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【連載】治療の継続を安全に支える! 外来がん化学療法の看護

がん化学療法を行っている患者さんへの支援

執筆 森山千代子

国立がん研究センター東病院 看護部 がん化学療法看護認定看護師

外来がん化学療法の場合、患者さんの療養の主体は生活の場です。ですから、副作用へのケアや生活調整などは、患者さん自らが行わなければなりません。入院患者さんとは異なる環境下で治療を継続する患者さんをどのように支えればよいのか、看護師の役割を考えていきましょう。


副作用への対応とサポート

 外来でがん化学療法(以下、化学療法)を受ける患者さんにとって、治療と生活を両立させることが大きな課題となります。そのため、看護師をはじめとする医療者は、患者さんがなるべくこれまでと変わりのない生活を送れるような治療とサポートを心がける必要があります。生活を整えることが、患者さんの治療に対するモチベーションを向上させます。

 そこで重要となるのは、身体面および精神面での苦痛の緩和です。特に抗がん薬による副作用は、患者さんにとってつらいものなので、優先的に対応することが求められます。

副作用のアセスメントと注意点

 投与中に発生する副作用の主なものとしては、「インフュージョンリアクション」「過敏症によるアレルギー症状」「急性の悪心・嘔吐」が挙げられます。

投与中の副作用に対するアセスメントと看護

[インフュージョンリアクション・過敏症への対応(表4-1)]
 インフュージョンリアクションとは、分子標的薬で起こりやすく、投与中または投与後24時間以内に、注入反応・点滴反応として多く現れるアレルギー症状などの有害反応の総称です。一方、過敏症は、異物に対する生体防御システムが過剰あるいは不適当に反応して発現する症状の総称です。アナフィラキシーなど重症化する場合もあり、緊急時の対応を確認して投与を行います。インフュージョンリアクションのリスクを減らすためには、前投薬、投与速度などレジメンに従い、投与を確実に行います。

 インフュージョンリアクションや過敏症(アレルギー症状)は前駆症状を伴うことも多いので、看護師は患者さんの様子をしっかり観察します。また、患者さんに対する指導も重要です。患者さんは、投与中に「何かおかしい」と感じても、自己判断で症状を我慢してしまい、重症化につながることがあります。症状出現時には速やかに報告してもらえるよう、患者教育はしっかり行います。

 症状出現時には、直ちに薬物の投与を中止し、医師に報告し、対応を行います。

[悪心・嘔吐への対応(表4-1)]
 悪心・嘔吐は、「急性」「遅延性」「予期性」と、発生時期によって3つに分類されます(表4-2)。つらい悪心・嘔吐を経験すると、その記憶が残ってしまい、次回の投与前に症状が出現する予期性悪心につながります。そのため、化学療法中の悪心・嘔吐のコントロールは、治療継続のために重要です。初回治療から、アセスメントと予防的介入をしっかり行うようにします。制吐薬を適切に使用するとともに、悪心・嘔吐に関する看護ケアも丁寧に行いましょう。その結果、患者さん自身が「コントロールできる」という思いをもてるようにしていきます。

 悪心・嘔吐がコントロール不良の場合には、治療とは別の原因がある可能性も含め、再度アセスメントしましょう。
 患者さんによっては「副作用だから仕方ない」と我慢する人も多くいます。個人差があることを念頭に置いて、患者さんが症状を訴えやすいよう働きかけることが大切です。

悪心・嘔吐の分類

副作用発生時の対応

 外来で化学療法を受ける場合、在宅で療養する患者さんは副作用の対応は自分で行うことになります。副作用の中には重症化すると生命を脅かすものもあり、その場合は医師や看護師への速やかな連絡が必要です。また、生命にかかわらなくても、日常生活に大きな支障が出る症状もあります。

[生命を脅かすおそれのある症状]
 生命を脅かすおそれのある主な症状は表4-3の通りです。

副作用発生時の対応

●骨髄抑制
 骨髄抑制は、特に好中球減少性発熱に注意する必要があります。白血球の1つである好中球は、7~14日で減少し、易感染状態になります。37.5℃以上の発熱が認められた場合には、処方された抗生物質の内服を開始します。抗生物質は、途中で内服を中止すると耐性菌ができてしまうため、患者さんには解熱後も飲み切るように伝えます。抗生物質の内服後も解熱しない場合には、抗生物質が効かない感染症の可能性があります。また、倦怠感が強く出ている場合には、薬剤投与が必要なケースもあります。いずれの場合も、昼夜を問わず速やかに病院に連絡するように説明します。

●下痢
 下痢には、抗がん薬によって副交感神経が刺激されて起こる「早期性の下痢(投与直後~ 24時間以内)」と、抗がん薬で粘膜の障害が起きたり、白血球が減少して腸管感染が起きたりすることが原因となる「遅発性の下痢(24時間以降~数週間)」があります。いずれの場合も、基本的に止痢薬を使ってコントロールします。それでも下痢が続く場合には、脱水症状となり、全身状態を悪化させることがあるため、病院に連絡するように説明します。

 悪心・嘔吐、口内炎などでも水分摂取が困難になった場合には、速やかに病院に連絡してもらう必要があります。

[日常生活に支障を及ぼす症状]
 患者さんの日常生活に支障を及ぼし、治療継続が困難になる症状としては、手足症候群、皮膚障害、末梢神経障害、脱毛などがあります(表4-4)。特に治療の目的が症状緩和の場合、QOLが大きく低下するのであれば、治療継続は患者さんにとってデメリットとも考えられます。患者さんの生活に寄り添い、副作用の軽減や付き合い方の工夫について、ともに考え、サポートする必要があります。

