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【連載】フィジカルアセスメント症状別編

血尿(尿の異常)のアセスメント

解説 山内豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

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目次

STEP1 まずは、これを考えよう

血尿には肉眼的血尿と顕微鏡的血尿がある

 血尿とは、透明で濁りのないはずの尿に、血液が混ざって混濁している状態です。血液が尿に混ざることがどういう異常を示しているのかを考える前に、そもそも正常な尿とはどういうものなのか、再確認しておきましょう。

 健康な人の尿は淡い黄褐色で、濁りがなく透明です。その生成から排泄までは次のようなプロセスを経ています。

 まず、腎臓に流れ込んだ血液は、糸球体で濾過され、ボーマン嚢に流れ込みます。これが原尿で、1日あたりおよそ160ℓにも及ぶといわれています。原尿にはブドウ糖やアミノ酸、電解質など有用成分も多く含まれています。そのため原尿が尿細管を通過する間に水分や有用成分の再吸収が行われ、実際に尿として排泄されるのは原尿の1%程度となります。

 こうして生成された尿は尿管を通って一時的に膀胱に溜められ、一定量に達すると尿意を催し、尿道を通って体の外に排出されます。

 尿に血が混ざって出てくるのは、この尿の排出ルートのうちのどこかに異常があるからだと考えられます。このように患者さん自身が自分の眼で見て確認できる血尿を「肉眼的血尿」といいます。血尿には、もう一つ「顕微鏡的血尿」というのがあります。見た目にはごく普通の尿に見えるのに、尿検査で「血尿」と判定されるケースです。これは尿を400倍の顕微鏡で見たときに、正常なら1視野あたりに1個程度の赤血球が見えるのに対し、5個以上ある場合をいいます。

 顕微鏡的血尿は尿検査を受けない限りわかりません。肉眼的血尿が尿の排泄ルートのトラブルに起因する可能性が高いのとは逆に、顕微鏡的血尿の場合は尿の生成ルートに問題が起こっていることが多いという相違があります。

 なぜなら通常それほど多く排出されないはずの赤血球がどっさりあるということは、腎臓の網の目が破れているおそれがあるということだからです。腎臓に関して自覚症状が出てくるのは、問題が深刻化してからです。患者さんの検査結果を見て、例えばクレアチニンなどで腎機能の低下を示す数値を見たら、必ず尿検査で腎機能に問題がないかどうかも精査するようにしましょう。なお、赤色の尿でも血尿ではない場合もあります。

Action1 血尿のメカニズムを理解する

 腎臓から尿道まで、どこに異常があり、血尿となっているのか、その判別の手がかりになるのが尿の色や出方です(表)。

出血部位と特徴の表

 排尿と同時に鮮血が出るなら、尿の出口に比較的近い尿道あるいは外陰部に炎症や傷が生じて出血していると考えられます。特に排尿し始めは赤く、次第に赤い色が薄くなっていく場合はその可能性が高いでしょう。なぜなら、膀胱から尿道口の間に出血があって血液が混入した場合は、出始めだけ血尿として排出されていて、膀胱に貯留されている尿は正常な尿であると考えられるからです。
 
 逆に最初から最後まで同じように赤い色が続くなら、膀胱、または膀胱より上に問題があると思われます。例えば、水をいっぱいに入れたじょうろに赤いインクを一滴垂らして植木に水をかけてみてください。赤いインクは撹拌されて、薄い赤みを帯びた水が植木にかかるのが見えるでしょう。これと同じように考えましょう。膀胱は尿を一時的に溜めておくプールのようなものです。そこに血が滴ると、尿道を通って排泄されるまでに尿と混ざって一定の色になって排泄されます。そこで、血尿が排出された際、一定の色であるなら、腎臓から膀胱までのルートになんらかの異常があり出血したと考えられます。

●結石による出血:結石が通過する際、尿管などを傷つけて出血が起こります。この場合には断続的な激痛が伴うので、判断の目安になるでしょう。

●炎症による出血:血尿が炎症に起因する場合には、膀胱炎や腎盂腎炎などが考えられます。女性の場合は男性よりも尿道が短いため、尿の出口から細菌が逆行して感染しやすいという性質があります。

