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【連載】治療の継続を安全に支える! 外来がん化学療法の看護

外来がん化学療法の基本

執筆 伊藤直美

国立がん研究センター東病院 看護部 がん化学療法看護認定看護師

2017 8 cancer

がん治療において多くの場面でみられる化学療法は、新たな治療薬等が登場するなど目まぐるしく進化しています。安全な治療のためには、その現状と基本、さらに外来での看護を理解しておくことが大切。まずはがん化学療法の基礎的な知識と外来での実践について確認しましょう。


がん化学療法と薬剤

 がんは、異常な細胞の集合体です。正常な細胞は、細胞分裂を繰り返す中で細胞死(アポトーシス)に至る過程がプログラムされ、一定以上に増殖することはありません。しかし、がん細胞は、がん抑制遺伝子の発現抑制や欠如、がん遺伝子の活性化やアポトーシスの抑制などから、細胞分裂を繰り返し増殖します。がん細胞が109個以上になると、直径1cm程度の小さな腫瘤として診断が可能となります。

 がんの治療には、「手術療法」「放射線療法」「化学療法」があり、化学療法は点滴や内服で抗がん薬を用いる治療のことです。手術療法や放射線療法は局所的な治療であるのに対し、化学療法は全身治療となり、治療目的は、がん種や病期によって、「治癒」「延命」「症状緩和」に分類されます。化学療法が適応になる場合、進行・再発がんを対象とした化学療法単独治療と、手術療法の前後での実施や放射線療法と組み合わせて行う集学的治療があります。

化学療法に用いる薬の種類

 がん化学療法(以下、化学療法)には、殺細胞性抗がん薬、分子標的薬、ホルモン製剤が使用され、最近では免疫チェックポイント阻害薬も登場しています。

[殺細胞性抗がん薬]
 従来の化学療法は、殺細胞性抗がん薬が主流でした。殺細胞性抗がん薬は、がん細胞の核酸(DNA、RNA)に作用し、細胞周期を阻害し、抗腫瘍効果を発揮します。しかし、がん細胞だけではなく、細胞分裂の盛んな正常細胞にも作用するため、骨髄抑制や脱毛などの副作用が出現することになります。殺細胞性抗がん薬の種類は以下のようになります。

 アルキル化薬は、DNAの二重らせんを結合させることで、DNAの複製を阻害し抗腫瘍効果を発揮します。白金製剤は、DNAのらせん構造に橋を架けたように結合させ、DNAの合成を妨げることで抗腫瘍効果をもたらします。核酸塩基に類似した構造をもつ代謝拮抗薬は、核酸の合成過程や核酸合成に必要な酵素を阻害することで、DNAの合成を阻害し腫瘍の作用を阻害します。ピリミジン代謝拮抗薬、葉酸代謝拮抗薬、プリン代謝拮抗薬に分けられます。
 
 抗がん性抗生物質は、薬剤によって作用機序が異なります。アントラサイクリン系薬はDNA合成に必要な酵素を阻害します。また、酵素と反応して活性酵素を作り出し、細胞膜やDNAに傷害を与えるといわれています。毒性が蓄積すると心毒性が生じるので、総投与量には注意する必要があります。トポイソメラーゼ阻害薬は、DNAの二重らせんの一部を切断し、複製終了後に再度結合させる酵素(トポイソメラーゼⅠ、Ⅱ)を阻害することで、DNAの再結合を阻害し、複製を妨げます。微小管阻害薬は、細胞分裂の際、染色体が両極に分離するときに働く微小管に作用し、がん細胞の分裂を抑制します。代表的なものを表1-1に示します。

代表的な殺細胞性抗がん薬
国立がん研究センター内科レジデント:付録1 抗悪性腫瘍薬の種類.がん診療レジデントマニュアル 第7版.医学書院,2016,p.455-75.より作成

[分子標的薬]
 分子標的薬は、がん細胞に特有なタンパク質や、がん細胞の増殖における特異的な分子を標的としている薬剤で、大きく抗体薬と小分子薬とに分類されます。抗体薬は、分子量が大きいため、細胞膜を通過することはできず、細胞膜表面の抗体に作用します。マウス由来とヒト抗体由来の成分により、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体に分けられ、マウス由来成分が多いとインフュージョンリアクションの副作用が出現しやすくなります。小分子薬は、分子量が小さいため、細胞内に取り込まれ、細胞内のシグナル伝達を阻害します。代表的な分子標的薬を表1-2に示します。

 副作用としては、それぞれの薬剤によって皮膚障害など特有な症状が出現します。

代表的な分子標的薬
石川和宏:分子標的薬の特徴とメカニズム.基本まるわかり! 分子標的薬 第2版.南山堂,2013,p.20-61.および 小澤桂子:がん化学療法の基礎知識.理解が実践につながるステップアップがん化学療法看護.小澤桂子,他監.学研メディカル秀潤社,2016,p.39.より作成

[ホルモン製剤]
 ホルモン製剤は、がん細胞の増殖にホルモンが関係している乳がんや前立腺がん、子宮体がんが対象となります。ホルモンの分泌を抑制したり、がん細胞のホルモン受容体をブロックすることで抗腫瘍効果を発揮します。
 


