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【連載】新しくなった! 成人肺炎診療ガイドライン2017

誤嚥性肺炎の患者さんのリスク因子評価と予防

執筆 今村圭文

長崎大学病院 第二内科講師

Haien

誤嚥性肺炎を繰り返す患者さんの肺炎予防の観点も含めると、リスク評価は重要

個人の意思やQOLを考慮した肺炎治療を行う場合も

 高齢者において誤嚥のリスク評価を行うことは重要です。医療者は、市中肺炎CAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP)では、まず疾患終末期や老衰状態ではないかの評価に加えて、誤嚥性肺炎を繰り返す患者さんではないかを評価します。

 ただし、誤嚥があっても、必ずしも誤嚥性肺炎を発症するわけではありません。そのため、誤嚥性肺炎については、誤嚥するリスクと誤嚥により肺炎を発症するリスクは別に考える必要があります。誤嚥のリスク因子と肺炎のリスク因子を、表7に挙げています。これらには、ある程度のエビデンスがあり、表7のような症状、疾患を有する患者さんは誤嚥性肺炎のリスクが高く、繰り返し発症するリスクも高いといえます。

 誤嚥性肺炎を繰り返す患者さんの場合は、肺炎の治療を強力に推し進めるよりも、個人の意思やQOLを考慮して緩和ケアを主体とした治療を行います。また、患者さんや家族の視点から誤嚥のリスクを評価してもらうことは、誤嚥の予防を意識した生活を送る際の重要な情報となります。

 そのため、誤嚥のリスク因子を評価することを、今回の肺炎診療ガイドラインでは推奨しています。しかし、実際に誤嚥のリスク因子を評価した臨床研究の数や質が十分ではないため、「弱い推奨」に留まっています。

誤嚥性肺炎の予防は食事の姿勢や顔の角度に注意し、歯磨きなどの指導を行うことが必要

食事の形態や食後の過ごし方など全般に気を配る

 誤嚥自体を予防することが重要なため、例えば食事の仕方には十分注意を払う必要があります。具体的には図5に示すように、患者さんの座る姿勢や顔の角度に気をつけます。介助者が立ったままで食事の介助を行うと、患者さんが顎を上げた姿勢になりがちなために、むせやすくなります。

 食事後は、胃からの逆流を防止するために、2時間程度は臥床しないように指導します。食事は、食べ物を小分けにしたり、とろみを付けるなどして形態にも注意します。食事後は、歯磨きも必ず行うように指導します。

高齢者の肺炎を早期発見するためのアセスメントのポイント

高齢者は肺炎でも発熱しないことがあるため、倦怠感や頻呼吸に着目する

 高齢になるほど免疫反応が落ちるために、肺炎の症状が表在化しにくくなります。例えば、発熱は肺炎の主要な症状の1つであり、若年者の肺炎ではほとんどの症例に認めますが、高齢者では約半数ほどしか発熱をきたしません。逆に高齢者では、倦怠感、活動性の低下、食欲低下などの症状が最も出やすくなります。これらの症状が現れた際には、肺炎を発症していないかを注意する必要があります。

 また、診察所見で高齢者に認められやすいのは、頻呼吸(呼吸数>20回/分)です。発熱がなくても、倦怠感があり、呼吸数が増加している場合には、肺炎の診断のため、胸部X線による検査が行われます。


参考文献
1)日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017作成委員会,編:成人肺炎診療ガイドライン2017.日本呼吸器学会,2017.
2)日本呼吸器学会医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成委員会,編:医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン.日本呼吸器学会,2011.
3)河野茂,他編著:ストップ!肺炎 医療従事者用/WEB版.日本呼吸器学会,2013.(2017年6月27日閲覧)(http://fa.jrs.or.jp/guidelines/stop-haienmedical02.pdf)

(ナース専科マガジン2017年8月号より転載)