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【連載】訪看ステーション「よつば」の公開カンファレンス

CASE19 退院後、ストマから便漏れを生じるようになったケース

執筆 川上 加奈子(かわかみ かなこ)

株式会社のものも よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任

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困難事例19 ストマを造設して退院したが退院後に漏れが多発し・・・


75歳、男性のAさんは、直腸小腸がんにより人工肛門を造設した。
入院中は、平面型のパウチにより、2日間ごとの交換で状態が安定していたが、実際に退院してしばらくすると、便の漏れを繰り返す状況となった。
そこで、よつばでカンファレンスを開き、何が原因で漏れが起きているのか、適切なパウチの選定ができているのかを話し合うこととなった。


カンファレンスの目的

入院中から退院時までは安定していたAさんのストマについて、現在、便漏れが生じている原因をつきとめ、今後のケアの方針を考える目的で、カンファレンスが開かれた。



りん:病院では平面のパウチで、中2日もっていたのに、退院後に急に漏れてしまうようになった原因はなんだと思いますか?


ほのか:食事内容の変化でしょうか・・・? 退院すると結構入院中に我慢していたぶん、いろいろなものを食べて便が緩くなる方も多いですから。


さき:実際のところ、Aさんはどうでしたか?


ほのか:はい。入院中はお粥だったのに、退院した翌日から我慢していたケーキや天ぷらなど油分の多いものを食べてしまい、便が水様になってしまっていました。
そこで、食事内容は便の状態への影響が大きいため、慎重に食べるものを増やすこと、油分の多いものや食物繊維が多いものは控えめにしていく必要性を指導しました。


りん:確かにそれも大きな原因ですね。便の性状の変化は漏れに大きく影響しますから。他には何かありますか?


かな:活動量ですね。入院中はにベッドで横になっていることがほとんどだったのが、退院すると自宅内で動くようになります。しゃがんだり、無意識のうちに身体を捻ったり、いろいろな動きが出てきますから。


りん:そうですね。それも大切な情報ですね。でも一番大切なのは、皆さん、パウチを貼る前に、お腹の状態をよく観察していましたか?


ほのか:お腹の状態ですか?


りん:そうです。そもそも、多くの種類があるパウチのなかで、なぜAさんにはそのパウチが選定され、退院に至ったのかを考えたことはありますか?
ただ用意されたパウチを貼るお手伝いをするというだけでは、訪問看護師としての役割を果たしているとはいえないのでは? トラブルが生じたとき、十分なアセスメントができなくなります。


ほのか:ストマの高さがあるから平面なんだなとか、水様で漏れやすいから凸型なのかな、くらいは考えていましたけれど、改めてそういわれると、腹部全体の状態をきちんと把握はしていなかったかもしれません。



カンファレンスのあと、改めてAさんの腹部への観察を行うと、退院時とは形状が変化していることが判明した。退院当初は、全体に柔らかく張りの少ない状態で、ストマは上を向いていた。しかし改めて観察すると、ガスが溜まる張り気味の固い腹部となっており、ストマはやや下を向き、さらに3時から9時方向の部分に新たなくぼみができていることがわかった。





ほのか:Aさんの便が漏れやすくなった理由を、便の性状の変化だけと考え、ストマ周囲にペーストで土手を作ることで対応していましたが、改めて腹部を観察すると、退院当初とは形状がかなり変化していることに驚きました。


りん:今はペーストをストマ周囲に補充することで、漏れはなくなっているのですね?


ほのか:はい。しかし、どうしても6時方向に潜り込みが生じてしまい、そこだけ少し爛れてしまいます。そこでパウダーとスプレーを使用しています。


りん:では次回からは、くぼんだ部分にもペーストを補充し、高さを調整してから土手付きのパウチを貼るようにしてみませんか。潜り込みが減ると思いますよ。


かな:窪みの出方は、一定の姿勢を観察しているだけでは気がつけないことがあります。寝た状態では窪みはないのに、座位になると横ジワが激しくなる場合もあります。
そこで、ストマを貼る前の状態で、利用者さんにとって、日常生活のなかで最も多く取る姿勢になっていただき、窪みの位置を把握して、補強に生かすことも大切だと思います。


りん:そうですね。そして自分の知識だけによるアセスメントで行き詰まったときには、パウチメーカーの担当者に相談する方法もあります。親切に対策を考えてくれ、状態に合ったパウチのサンプルを送ってくれたりもします。どんどん連携していくと自分たちの勉強にもなりますね。


さき:利用者さんがストマ外来にかかっているなら、外来と連携することも大事ですね。



こうして、腹部の窪みの調整をしたところ、潜り込みもなくなり、ストマ周囲の爛れも改善された。




たーちん:入院中の過ごし方と、在宅に戻ってからの生活は大きく異なります。季節による気温の変化や皮膚体温の変動、体型やストマの形状の変化など、変化の形はさまざまです。
そこで、退院したあとの状態をよく観察し、変化を把握し、アセスメントを行い、その時点で最も合っているパウチを選択することも私たちの大切な役割ですね。
利用者さんは、便の漏れを非常にストレスとして感じますから、ストレスの軽減にもつながり、とても重要なアプローチです。


りん:はい!
ストマケアはやはり奥が深いけれど、やりがいもあります。頑張ります!

次回は最終回、これ以上、治療できることはないとわかっている、在宅患者さんへのかかわりについて紹介します。



ステーション「よつば」スタッフプロフィール

りん(所長)
訪問8年目(看護歴32年救急他)在宅ケアでの創意工夫の才能はピカイチ。勉強家で人情が厚く面倒見がよい。スーパーポジティブ思考の持ち主。
さき
訪問6年目(看護歴28年オペ室他)
神社仏閣巡りが趣味の歴女。またDIYも得意。面白き事もなき世をおもしろくが座右の銘。夢への妄想パワーは半端なし。
たーちん
訪問11年目(看護歴33年):スーパーグランマナースで超自由人。しかし可愛い笑顔で憎めない。利用者さんの為ならエンヤコラ。テニスから茶道までサラリとこなす我がステーションの親分的存在。
ほのか
訪問1年8カ月(看護歴15年小児科他)老若男女に好かれる天性の明るさの持ち主。癒し系キャラ。現在、スポーツクラブのZUMBA(ダンス)にハマっている。
かな(主任)
訪問5年目(看護歴16年。NICU他)思い込んだら一直線。やや天然ボケあり。訪問看護と猫と執筆活動(この原稿含)と音楽活動をこよなく愛している二児の母。