不全のリスク(S・Nさん)

Q2. リスクを予防・回避するためには、事例にあるほかに、どんな情報があるとよいと思いますか。

●尿量、体重、SpO2、むくみ、呼吸苦、血液検査データ(CITYさん)

●本人の自覚症状、心拍数、不整脈の有無、末梢冷感の有無、浮腫の有無、頸動脈怒脹の有無、発汗の有無、肺音、呼吸状態、チアノーゼの有無、SpO2、内服薬の種類、冠動脈造影検査の結果、さらに可能なら12誘導心電図、採血結果、心エコー結果(S.K.さん)

●BUNやCr、BNPなどの採血データ、心拍数、不整脈の有無、内服薬名、尿量、SpO2値、呼吸状態、湿性咳嗽の有無、症状に対する患者のS情報、むくみの有無、末梢のチアノーゼの有無、心エコーの結果、CAGの結果(Mさん)

●血液検査で腎機能を調べたり、2回に分けて検査して造影剤のリスクを減らす(あしさん)

●意識レベル、血圧だけではなく、その他のバイタルサイン、正確な尿量、バルーンカテーテル挿入の有無、浮腫の有無(はなこさん)

●血液データ、尿量、心電図、サチュレーション(なるさん)

●心拍数、心電図波形、浮腫の有無、体重、頸静脈怒張の有無、採血データ(心機能、腎機能、炎症反応)、心エコー、胸部レントゲン(心拡大、肺炎)、体温 呼吸状態、SpO2、肺炎、尿路感染、カテーテル治療の感染徴候、精神症状、意識レベル、インアウトバランス(Qatsiさん)

●検査データ、浮腫など全身の所見、体重(tさん)

●浮腫の状態、脈拍数、サチュレーション値、呼吸数、呼吸状態、胸部症状、体重増減有無確認(なおさん)

●EF(左室駆出率)、血液データ、他にどのような内服薬を服薬しているか、普段の尿(ななさん)

●インアウトバランスの数値、最終の体重、心不全での入退院歴、エコーや採血のデータ、アレルギー症状の有無(めぐさん)

●冠動脈造影の検査結果、排尿量(みっきーさん)

●浮腫の有無。栄養状態。呼吸状態の変化の有無。普段の排泄状況。普段の体重(S・Nさん)

