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【連載】小児医療における胃瘻管理について

第3回 小児胃瘻と成人胃瘻の違いを考える【PR】

解説 上野文昭

大船中央病院 消化器・IBDセンター 特別顧問

解説 高見澤 滋

長野県立病院機構長野県立こども病院 小児外科 部長

解説 津川二郎

愛仁会高槻病院 小児外科 主任部長

解説 尾藤祐子

神戸大学医学部附属病院 小児外科 診療科長・外来医長

胃瘻管理に取り組む成人診療の医師1名と小児科医師3名の先生方にお集まりいただき、小児のいろうについての座談会が開催されました。成人医療との違い、在宅医療や小児期から成人期医療へのトランジションの問題など、胃瘻を取り巻くさまざまな現状が明らかになりました。


小児の胃瘻はどのような場合に適応か

座長・上野:最初にお尋ねしたいのは小児の胃瘻の適応です。私自身も実感しているように、高齢者の場合、特に不可逆的な神経障害のある患者さんには、胃瘻を造設すべきか悩むところがあります。小児の場合はいかがでしょうか。

高見澤:適応として悩むことはほとんどありません。ただし、重度の染色体異常があり心疾患もあるような児の場合、手術に耐えられるかという点で悩むことはあります。

津川:小児外科疾患の中には胃瘻を造設しないと生きられない疾患もあります。胃瘻が命を救うことに
なりますから、絶対的な適応となります。

尾藤:医療者側からみた適応としては、お二人がおっしゃったとおりだと思います。ただ、家族側としては、手術や身体に穴をあけることを生理的に受け入れられないといった抵抗感もあります。そのようなときは、経鼻胃管の継続も視野に入れながら、ご家族には胃瘻のメリットとデメリットをお話ししています。経管栄養が不可欠の場合には、そのルートのひとつとして胃瘻があるとお伝えしています。

上野:高齢者の場合、胃瘻造設以前にそもそも人工的に水分や栄養の補給を行わず、何もしないという選択肢もあるのではないかという葛藤があるのですが、小児の場合それがないということですね。ところで高齢者では、胃瘻を造設しても寝たきりの状態が続くことが多いのですが、小児では変化があるのでしょうか。

高見澤:それまで摂食訓練がなかなか進まずにいた児でも、胃瘻でミキサー食を投与すると、経口摂取が進むようになる例が多くみられます。またミキサー食の使用は、親としても“自分が作った食事を食べてもらえる”という喜びを感じる方も多くて、胃瘻に対する抵抗は非常に少ないと感じています。

津川:重症の染色体異常のある児の場合、胃瘻によって神経的な改善が見込めるわけではないのですが、在宅での管理が安定してくると、今まで無表情だった児が笑ったり、お母さんの声に反応するようになるなど、数値では表わせない効果がみられることがあります。

上野:なかなか研究論文にするのは難しいですが、それは大事な変化ですね。

津川:家族の心の評価は数値化できない部分ですが、そういった家族からの情報を積極的に発信することで、新たに胃瘻の適応になった患者家族に、胃瘻管理のメリットが伝わりやすくなると考えます。

尾藤:低血糖をきたしやすい小児代謝疾患で、睡眠中の水分補給のため胃瘻を造設した症例があります。その児は現在、小学校に通っています。必要な栄養を必要な時間に入れるためのルートとして、胃瘻を造設するのは非常に意味があると思います。

上野:高齢者の場合は、加齢により身体機能も弱っているため、生命予後も限られています。小児の場合の予後はいかがでしょうか。

高見澤:当然のことながら、原疾患によります。当院では、通常私たちが食べているものに近づけるという意味で、ミキサー食による胃瘻管理を行っています。これにより、食事が積極的なものとなるようにしています。経腸栄養剤による治療からミキサー食による食事に移行していくことにより、多少なりとも予後が長くなるのではないかと考えています。

津川:当院では、胃瘻管理が30年以上になる患者さんもいて、非常に安定しています。しかし、ご両親は60歳代後半で、今後ますます介護負担が増えてくるという状況に、不安を抱えています。また、小児期から成人期医療になかなか移行できないという、トランジションの問題もあります。こうした問題をいかに解決していくかということが大切です。

尾藤:当院でも長期にわたって胃瘻管理をしている患者さんがいます。考え方としては、小児の場合人生を始めていくために胃瘻造設を行う。胃瘻自体に積極的な意義があると思います。

小児の胃瘻造設―開腹かPEGか

上野:次に胃瘻の造設術についてお尋ねします。小児の場合、胃瘻の造設術は開腹が多く、PEGの実施例が少ないのはなぜでしょうか。Gauderer先生は小児にこそ、なるべく開腹しないでより低侵襲な方法ということでPEGを開発したのですが。

高見澤:小児の場合、開腹しても非常に小さな傷ですみます。つまり、それほど大きな侵襲はないと考えて
います。また、全身麻酔は必ず必要となりますし、PEGの場合、手術後の問題点として、胃壁と腹壁が固定するまでの間の不安定さがあると思います。そうした点からPEGの有意性をあまり実感できず、私の場合、開腹という確実な方法を選択しています。

津川:院内の消化器内科の医師に相談したところ、小児では、重度身心障害児が多いため身体に変形が多いので、PEGでは適切な位置に造設するのが難しいと話していました。最も大切なのは、一番安全な術式を選択することだと考えているので、私も基本は開腹で行っています。

尾藤:以前、患者さん側がPEGを希望されて、数例実施したことがあります。ただ津川先生がおっしゃったとおり、体の変形で断念をすることも少なくありませんでした。

上野:小児の消化器内科を専門とする医師の場合でも、PEGは実施しないのでしょうか。

尾藤:日本では、小児科に内視鏡医師が非常に少ないので、成人の消化器内科の医師に依頼することが多いのですが、体の変形がなければ実施することもあります。

津川:小児医療施設の中には積極的にPEGを実施しているところもあります。施設によって方針が違うというのが、日本の現状だと思います。

上野:成人期医療では、胃瘻造設はPEGしかないと考えている医師もいます。私は、PEGが難しいのであれば開腹を選択すればいい。両者にそれほど大きな違いはないのではないかと考えていますので、先生方のご意見をうかがって安心いたしました。今後も小児期から成人医療へのトランジションの問題も含めて、私のような成人医療に携わる医師と小児科の先生方とで、継続して議論をしていきたいと思っています。

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