【連載】今さら聞けない! 基礎看護技術をおさらい

与薬とは?5R(6R)、剤形別特徴と投与の手順

執筆 高梨あさき

順天堂大学医療看護学部/大学院医療看護学研究科 講師

【目次】


関連記事
* 薬がうまく飲めないときは?【服薬管理】ケア&対応の5つのワザ
* 今見直したい薬剤耐性(AMR)の現状と対策ー看護師に求められることを考えよう
* 【連載】安全・確実に実施する!与薬のポイント


与薬とは

 与薬とは病気の程度やその症状に合わせて薬を与えることです。看護師は、医薬品を医師の指示のもと正しく与薬するための確認や管理、服薬指導、直接的な与薬の実施、実施後の観察など重要な役割を担っています。目的に合った効果が得られているか、また副作用がないかをしっかり観察し、治療にフィードバックしていくことが求められています。

 注射法以外の主な与薬経路の種類としては、経口内服薬、口腔内薬、直腸内薬、点眼薬などで、そのほかに貼付剤、吸入剤、塗布・塗擦剤などがあります。

 与薬時のエラーを減らすための対策として、指差し声出ししながら5項目(表1)についてRightつまり正しい事(5R)を確認することが重要です。確認のタイミングは与薬指示受け時、与薬準備時(この間、更に3回)、与薬直前など各段間で確実に行いましょう。さらに準備時や施行直前などは2人以上の目で確認(ダブルチェック)を行うことも多くの施設で取り入れられています。そして、何かおかしいと感じたときは必ず立ち止り、確認や相談を行う意識を持つことも重要です。

*5Rだけでなく「正しい目的」、「正しい記録」などを含め6Rと言ったりもします。

5R

与薬の準備の共通事項

1 処方箋の記載内容と薬剤の記載内容について5Rを確認する。
2 これから使用する薬剤の作用と患者さんの病態が合っているか、年齢や性別、アレルギーの有無等も含めて総合的にアセスメントする。
3 患者さんへの説明と同意を得る。

剤形別特徴と投与の手順

1.経口内服薬 

特徴
 口から飲み込む与薬法ですので、基本的に食物と同じ経過をたどります。口腔を経て胃腸で消化された後、主に小腸で吸収され静脈血に入り、その後は門脈から肝臓へ送り込まれ、肝臓の働きによりさまざまな代謝を受けます。このように全身循環の前に肝臓で代謝処理されることを初回通過効果と言い、内服薬の体内動態の特徴として重要です。その後、血流によって全身を巡り、各種臓器や組織に分布し薬効を発揮します。消化、吸収、代謝に時間を要するため血中濃度の上昇、作用発現に時間がかかりますので、比較的病状が安定した場合に選択される与薬方法だと言えます。

 錠剤、丸薬、カプセル、粉末、液体などの形状が存在します。さまざまな目的で使用され与薬で取り扱う機会も最も多いのではないでしょうか。しかし、内服薬は飲み忘れや飲み間違いが効果に大きく影響するため、服薬管理が重要です。患者さんは内服薬の重要性を十分理解していない場合もあり、対象に合わせた服薬指導や管理を行うことも重要な看護師の役割です。嚥下や排泄状況も効果に影響するため、常に全身状態を観察、アセスメントし必要時に説明や援助を行なうことで患者さんのアドヒアランスを高め、安全な与薬を実施する事が看護職者に求められています。

剤形の種類

準備
1 経口摂取状況や消化器症状の有無を確認し、経口内服が可能かアセスメントする。
2 衛生学的手洗いをする。
3 使用物品として処方箋、薬剤、薬袋、吸い飲みやコップに水か白湯を準備する。
4 患者さんにこれから行う与薬方法、所要時間について説明し同意を得る。
5 患者さんを坐位が可能な場合は坐位に、坐位がとれない場合はギャッジアップ等で頭部を挙上し、嚥下しやすい姿勢に整えます。

手順
1 もう一度処方箋と薬剤の5Rを確認し、1回の指示量を包装シートから出す。
2 患者さんの嚥下状況に合わせて、1回に飲み込む量を調整する。
3 錠剤やカプセルの場合は舌中央部にのせて、薬が食道内に停滞しないよう水または微温湯100mL程度で服用してもらう。
4 口腔内に薬剤が残っていないか確認する。

留意点
・粉末が飲みづらい場合はオブラート等を使用する。
・口腔内が乾燥していた場合は、内服する前に水や微温湯で口腔内を湿らせる。
・服用時間は医師の指示(表3)、処方箋に従い、薬物の作用発現時間を考え与薬し、観察を行う。
・高齢者では薬剤包装PTPシートのまま飲み込む事故が多く報告されているため、注意して必要な援助を行う。

与薬指示表記

2.口腔内薬 

特徴
 口腔内薬には舌下錠(舌下に留める)、バッカル錠(頰の内側に留める)、トローチ錠(舐めるようにして口腔内に留める)がありますが、ここでは主に舌下錠について説明します。舌下錠は舌下に薬を留め、粘膜を介して静脈に吸収されるため、内服薬と異なり、全身循環の前に肝臓による代謝(初回通過効果)を受けず速やかに目的臓器で作用することができます。代表的なのが狭心症の患者さんが発作時に使用するニトログリセリンの舌下錠です。    

口腔内薬の投与方法

準備
1 口腔内が乾燥している場合は水などで口腔内を湿らせる。
2 衛生学的手洗いをする。
3 患者にこれから行う与薬方法、所要時間について説明し同意を得る。
4 誤って飲み込むと作用を失うことを説明する。

