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【連載】見直そう! CKD・透析ケア

透析患者さんの観察やシャント管理のポイントは?

執筆 喜瀬はるみ

東葛クリニック病院 透析統括師長 / 透析看護認定看護師

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シャントの狭窄に注意して観察する

 シャントは透析患者さんの命綱と言っても過言ではありません。ですが残念ながらシャント閉塞は突然起こることが多く、透析患者さんのQOLを低下させる要因になりかねません。シャント閉塞は血圧の著明な低下や脱水などでも起こりますが、その多くは血管が狭くなった部位(狭窄部位)に血の固まり(血栓)ができ、血管が詰まってしまうことが原因となります。狭窄が出現するとシャントはさまざまな信号を送りますので、普段からちょっとした変化に気づき、早期に発見できれば、患者さんへの侵襲も最小限に抑えられます。狭窄部位からの信号を逃さない観察ポイント「看て・聴いて・触って」についてお話します。

「看て」

 シャント肢を駆血すると、比較的狭窄部が観察しやすくなりますが、さらにシャントの腕を心臓の高さより少し持ち上げてみます。血管がへこむ部位があれば、その部位が狭窄している可能性があります。

 また鎖骨下静脈の狭窄がある場合は、シャント血流が心臓に戻れないため、血流が塞き止められダムのような状態になり、シャントの腕だけが太くなります。さらにシャント肢側の前胸部から頸部の静脈が怒張しているなどの症状がみられた場合は、静脈高血圧症の疑いがあります。

 シャントに狭窄が生じたときの、透析中の変化としては、脱血不良・穿刺困難・静脈圧上昇、あるいは、再循環による透析効率の低下などがあります。また狭窄とは別に、動脈血がシャントの静脈へ大量に流れすぎてしまう(盗まれる)ことにより、末梢循環障害・虚血症状になることを、スチール症候群と言います。高齢者・糖尿病・SLE など末梢循環障害を有する患者さんや閉塞性動脈硬化症を合併している患者さん、頻回のアクセス手術により、末梢動脈の血流量が低下している症例では、スチール症候群の発症頻度が高いと言われています。症状としてはシャント肢のみの冷感・しびれ・疼痛が発現します。シャントを守るためにはシャントの腕だけでなく、両上肢の左右差や周辺血管の観察・透析中の観察も必要になります。また、発赤や腫脹など感染の早期発見のためにもシャントを看ることはとても重要なことです。

「聴いて」

 良好なシャント音はザーザーと低音で、また連続した音とされています。しかし、シャント血管が狭窄していた場合、高音が聴かれることが多くあります。なぜ高音が聴かれるのでしょうか? 風の強い日に少しだけ窓を開けてみます。ヒューヒューと高音のすきま風の音が聴かれると思います。狭いところを流れると音は高くなるように、シャントの狭窄部位ではこのヒューヒューといった高音(狭窄音)が聴かれます。さらに狭窄が進むと、連続して流れることができずドン・ドンと太鼓のような断続音(拍動音)が聴かれる場合があります。シャント管理において聴くことはとても大切です。

「触って」

 シャントを触ったときにビリビリとした振動を感じます。この振動をスリルと言います。シャントとは、動脈と静脈の血管をつなぐことで、奥深くに流れている動脈血を表面の静脈血管に流し入れ、簡単安全に動脈血が取り出せるようにしたものです。本来、静脈血管には流れるはずがなかった、勢いのある動脈血が流れ込むことで、シャント静脈内では凄まじいスピードで血液が血管壁に当たりながら進んでいきます。この乱流をスリル(振動)と言います。スリルの有無、強さも重要な観察項目です。また熱感など感染の早期発見のためにもシャントを触ることはとても重要と言えます。

 観察ポイントを以上に挙げましたが、どこにも狭窄がなく、全く問題のないシャントはほぼ存在しません。部位によっては狭窄音が聴かれたり、血圧低下の場合はスリルが弱くなったりと変化していきます。大事なことはシャントが正常か異常かではなく、患者さんの通常を把握し、そこからどのように変化しているかを観察することで透析患者さんのシャントを守ることができるのです。


引用参考文献
日本透析医学会:慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン2011年版