日常生活に支障を及ぼす主な副作用
厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群.2010.および 国立がん研究センター:副作用・合併症に関すること.がん情報サービス(2017年5月30日閲覧)http://ganjoho.jp/public/diatre/attention/chemotherapy/sideeffect/index.htmlより作成

セルフケアのための支援

患者教育と緊急対応の整備

 外来化学療法を受ける患者さんは、副作用症状などの多くを自宅で体験し、自ら対応していかなければなりません。しかし、治療や副作用について、初回治療の前に行われる説明で、患者さんがすべてを理解することは困難です。そのため、自宅で振り返りができるようにパンフレットなどを活用します。患者教室がある場合には、参加を促すことも有効です(表4-5)。

セルフケア支援のために必要な教材やシステム

 患者さんのセルフケア支援は、その人の生活に沿ったものでなければ、適切な対処は実践できません。患者さんの生活を丁寧に聞き取り、実践可能な方法を検討し、有効な支援につなげる必要があります。制吐薬や止痢薬など支持療法薬が処方されていても、内服方法がわからず、つらい時間を過ごしたり、緊急入院になる人もいるので、具体的な内服方法やタイミングについての説明もしっかり行いましょう。

 セルフケアを支援するときは、自宅での副作用の程度や対処方法、その結果がどうだったのかを、患者さんと一緒に振り返るようにしましょう。その際、副作用の観察日誌などがあると振り返りの一助となります。化学療法は長期間にわたることが多く、患者さんが自ら「副作用に対処できた」と自己効力感がもてるようになることが、治療継続の支えとなります。

 また、セルフケアについて知識の習得状況や、副作用の発生時の対応について、患者さんに不安がみられる場合には、テレフォンフォローアップなどのサポートがあると安心につながります。

 緊急の対応が必要な症状や緊急時の連絡先についての説明は必須で、症状出現時に患者さん・家族が適切に対応できるように考えます。当院では外来化学療法を受ける患者さんを対象としたホットラインも紹介しています。

 外来化学療法の患者さんは繰り返し治療を受けなければなりませんが、1回の治療時間は数時間です。看護師は、短い治療時間の中で、小さな変化を見逃さず、会話を通して自宅での様子を引き出すことのできるコミュニケーションスキルを備えることが大切です。そして、患者さんの心身やセルフケアの状態などに変化がないか確認していくようにしましょう。

患者さんの不安の軽減

傾聴とアセスメント

 外来化学療法の長い治療期間中には、強い副作用が出現することも多くあります。治療を継続していたにもかかわらず効果がなく、レジメンの変更やベストサポーティブケア(best supportive care:BSC)の方針となる場合もあります。また、繰り返される抗がん薬治療は高額なものも多く、経済的に不安定な状況に陥ることがあります。さらに、超高齢社会のわが国では、老老介護、独居などから患者さんを支える家族が不在のこともあります。これらはすべて患者さんの心身の疲労につながります。

 看護師は、患者さんの苦痛や不安を最初に把握できる立場にあります。患者さんの苦痛や不安をキャッチしたら、それが大きくならないうちに、相談を行ったり、窓口を紹介して対応する必要があります。当院では、看護師以外にも薬剤師が通院治療センターに常駐しており、治療スケジュールや副作用の説明など行っています。


ベストサポーティブケアも選択肢の1つ

 抗がん薬などによる積極的な治療が困難になったときに、身体的苦痛の軽減を図り、QOLの維持・改善を目的に行うケアを「ベストサポーティブケア(BSC)」といいます。効果的な治療が残されていない場合や、患者さん自らが希望した場合などに選択されます。基本的に治療は行いませんが、医療者は患者さんをサポートするケアを継続します。


他職種との連携

 このように、外来化学療法中の患者さんは、身体的、精神的、経済的など多くの苦痛や不安を抱えながら治療を受けています。そんな患者さんを支えるためにはチームでのサポートが不可欠です。

 さまざまな不安を抱え精神的に不安定な患者さんには、精神腫瘍科医師や臨床心理士などと協働しながらサポートしていきます。自宅で過ごす場合には、経口摂取を基本とするので、栄養士と必要エネルギーが確保できるよう検討していきます。味覚障害や悪心・嘔吐などの症状に対し食事の工夫を行うこともあります。また、経済的な問題、介護の問題、社会的資源の導入が必要な場合には早めに医療ソーシャルワーカー(MSW)に介入を依頼します。仕事をしながら治療を継続している人の場合、その両立が困難なケースでは、MSWを窓口として社会労務士への相談に結びつけることもあります。さらに、口腔内のトラブルに対しては歯科医師、ストーマを造設している場合には皮膚・排泄ケア認定看護師など、さまざまな職種との連携が必要となります。

 セルフケア支援と同様に、治療を継続していく中で、看護師には、患者さんの状況に変化がないか、コミュニケーションスキルを駆使して、問題を早期発見し、他職種との連携の要となることが求められています。


[参考文献]
● 厚生労働省:手足症候群.重篤副作用疾患別対応マニュアル.2010.
● 国立がん研究センター:副作用・合併症に関すること.がん情報サービス(2017年5月30日閲覧)http://ganjoho.jp/public/diatre/attention/chemotherapy/sideeff ect/index.html
● 福田仁代:悪心・嘔吐,カラービジュアルでみてわかる!はじめてのがん化学療法看護.辻 晃仁 編.メディカ出版,2016,p.63-67.
● 木谷智江:アレルギー・過敏症・インフュージョンリアクション,カラービジュアルでみてわかる!はじめてのがん化学療法看護.辻 晃仁 編.メディカ出版,2016,p.84-89.
● 田中登美:外来化学療法のナーシング.外来化学療法の看護(セルフケア支援).安全・確実・安楽ながん化学療法ナーシングマニュアル.飯野京子,他編.医学書院,2009,p.186-189.

(ナース専科マガジン2017年8月号より転載)

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