手順
1 もう一度処方箋と薬剤の5Rを確認し、1回の指示量を包装シートから出す。
2 飲み込まず、薬を舌下に留めるよう説明する。
3 1〜2分で作用が現れ約4分で最大血中濃度に達するため、自覚症状の変化やバイタルサイン等を観察する。

留意点
・ニトログリセリンは初回通過効果を受けやすく、誤って飲み込むと消化(代謝)されてしまい効果をほとんど失うことを説明する必要があります。
・狭心症の発作時は患者さんの不安も強いため、落ち着けるよう声かけと表情などの観察を常に行いましょう。

3.直腸内薬(坐薬)

特徴
 直腸に挿入された薬剤は直腸内で溶解し、直接直腸粘膜から吸収されます。直腸粘膜組織は薬物の吸収が早く、ほとんどが肝臓を経由することなく体循環系に入るため、作用の発現は非常に速いです。なんらかの理由で経口与薬が難しい場合や速やかな作用を期待するときに選択されます。

 軟膏の塗布や錠剤を使用する方法があり、与薬の目的は大きく分けて①局所的な効果を目的とする下剤など、②全身性の効果を目的とした解熱剤(坐薬)などに分かれます。

 局所作用を目的とする場合も基本的に体内に吸収されるため、全身性の副作用の出現に注意が必要です。

準備

1 直腸や肛門部に異常がないか、下痢等がなく坐薬の挿入が可能かアセスメントする。
2 排便目的に与薬する以外は、坐薬などの挿入に伴い便意を催す可能性があるため、与薬前に排便を済ませてもらう。
3 使用物品としてトレイ、処方箋、薬剤、潤滑剤、手袋、ガーゼ、トレットペーパー、膿盆などを準備する。
4 羞恥心や寒さを伴うため、カーテン等を閉め配慮した環境に整える。

手順
1 もう一度処方箋と薬剤の5Rを確認する。
2 患者さんには肛門部が確認できるように、側臥位等の体位をとってもらう。
3 手袋を装着してから、坐薬を包装から出し先端に潤滑剤をつける。
4 患者さんには腹圧をかけないように口呼吸をしてもらうよう声かけをする。
5 坐薬を持っていない方の手で肛門部を開くように押さえ、呼気のタイミングに合わせゆっくり坐薬を3〜4cm程度挿入する。

坐薬の投与

6 トイレットペーパーなどで肛門部を押さえ、薬剤が出てこないことを確認する。
7 手袋は適切に廃棄し、手指消毒をしてから患者さんの寝衣や環境を整える。
8 患者さんには終了したことを伝え労いの言葉をかける。
9 作用発現が早いため、与薬直後から患者さんの自覚症状やバイタルサインの観察を行う。

留意点
・坐薬は体温で溶けるため、素手で持たず必ず手袋を着用する。
・坐薬や軟膏の挿入の深さは指の第二関節(約3~4cm)を目安にする。

4.点眼液

特徴
 点眼薬は結膜嚢にたまり、徐々に目に吸収されて虹彩や強膜・毛様体などに作用します。主に眼科領域で抗炎症剤、散瞳・縮瞳剤などとして局所作用を目的に使用されますが、最終的には全身にも作用するため全身性の副作用にも注意が必要です。

準備
1 眼瞼や眼球の状態を観察し、点眼可能かアセスメントする。
2 衛生学的手洗いを行う。
3 使用物品として、処方箋、薬剤、拭き綿等を準備する。
4 患者さんには仰臥位や坐位で上を向いてもらう。

手順
1 もう一度処方箋と薬剤の5Rを確認する。
2 拭き綿を下眼瞼に当てて下方に軽く引き、患者さんには上を向くように声をかける。

点眼薬

3 結膜・角膜損傷と感染防止のため、容器先端を睫毛や患部に触れないように1滴点眼する。
4 1分間ほど目を閉じてもらい、鼻腔内への流出を避けるため目頭の下を軽く押さえてもらう。

留意点
・結膜嚢内に保持できる薬液量は点眼薬1滴分以下のため、複数の点眼薬を使用する場合は、5分以上間隔を空ける。
・点眼薬の種類によっては視覚に影響が出るため、注意事項の説明や事前に排泄を促すなどの援助を行う。


引用・参考文献

1.三上れつ、小松万喜子,編; 演習・実習に役立つ基礎看護技術 根拠に基づいた実践を目指して 第4版,ヌーベルヒロカワ,2015,p.203-13.
2.任 和子,他;系統看護学講座 専門分野Ⅰ基礎看護学[3]基礎看護技術Ⅱ 第17版,医学書院、2017, p286-96,299−300.
3.伊賀 立二,小瀧 一 ,澤田 康文 監修;くすりの地図帳,講談社,2007.
4.丸山敬 : 休み時間の薬理学 第2版,講談社、2015, p.1-74.
5.吉岡 充弘, 泉 剛, 井関 健;系統看護学講座 専門基礎分野 疾病のなりたちと回復の促進[3]薬理学 13版,医学書院、2014,p 263.

関連記事
* 薬がうまく飲めないときは?【服薬管理】ケア&対応の5つのワザ
* 今見直したい薬剤耐性(AMR)の現状と対策ー看護師に求められることを考えよう
* 【連載】安全・確実に実施する!与薬のポイント

ページトップへ