●がんや腫瘍による出血:泌尿器系の臓器や前立腺にがんや腫瘍ができると出血がみられます。

●腎不全など腎臓疾患による出血:顕微鏡的血尿が見られることがあります。

血尿ではなくても赤色を呈する場合

●筋肉の損傷による赤色尿(ミオグロビン尿):赤い尿が出ても血尿と断定するのは早計です。尿の色が褐色に近い赤い色で、尿中の潜血反応は陽性なのに、顕微鏡検査では赤血球が見られない。こういう場合は、尿路系のトラブルによる血尿ではなく、ミオグロビン尿と考えられます。
 
ミオグロビンは筋肉中に含まれる色素で、血液中の酸素を筋肉組織内に運ぶ役割を果たしています。尿中にミオグロビンが含まれているというのは、何らかの理由で筋肉の損傷があったことを示しています。
  
薬の副作用、広範囲の熱傷、感電、打撲、激しい運動など、筋肉の損傷を招くことがなかったか、患者さんに確認することが大切です。
  
原尿中のミオグロビンが多くなると尿細管に沈着し、腎不全を起こすおそれがあるので注意が必要です。

●赤血球の損傷による赤色尿(ヘモグロビン尿):血液中で赤血球が破壊され、ヘモグロビンが尿中に排泄されて起こります。溶血性貧血、重症感染症などが原因となります。

●その他:ポルフィリン尿症ではワイン色を呈するポルフィリン尿、また薬物性の着色尿でも赤色がみられることがあります。

STEP2 緊急性の判断と原因を精査しよう

 患者さんが血尿を訴えた場合や排泄介助などで尿の色に異常があれば、原因を精査しながら必要なケアを組み立てなければなりません。

 肉眼的血尿の場合は腫瘍や結石などの外科的治療が必要なケースや、腎盂腎炎や膀胱炎といった尿路感染症などの内科的治療が必要な原因疾患が発見されることが多いので、主治医に報告してさらに詳しい検査が必要となります。

 また、血尿が一過性ですぐに普通の色に戻ったとしても、一度でも肉眼的血尿があった場合は、必ず医師に相談しましょう。

 そのほかに、原因をアセスメントする際に、患者さんの生活や服薬情報などから、血尿か否かを精査することも大切なことです。

 トイレを長時間我慢したり、水分の摂取を控えたりすると、腎臓の水分調節機能が働いて、濃縮された茶褐色の尿が出ることがあり、これを血尿と誤解することがあるからです。また、前に述べたように薬の副作用やミオグロビン尿など、尿路系のトラブルとは別の原因で尿の色に異常が出ることもあります。

 そのほかに、女性の場合は生理の出血を血尿と間違えやすいので要注意です。男性の場合には精巣からの出血が尿道に残っていて、尿に混ざって出る、ということもあります。

Action2 問診で緊急度や原因を精査する

 バイタルサインの測定を行い、患者さんの全身状態を観察したら、血尿の経過や程度、随伴症状の有無などを、
問診で聞き取りましょう。

問診の流れ

01 経過と程度を聞く
「いつから血尿が出ていますか?」

【こんな質問で絞り込もう】
●いつから血が混じるようになりましたか?
●毎回血が混ざっていますか? 
●排尿中に色の変化がありますか?
●血液の塊が混ざっていることはありますか?
●尿の色はどんな赤色でしたか?

【アセスメントのヒント】
●血尿がどれくらい続いているのかを把握します。血尿が長く続いていると、出血の影響で貧血やショック状態を招くおそれがあるので注意が必要です。
●生理の時期も確認し、血尿と誤認していないかどうか問診しましょう。
●薬の副作用などでミオグロビン尿が生じたり、ビタミン剤などによっても尿の色が変わるので、そうした薬剤の服用期間など、きっかけとなる出来事と血尿が出始めた時期が重なるかどうかについても確認しておきましょう。
●排尿時に血尿の色が変化するかどうかで、原因部位がどのあたりかを検討します。
●血液の塊が見られる場合には、尿路を塞いでしまい、尿閉を起こすおそれがあるので注意が必要です。
●尿の色が褐色に近い場合、濃縮尿の可能性もあります。

02 原因を聞く
「何か思い当たることはありませんか?」

【こんな質問で絞り込もう】
●膀胱炎と診断されたことはありますか?
●風邪をひいていませんか? 
●最近、激しい運動をしませんでしたか?
●思い切り腹部をぶつけたりしていませんか?

