お気に入りに登録

【連載】臨床で使える精神科看護

[錯乱・興奮]精神科患者さんにみられる症状を学ぼう❹

解説 北村周美

東海大学健康科学部看護学科 助教

Seisinkango

錯乱状態とは

 錯乱状態は、意識混濁、精神運動興奮、幻覚、その他に伴う複雑な意識障害の総称で、せん妄状態やもうろう状態も含まれます。

 急性一過性精神病、急性器質性精神症候群、てんかん、ヒステリー、躁病などにみられます。

具体的な特徴例 

*行動にまとまりがない
 集中力や注意力が低下し、一連の行動を終えるまでに、時間がかかったり、寄り道をしたりします。例えば、入浴準備の場面では、準備自体に時間がかかったり、準備には取りかかるものの、衣類や洗面器など一部の用意ができなかったり、ほかのことに気をとられたりします。

 その他の例としては、自室やベット周辺に物が散乱していたり、多動で絶えず動き回っている様子がみられることがあります。さらに、急な大声、ジャンプなど突発的な行動などが現れることもあります。

*会話が困難
 思考にまとまりを欠くため、「脈絡のない言葉の羅列」「しゃべり続ける」などの状態がみられます。一方で、無言になったり極端に口数が減ったりなど、意思の疎通性が悪くなることもあります。

*感情の起伏が激しい
 イライラして怒りっぽいかと思えば、急に泣き出すなど、感情の起伏や変化が激しく、些細な刺激に過剰に反応しやすくなります。

興奮状態とは

 一般的にも「興奮する」という表現が用いられるように、健康な人でも感情的になると興奮することがあります。しかし、ここでの興奮状態は、その反応が過剰で抑制がきかず、自分や他人への影響が大き過ぎる状態をいいます。

 統合失調症では、幻覚妄想状態や躁状態に伴って興奮状態を呈することがあります。また、不安やストレスへの脆弱性から興奮状態に陥る人もいます。

 自分を傷つけたり、他者へ危害を加えることもあるので、速やかに対応する必要があります。

錯乱状態・興奮状態への介入方法

安全の確保

 患者さんが錯乱状態や興奮状態に陥っている場合、緊迫した場面になります。患者さんは、判断力や現実検討(自分の心の中に起きていること、自分が考えていることが、合理的、現実的であるか判断する能力)が低下しています。そのため、患者さん本人と周囲の安全を確保し、状況に応じて複数の医療者で対応するほうが賢明でしょう。周囲の危険物を除去し、事故防止に努めます。

アセスメントと治療・看護

 あまりに意識障害や興奮が激しく、患者さん自身の安全が脅かされるような場合には、抗精神病薬などで鎮静を図ります。精神科病棟では、包括的暴力防止プログラム(comprehensive violence prevention and protection programme:CVPPP)を導入している施設もあります。

 不安やストレスといった状況因子がある場合には、ゆっくりと静かな環境で患者さんと対話し、共感的態度や受容的態度でかかわりながら、感情の表出を促してみましょう。こころの整理を助けることで、患者さんが落ち着くこともあります。

 看護師も人間なので、患者さんに恐怖を覚えることがあります。しかし、落ち着くまで介入を先延ばしにすると、かえって患者さんの状態や状況が悪化します。病状によるものなのか、何らかの背景や状況因子の存在があるのかを冷静に丁寧に探ることで、対応法もみえてきます。

 また、錯乱状態や興奮状態が持続しているときは、活動性が亢進している一方で、食事、排泄、休息などの基本的な日常生活行動は不足していることが多くなります。そのため、不足しているセルフケアを補うような看護が求められます。


包括的暴力防止プログラム(CVPPP)とは
 CVPPPは、病状により不穏・興奮状態にある患者さんに対し、尊厳を守り、安全を確保しながら、必要な治療や看護を提供することを目指したプログラムです。リスクアセスメント、対話による興奮状態への介入方法(ディエスカレーション)、身体的介入技法(チームテクニクス、ブレイクアウェイ法)、心理的サポート(ディブリーフィング)から成り立っています。



参考文献
大熊輝雄,原著:現代臨床精神医学,現代臨床精神医学 第12版.金原出版,2013.
野嶋佐由美,他監:ナースによる心のケアハンドブック 現象の理解と介入方法,照林社,2000.