お気に入りに登録

【連載】見直そう! CKD・透析ケア

腎不全時にはどんな合併症があるの?(CKD-MBD、心不全、感染症など)

執筆 喜瀬はるみ

東葛クリニック病院 透析統括師長 / 透析看護認定看護師

Ckd%e9%80%8f%e6%9e%90 icon

CVDでの死亡リスクが高い透析患者さん

 日本透析医学会の「わが国の慢性透析療法の現況」による慢性透析患者に関する基礎集計によれば、
2015年末の透析患者の死因は

1位「心不全」:26.0%
2位「感染症」:22.0%
3位「悪性腫瘍」:9.3%
4位「脳血管障害」:6.6%
5位「悪液質/尿毒症」:4.6%
6位「心筋梗塞」:4.3%

となっており、その中でも心不全、脳血管障害、心筋梗塞を併せた心血管疾患(CVD)の割合は、全体で36.9%を占めるなど、透析患者さんの合併症管理において、心血管障害への対策は最も重要な課題となっています。さらに透析患者さんでは、CVDによる死亡リスクが、透析患者さんではない人と比較し10〜30 倍と著しく高いことが明らかになっていります。一方、CVDが慢性腎臓病(CKD)の発症、進展の危険因子であることも判明しており、CKDとCVD はお互いに悪循環を引き起こす「心腎連関」を形成していると想定されています。

 近年、これらの「心腎連関」に関しては、さまざまな機序が関与していることが示唆されており、その中の1つに「CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常(chronic kidney disease-mineral and bone disorder;CKD-MBD)」が多くの研究から、CKD患者さんの腎不全進展、CVDや死亡などのリスクに関連することが相次いで報告されています。

 腎臓は、骨・副甲状腺・腸管と密接な関係をもって生体のミネラルバランスを保持しています。CKD患者さんでは、活性型ビタミンDの低下やリンの蓄積に伴う血管の石灰化とともに、さまざまな骨病変、ミネラル代謝異常が出現します。(機序については第6回 CKD患者さんの1日に必要なカルシウム量は?摂取時の注意点は?参照) これらの疾患は全身性であり、さらに透析療法や治療薬による影響を受けるため、その病態は非常に複雑です。しかし、近年その病態解明は進み、これまで以上に生命予後を重視した治療指針の模索が始まっており、透析患者さんのさらなるQOLの改善につながることが期待されています。

 その他、死因の第1位の心不全において、CKD-MBDが起因するもの以外で、高率に発症するものとして、うっ血性心不全が挙げられます。透析患者さんは、十分な尿量が排出できず、また過剰な塩分・水分摂取による、体液量の貯留がうっ血性心不全につながります。症状としては、左心不全に伴う肺うっ血と血圧低下、右心不全に伴う末梢組織の浮腫、頸静脈怒張、胸・腹水貯留などがあり、肺うっ血が軽度な場合には労作時呼吸困難が出現しますが、重症になると、安静時呼吸困難、起坐呼吸が出現し、やがて肺水腫に至ります。予防としては塩分・水分制限と十分な透析を受けることが重要となります。

透析患者さんは感染症も併発しやすい

 次に透析患者さんの死因、第2位である、感染症についてお話します。透析患者さんが感染症を併発しやすい理由としては、食事制限や透析膜からのたんぱく質の漏出による栄養状態の不良や貧血、また免疫力が低下する高齢患者・糖尿病患者の増加などが考えられます。また、ダイアライザをはじめとしたさまざまな透析器など人工の異物との接触や、バスキュラーアクセスへの頻回な穿刺など物質的負荷や、頻回の通院・入院、輸血など感染の機会が多いこと、透析室という大部屋で観血的な治療を長時間受けるという環境も大きな要因となります。

 感染による入院リスクとしては、呼吸器・尿路・腸管の順に多いとされ、これは、肺炎等の気道感染症、尿の停滞(尿量減少、無尿)による尿路感染症、腸内細菌叢の変化による消化管感染が考えられます。いずれにしても、予防と早期発見・早期治療が最も重要となります。医療スタッフは、「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(四訂版) 」を参考に、基本的な感染防止対策の遵守が必要です。また、患者さんへのインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種の推奨や、手洗い(シャント穿刺部周辺)・うがい・咳エチケットなど、感染対策に関する教育の徹底も大切です。

 透析療法を続けているとさまざまな合併症が起こることがあります。どのような合併症が起こるかをよく理解し、早期発見や早期対処を心がけていく必要があります。


参考文献
●日本透析医学会:「わが国の慢性透析療法の現況」2015年末の慢性透析患者に関する基礎集計(2017年11月22日閲覧)http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2016/p023.pdf
●透析患者における感染症対策—標準化と個別化:臨床透析2014;30(7).