【アセスメントのヒント】
●膀胱炎は繰り返すことが多いので、既往歴を確認します。
●風邪をひいた後などに腎盂腎炎を起こしている可能性があります。
●激しい運動により筋肉が損傷され、ミオグロビン尿が見られることがあります。
●外傷性の腎損傷や膀胱損傷による出血の可能性もあるので、打撲の有無も確認します。

03 随伴症状の有無を聞く
「血尿以外に気になることはありませんか?」

【こんな質問で絞り込もう】
●熱は出ていませんか? 
●背中や腰のあたりに痛みはありませんか?
●排尿時に痛みはありませんか?
●尿量が減ったり、逆にトイレが近くなったりしていませんか?

【アセスメントのヒント】
●腎盂腎炎や膀胱炎など炎症を起こしていると、発熱を伴うことがあります。
●腎盂腎炎は腰背部痛を伴うのも特徴的です。また、結石が移動する際にも激しい腰背部痛を引き起こします。
●排尿時に持続して痛みがある場合は、尿道に原因がある場合が多く、排尿し始めに痛みがある場合は、膀胱炎が考えられます。
●結石や血液の塊が詰まって尿管を塞いでいる場合には、尿量が減少することがあります。逆に膀胱炎などでは頻尿が見られることもあります。

Action3 緊急度を判断する

 がんや腎不全など速やかに治療を開始しなければならない疾患もあります。患者さんの全身症状を確認しつつ、緊急性が高いか、どこに原因があるかをアセスメントしていきましょう。

バイタルサインの確認

 全身状態の確認のために行います。膀胱炎や腎盂腎炎などの感染症の場合は、発熱を伴います。

尿検査をする

 尿中の赤血球数を確認します。赤血球が見られない場合は、ミオグロビン尿の可能性があります。採尿後は時間の経過につれ、赤血球の崩壊が進むので、迅速に検査することが大切です。

痛みの部位を確認する

 腰背部痛があり、痛みが持続している場合、または腎臓のあたりを叩いたときに、響くような痛み(叩打痛)がある場合は、腎盂腎炎の可能性があります。痛みが移動している場合は、結石の疑いがあります。

画像を見る

 結石、腫瘍、炎症などの場合、X線やCTで確認することができます。

STEP3 アセスメントを看護につなごう

 血尿は腎臓から尿道までのどこかに異常がある場合に起こります。患者さんの体に何が起こっているのかを把握し、必要な看護を行いましょう。また、必要に応じて、医師に的確な報告ができるよう、しっかりとアセスメントすることが大切です。

Action4 緊急性のある場合の看護

 尿は腎臓が行う循環血流量の調整にも関連しています。血尿が見られ、出血量が多い場合には、ショック状態に陥るおそれがあります。

 そうした徴候が見られたら、下肢を高くして重要臓器への循環血流量の確保をし、医師への連絡など緊急対応を速やかに行いましょう。特に痛みもなく血尿が続いている、またはときどき見られるという場合は、がんである可能性もあるので、医師へ伝えましょう。

Action5 緊急性のない場合の看護

 持続して血尿が続いている場合は、貧血になっている可能性があり、血液検査などでの確認が必要です。

 もう一つ、血尿で気をつけたいのは、血液の塊ができることです。血塊ができると、尿道口や尿道カテーテルを塞いでしまい、尿を自力で排出できない尿閉状態になってしまいます。これを膀胱タンポナーデといいますが、膀胱の腫瘍や潰瘍、前立腺の手術後に起こる場合が少なくありません。尿量が極端に減少している場合には、この可能性があるので、継続的に尿量のチェックを行いましょう。

 また、膀胱炎の場合は、繰り返すことが多く、陰部を清潔に保つ、トイレを我慢しない、体の抵抗力が下がらないよう健康に気を遣う、など再発予防を心掛けるように伝えます。

まとめ

 排泄に伴う症状や苦痛の訴えは、羞恥心を伴うために、患者さんはなかなか言い出しにくいものです。重症化しないように、患者さんの様子で何か変だなと感じたら、抱えている症状や苦痛を聞き出すような声かけを行いましょう。また、問診などの際にも、羞恥心に配慮した聞き方をするように努めることが大切です。

(「患者さんのサインを読み取る! 山内先生のフィジカルアセスメント【症状編】」より転載)