Q3. このような状態の患者さんに対して、あなたならどのようなケアを行いますか。 Q4. Q3で挙げたケアに優先順位を付けてください。 Q5. Q4の優先順位の理由を教えてください。 ニックネーム
バイタルサインの測定、体重測定を行う。呼吸苦があれば、ベッドアップする。浮腫の有無、むくみがあれば状態を観察する 1.バイタルサインの測定、2.呼吸苦の有無の観察、3.浮腫の有無の観察、4.体重測定 バイタルサインが悪ければ、(SpO2が低いなど)すぐに処置をしなければならないため。また呼吸苦があれば、酸素投与を考えなければいけない。浮腫が強ければ、利尿剤投与の検討をしなければならないし、体重測定は、インアウトバランスを測定できるので。 CITYさん
モニターはすでに装着していることを前提に、バイタル測定を行い、すぐに医師に状態を報告して指示を仰ぐ(点滴の流速変更や、利尿剤の指示、あるいは、ドブポン®など、点滴内容の変更、採血、レントゲンなどの指示を受ける)。酸素化不良であれば、酸素投与を行う 1.バイタル測定を施行、2.医師に報告し、指示を仰ぐ、3.酸素化が良好になる体勢とし、必要時、酸素投与をする 医師に報告するために、あらかじめ聞かれそうな情報は収集しておくことが必要だから(モニター装着の上、現在のバイタル測定を行い現状を報告する) Mさん
血圧低下のため、下肢を挙上する。モニター装着、意識レベルの確認、呼吸状態、SpO2低下ならドクターコールをし、指示を仰ぐ 1.意識レベルの確認、モニター装着、2.血圧だけではなく、その他のバイタルサインの測定(呼吸観察、SpO2)、3.バルーンカテーテル挿入、4.下肢挙上 意識レベルの確認、呼吸状態を確認しないと死に至るため はなこさん
歩行時の付き添い、インアウトチェック、バイタルサイン測定 1.バイタルサイン測定、2.インアウトチェック、3.歩行時見守り 状態の変化をチェックし、リスクを回避するため、身体状態をまずチェックしていく なおさん
呼吸困難感があれば、血圧の変化をみながら、ヘッドアップや起座呼吸ができるようにする。胸部症状があれば、12誘導心電図をとり、モニター管理を実施するとともに医師へ報告する 基本的には患者さんの安楽を優先する。ただし、モニター装着よる心電図変化や血圧の低下等がみられる場合は医師指示に従った治療を優先する 心不全の既往があるなかで血圧が低下傾向を示しているため、全身への循環動態が悪化している可能性が高いと判断します。そのため、全身への循環・酸素供給を優先させたいですが、患者さんへのストレスは心負荷の増大を招く要因となるため、患者さんが一番楽だと感じられるような状態を作ってあげたいと考えます S.K.さん
バイタルの継続チェック、心音聴取、尿の性状確認、低血圧に対しての下肢挙上 1.バイタルの継続チェック、2.心音聴取、3.尿の性状確認、4.低血圧に対しての下肢挙上 バイタルが基本 5さん
点滴量をしぼる、尿量の確認、利尿剤の使用、バイタルサイン、SpO2の低値があれば、医師の指示を仰ぎ、酸素吸入 1.バイタルサイン、2.SpO2、3.尿量、4.点滴量の確認 バイタルサインを測定し、全身観察後に指示をあおぐため 蹴球ママさん
バイタルサインチェック、浮腫の有無、インアウトバランス、呼吸状態の観察、体重、食事摂取量 1.バイタルサイン、 2.呼吸状態3.インアウトバランス、4.体重、5.浮腫、6.食事 バイタルサインは全身状態の変化を知る上で優先する。心不全の徴候を見るため呼吸状態の観察は必要。腎不全の観察のためインアウトバランスを見る S・Nさん

事例つづき
体重を測定すると入院時より1kg 程度増加しているものの、本人には特に自覚症状はなく、血圧以外に心不全の症状はないため、主治医に報告するか、もう少し経過観察したほうがよいか判断に迷いました。


Q6. このような状況のとき、あなたならどのような行動をしますか。

●もともとの体重がわからないのですが、プラスバランスで経過しているのは間違いないので、継続的に観察ができる状況にしておきたいと考えます。そのため、モニター管理下にするとともに、訪室の頻度を増やし、バイタル測定の頻度も増やします(S.K.さん)

●モニター装着し、不整脈の有無を確認。また、夜間、状態が悪くなる可能性があるため、医師には報告をしておく(Mさん)

●主治医に心配なのでという言葉を添えて、経過観察していよいか確認する(CITYさん)

●心不全症状がないならば即時報告は不要だが、主治医が来たタイミングで現状報告は入れておく(5さん)

●血圧は低下、輸液を2000入れてて、尿が少なめなど明らかにおかしいので、ドクターコールする(はなこさん)

●主治医とカンファレンスする機会を設ける(ななさん)

●主治医報告をする。容態を医師が知らない場合、急変時に責任もとれないし、家族や患者に対して申し訳がたたない(ぱんさん)

●自覚症状はないが、高齢のためいつ状態は悪化することも考えられるため、主治医に報告します(ももさん)

●現在は血圧低下以外に症状はない様だが心負荷の増大による増悪リスクも考えられるため安静度を検討する。また他スタッフにも相談する。輸液量の調整や、尿量が少ないことから利尿剤を使用する可能性もあるため医師へは報告すると思います(めぐさん)

●80歳という年齢から、自覚症状がなくても、具体的に訴えられない症状があるかもしれないので、体重の増加、尿量、食事量、などを観察し主治医に報告する(S・Nさん)

次ページは山内先生の解説です。

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