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【連載】臨床で使える精神科看護

[こだわりが強い]精神科患者さんにみられる症状を学ぼう❷

執筆 吉川隆博

東海大学健康科学部看護学科 准教授

Seisinkango

「こだわり」のとらえかた

 精神疾患をもつ患者さんの中で、「こだわり」が強い人については、どのように理解をすればよいのでしょうか?
「こだわり」が強い患者さんの場合には、そのような言動をとる背景に何らかの理由があります。その理由として多いのは「不安を回避するため」というもので、それぞれの患者さんの疾患特性が関与している場合が少なくありません。

 したがって疾患特性を理解することが、患者さんへの適切な対応のヒントにつながることがあります。ここでは、疾患ごとに、強いこだわりをもつ要因や背景も含めてみていきましょう。

統合失調症をもつ患者さんの場合

 統合失調症をもつ患者さんで、特に病歴が長い人には、行動面に「こだわり」がみられることがあります。

新しいことや変化に順応できない「こだわり」

 「こだわり」の理由の1つに、認知障害があります。認知障害によって、状況に応じ臨機応変な行動をとることが苦手になっているのです。そのため、新しいことや変化に慣れるまでに長期間を要したり、ときには混乱を来したりする場合があります。患者さんは普段のやり方や手順を貫こうとするため、その姿が「こだわり」や頑固な一面として目に映ることになります。

 また、診察時間の1~2時間前から玄関前や受付に並んで(人によっては、しゃがんで)いる人をよくみかけます。こういった行動にも、適当な頃合いをみて行動するという、その時々の状況判断が苦手な部分が現れています。
このような姿をみると、一般の人たちは、融通が利かないと思いがちです。しかし本当は、患者さんは苦手な状況に直面し、不安な気持ちになっています。私たちはそれを理解することが必要です。何度も同じような質問をするといった状況も、患者さんの不安の現れなので、安心できるような説明が必要になります。そして、患者さんが理解できるまで繰り返し説明するようにしましょう。

細かいことや特定の物へ執着する「こだわり」

 患者さんの中には、特に細かいことや特定の物への強い「こだわり」を示す人がいます。そのような患者さんは、長期入院体験の影響も重なり、興味や関心の幅が狭くなっていることも考えられますが、思考面の障害が原因となっている場合もあります。一見して落ち着いて見える患者さんでも、妄想をもちながら生活を送っている人もいて、妄想によって、その「こだわり」が、本人にとっては重要な意味をもつ行動になっている場合も考えられます。

 強引な対応は患者さんを混乱させるおそれがあるため、本人の「こだわり」を尊重しつつ、患者さんの気持ちを確認しながら、その他の選択枝と折り合いがつくところを探すようにしましょう。

強迫性障害(強迫神経症)の患者さんの場合

 強迫性障害をもつ患者さんには、「強迫観念」という、本人にとって苦悩や不安を生じる観念(考え)や思考が、本人の意志に反して繰り返し心に浮かんでくることが特徴としてあります。

度重なる確認行動や儀式的行動を示す「こだわり」

 強迫観念による不安・苦痛を回避するため。確認行為を何度も繰り返したり、儀式的な行動をとったりする場合があります。そのような行動が、患者さんの「こだわり」と感じられることがあります。

 例えば、患者さんの中に清潔・不潔に対する不安や恐怖が強い人の場合、何度も繰り返し手を洗うなどの洗浄強迫という行為が認められます。患者さん自身も、そういった観念や思考に抵抗したり、打ち消そうとしたりする努力を行いますが、成功することは難しい状況にあります。また、繰り返し行う行動に対して、あまり意味がないと認識していても、行わないと不安が強くなるためやめることができないという状況になっています。

 したがって、強迫観念が原因で行っている行為を無理に止めようとすることは、かえって患者さんの不安・恐怖を増強させることにつながりかねないので、行為よりも患者さん自身に注目し、不安などの気持ちが表現できるように対応しましょう。

自閉症スペクトラム障害をもつ患者さんの場合

 自閉症スペクトラム障害(自閉症スペクトラム症)とは、対人相互反応と対人コミュニケーションの障害、常同的・反復的・限局的な行動や興味(こだわりなど)などが認められる障害です。アスペルガー症候群、高機能自閉症、自閉症などが必ずしも明確に区別できないことから、自閉症スペクトラム障害に統一されました。(DSM-5)

 一般的には子どもの障害と認識される傾向にありますが、近年では思春期や成人期になって診断を受ける人も増えてきています。

行動・手順への執着や同じことの繰り返しにみる「こだわり」

 自閉症スペクトラム障害の患者さんは、想像力を働かしたり全体像を把握したりすることが苦手です。また興味の偏りや得意・不得意が極端な傾向にあります。

 そのため予測がつかないことや状況の変化に対応することへの不安が強く、行動や手順などに「こだわり」が見られたり、同じことを繰り返したりすることがあります。

 言語的なコミュニケーションによる理解が苦手な患者さんもいるため、口頭による説明ではうまく伝わらない場合には、文字や図など視覚的な方法を用いて伝えるようにするとよいでしょう。また、患者さんの「こだわり」を長所として活かすような対応も効果的でしょう。


参考文献
昼田源四郎:分裂病者の行動特性,金剛出版,1995.
大野輝雄:現代臨床精神医学 改訂第12版,金原出版.2015.
出口禎子,他編:ナーシング・グラフィカ精神看護学 精神障害と看護の実践, メディカ出版.2017.