新たな免疫療法「免疫チェックポイント阻害療法」

 近年、がん細胞が免疫細胞の攻撃を抑制し、免疫反応を回避することがわかってきました。そこで、がん細胞の免疫細胞であるT細胞に対する抑制を解除し、再びT細胞の働きを活性化させることでがん細胞を攻撃する、新たな免疫療法の開発が行われています。免疫を抑制する免疫チェックポイント(PD-L1・PD-1、CTLA-4)を標的として阻害するため、免疫チェックポイント阻害薬といわれます。ニボルマブ(オプジーボ®)、イピリムマブ(ヤーボイ®)などがメラノーマ、非小細胞肺がんなどに適応されるようになってきました。
 
 代表的な副作用としては、皮疹や下痢などがみられます。甲状腺機能の異常や1型糖尿病なども報告されているので、注意して観察していく必要があります。


外来で行う化学療法の特徴

増加する外来での化学療法

 2007年にがん対策基本法が成立し、それに基づいたがん対策基本計画において、「化学療法の推進とこれらを専門的に行う医師らの育成」が課題として挙げられました。
 
 さらに、地域がん診療拠点病院で外来化学療法室の設置がなされ、都道府県がん診療連携拠点病院および特定機能病院が、化学療法部門を設置しました。
 
 2012年にがん対策推進基本計画が見直され、「放射線療法、化学療法、手術療法の更なる充実とこれらを専門的に行う医療従事者の育成」と新たに「働く世代や小児へのがん対策の充実」が重点課題として挙げられています。
 
 近年、化学療法の発展と副作用を軽減する支持療法薬の開発、DPC(包括医療費支払い制度)の導入によって外来化学療法の件数は増加しています。がんに対する化学療法は、殺細胞性抗がん薬、分子標的薬のどちらにおいても、投与経路や投与管理が多様化しています。このため、薬剤のリスクや管理体制に応じた評価体系が見直され、2016年診療報酬改定でも外来化学療法加算の引き上げが行われました(表1-3)。同加算では、施設基準等が設けられ、それにより診療加算が1と2に区分されています。

外来化学療法加算
厚生労働省:個別改定項目について.平成28年度診療報酬改正について(2017年5月29日閲覧)http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000112306.pdfより作成

外来と病棟との違い

 外来化学療法では、患者さんが治療を継続しながら、生活の質の向上を図っていく必要があります。入院しているなら常に医療者からの支援が受けられますが、外来治療では、治療後は自宅での生活となり、患者さんや家族によるセルフケアが重要となります。ですから、外来化学療法看護では、治療中の限られた時間の中で患者さんの情報・状態を把握し、問題点を整理したうえで、患者さんや家族のセルフケア能力に合わせた支援を実施することが求められます。それとともに安全な投与管理も行わなければなりません。

 そのためには、患者さんの外来化学療法に対する不安の軽減を図ったり、患者さんの情報把握のためのオリエンテーションを実施するなど、短い時間の中でより効率よく適切なケアが提供できるような工夫が大切になります。さらに、薬剤師や栄養士、医療ソーシャルワーカー(MSW)などの他職種との連携が取れるようなシステム、緊急時や副作用出現時の対応システムなどを整備することも重要になり
ます。

 さまざまながん種の患者さんが治療を受ける外来化学療法では、看護師は日々別の患者さんを受け持つことになります。そのため、化学療法の看護についての知識を深め、スタッフ同士で患者さんに関する情報を共有することが必要となります。


国立がん研究センター東病院の外来化学療法の実施体制
 現在、当院の通院治療センター(外来化学療法室)は、専任医師1人、看護師長1人、副看護師長2人、看護師15人、看護助手2人、看護補助者3人、薬剤師5人という体制で運営しています。うち、2人ががん化学療法看護認定看護師、1人ががん性疼痛看護認定看護師で、専門知識を生かしながら、患者さんやスタッフ指導を行っています。外来化学療法は、各科の治療を実施していることから、新人看護師の配属はなく、経験のある看護師が配属されています。


外来に多いレジメン

 化学療法には、投与する薬剤の種類や量、期間、手順などを時系列で示した治療計画(レジメン)があります。外来で施行されるレジメンは、投与時間が5時間以内のものが多くなります。しかし、ポートを造設して携帯ポンプ(例:シュアフューザー®A[ニプロ])などを使用すれば、長時間でも外来治療が可能になってきています。

 外来化学療法が行われる代表的ながん種は、肺がん、乳がん、大腸がん、膵がん、胃がん、悪性リンパ腫で、主なレジメンは表1-4のとおりです。

代表的ながん種に対するレジメンの種類

外来化学療法での看護師の役割

レジメンの理解

 レジメンには、抗がん薬だけではなく支持療法薬や輸液などを含めての治療計画が時系列で示されています。ただし、同じ経口抗がん薬であっても、点滴の抗がん薬との併用により内服期間と休薬期間の違いが生じるなど、療法によってはレジメンが異なる場合があります。看護師はレジメンを理解し安全な投与管理を実施することが大切です。

 レジメンで確認するのは、①投与するレジメン内容(抗がん薬と抗がん薬の特性に合わせた支持療法薬)、②抗がん薬の投与量、③投与スケジュール(投与間隔)、④投与方法(投与順序、投与時間、投与経路、使用する器材)です(表1-5)。これらを確認することで治療内容全体を理解し、適切な投与管理の実施と患者さんの安全を守ることにつなげられます。

レジメン例

抗がん薬投与時の看護

 当院では、図1-1のような流れで外来化学療法を行っています。この中で、最も重要となる抗がん薬の投与を中心に看護のポイントを説明します。
 
治療の流れ

[投与前の看護のポイント]
 外来で治療を行ううえで、情報収集は必須です。患者さんが安全に治療を受けられ、在宅で副作用症状への対応ができるかどうかを把握し、さらに適切な情報やケアの提供を行うために、投与前には表1-6の情報を把握しておきます。

抗がん薬投与前に確認する項目

[投与時の看護のポイント]
 安全な外来化学療法においては、投与前に実施した薬剤についてのアセスメントを参考に、急性期症状に備えることが重要です。注意したい主な急性期症状としては、インフュージョンリアクションや過敏症によるアレルギー症状、悪心・嘔吐(予期性・早期)などが挙げられます。

 インフュージョンリアクションやアレルギー症状については、患者さんごとのリスクの把握、前駆症状のアセスメントなどが重要です。また、悪心・嘔吐では、抗がん薬のことを考えただけで誘発される予期性悪心・嘔吐にも気をつけます。環境調整や患者指導は大切なポイントになります。万一、血管外漏出が生じてしまった場合には早期に発見できることも重要です。

[投与後の看護のポイント]
 化学療法においては、患者さんが主体的に治療に参加することで、副作用症状の出現が軽くなるといわれています。患者さんが化学療法についてきちんと理解し、セルフケアを積極的に実施できるよう、患者教育を実施する必要があります。その際には、抗がん薬によって起こりやすい副作用症状と対応法を患者さんが実践できるように指導します。高齢患者さんの場合は、家族を含めて行います。

チームにおける看護師の役割

 化学療法を受けるがん患者さんには、抗がん薬による副作用によって、苦痛が生じたり、それまでの生活ができなくなるなど、QOLの低下がみられます。さらに、がんの診断時、今後の治療決定の際、治療後の再発の不安、治療経過の中で抗がん薬の効果がなくなったときなど、常にストレスを感じています。

 看護師は、その時々の心理面を考慮しながら、患者さんが意思決定できるようにかかわっていく必要があります。

 看護師は、患者さんの最も近くにいる存在であるため、患者さんが苦痛・不安を感じている原因を明確にし、部署内の看護チームで話し合うとともに、必要に応じて他部門との連携を取る中心的な役割を果たすことが求められます。患者さんが、支持療法薬の使用で困っているときには薬剤師に介入を依頼したり、副作用症状の皮膚障害で困っているときには皮膚科受診を検討したり、病気や治療による不安が強いときには精神科にコンサルテーションをかけるなどします。その場合、まずは部署内の看護師で共通認識を構築し、問題の明確化を図ります。そのうえで、その問題に対して、適切な部署に連携を依頼してケアを実施します。

 また、患者さんに起こる問題は1つとは限りません。外来治療を受ける患者さんは、外来診療医師、外来看護師、薬剤師など複数の医療者とかかわります。ですから、患者さんに即した看護を実践していくためには、各職種から集約された患者さんの情報を看護師が多角的にとらえ、最適なケアの提供に向け、多職種と連携していくことが重要となります。


RECISTガイドラインによる治療の評価

 治療の評価は、患者さんの症状やQOL、さらにCT検査などによるRECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)ガイドラインで評価します。総合結果は、標的病変では、完全奏功(complete response:CR)、部分奏功(partial response:PR)、安定(stable disease:SD)、進行(progressive disease:PD)の4段階に分類されます。

RECIST評価
*標的病変は「がんが浸潤したすべての臓器の状態を示す代表的なものとして選択した病変」。非標的病変は「標的病変以外の、リンパ節病変を含むほかのすべての病変」
固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECISTガイドライン) 日本語訳JCOG版 改訂版 version1.1.より作成


参考文献
● 国立がん研究センター内科レジデント:がん診療レジデントマニュアル 第7版.医学書院,2016.
● 石川和宏:分子標的薬の特徴とメカニズム.基本まるわかり! 分子標的薬 第2版.南山堂,2013,p.20-61.
● 小澤桂子,他監:理解が実践につながるステップアップがん化学療法看護 2版.学研メディカル秀潤社,2016.
● 丸口ミサヱ,他編:がん化学療法看護スキルアップテキスト.南江堂,2009.
● 佐々木常雄,他編:新がん化学療法ベスト・プラクティス.照林社,2012.
● 厚生労働省:個別事項(その1:がん対策等について)(2017年5月29日閲覧) http://www.mhlw.go.jp/fi le/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000101762.pdf

(ナース専科マガジン2017年8月号より転載)

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