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【連載】睡眠時無呼吸症候群の病態とケア

3.睡眠時無呼吸症の検査

執筆 南雲 秀子

東京医療学院大学保健医療学部看護学科助教 看護師/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

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睡眠時無呼吸症が疑われたとき、さまざまな検査を行います。それぞれの検査では、何がわかり、それがどう睡眠時無呼吸症にかかわるのかを解説します。


事例

 帰宅途中に追突事故を起こしたAさんは、妻の勧めもあってS病院の内科を受診していくつかの検査を受けたところ、日ごろから勤務先の産業医から指摘されている高血圧と高血糖に加えて睡眠時無呼吸症の疑いがあると診断されました。仕事が忙しくてこれ以上の通院や検査に消極的だったAさんですが、医師から睡眠時無呼吸症を放置することによって高血圧や糖尿病が悪化するだけでなく、脳血管疾患の危険性が高まると説明され、心配になってきたようです。
 再度入院しての検査には納得いかない様子ですが、医師の説明は続きます。

医師のイラスト
睡眠時無呼吸症の検査と治療は、保険診療で行う場合には下記のように進めることになっています。それぞれの検査でわかる内容を簡単に説明しましょう。

実施する検査とその目的

質問票によるスクリーニング

 睡眠時無呼吸症が疑われる人にはスクリーニング検査として質問票が使用されることがあります。最も一般的なのはエプワース睡眠尺度(ESS)といわれるもので、8つの質問に答えることで自覚している眠気を測定します。職業ドライバー等の中から症状の強い人を見つけるためによく用いられます。

 しかし、ESSの点数が低いから睡眠障害でないということではありません1)、2)。眠気の自覚症状が全くなかったり、症状を別な病気や自分の体の状態と結び付けている人(最近倦怠感が強いのは貧血のせいだ、など)も多くいます。質問票の結果はあくまで自覚症状が強い人だけを見つける検査と考えてください。

エプワース睡眠尺度_ESS


調査票を商業目的、または政府機関で使用される場合は、ライセンス登録の手続きが必要ですので、下記へお問合せ下さい。
問い合せ先: iHope International株式会社


簡易検査

 簡易検査は機械を自宅に持ち帰って測定する手軽な検査で、A:血液中の酸素飽和度だけを測定する検査と、B:口や鼻の気流の流れ、胸が膨らむ呼吸運動、血液中の酸素飽和度の3点を測定する検査の2種類があります。Aは職場の健康診断等でスクリーニングに使われることが多く、Bは主に病院や検診センターで簡易検査として行われます。
 
 検査結果が「AHI」でなく「RDI」(Respiratory disturbance Index)で示される場合もあります。一般的には、ほぼ同じ意味と考えてよいです。

・血液中の酸素飽和度だけを測定する検査
 Aの検査では夜間低酸素状態になっているかどうかを測定します。睡眠中にどのような呼吸の障害があるのかははっきりしませんが、血液中の酸素飽和度が低下しているかどうかを確認できるということは心血管系や脳血管疾患の合併症が生じる危険が高いことがわかります。

・口や鼻の気流の流れ、胸が膨らむ呼吸運動、血液中の酸素飽和度の3点を測定する検査
 Bの検査では実際に呼吸の状態について調べます。鼻と口の気流の流れと胸の呼吸運動を同時に測定することによって、胸は動いているのに鼻と口での呼吸が検出されない場合に閉塞性無呼吸、胸が動かず呼吸が止まっている場合に中枢性無呼吸という結果が出ます。胸のベルトや口元につけたセンサーはやや不安定ですが、最低4時間以上の睡眠を測定できれば検査結果が得られます。

 Bの検査結果として示されるのがAHI(無呼吸低呼吸指数:Apnea Hypopnea Index)で無呼吸または低呼吸の回数を表す指標です。この値が5回/時以上であれば睡眠時無呼吸症候群と診断されます。簡易検査の結果なので一般的にはこの後PSG(後述)という精密検査が必要です。ただし、AHI=40回/時以上であれば重症の睡眠時無呼吸症候群であるため、精密検査(PSG)の結果を待たずにCPAP治療が保険診療の適応になります。

閉塞性

精密検査

 PSG(Polysomnography)とは、睡眠中に多チャンネルで各種生体データを測定してグラフ化したものです。脳波、心電図、筋電図、動脈血酸素飽和度、胸郭運動、眼球の運動、鼻と口の気流など(これらが多チャンネル)を睡眠中同時に測定し、睡眠時無呼吸の発生状況と原因を探る検査です。
 
 睡眠障害であっても閉塞性睡眠時無呼吸症や中枢性睡眠時無呼吸症ではない疾患、例えば「むずむず脚症候群」などを鑑別することができます。また、脳波で睡眠深度と無呼吸の出現の関係を調べることで、治療法を選択したり治療中の問題についてのさまざまな対応をするためのデータを得ることができます。

 PSGの結果、AHIが20回/時以上の場合には、口腔内装具およびCPAP治療のいずれも保険診療の適用となります。閉塞性睡眠時無呼吸症の場合には、軽症であれば口腔内装具で治療が可能な場合もありますが、一般的には軽症でも重症でもCPAP療法が勧められます。中枢性睡眠時無呼吸症の場合には、口腔内装具は効果が薄いため軽症であってもまずCPAP治療が勧められます。CPAPでは治療効果が上がらない場合にはASV(CPAPと同じマスク換気の人工呼吸器ですが、自発呼吸が弱まったら強制的に吸気させることができる器械)の治療に変更になることもあります。

PSGのグラフ
『いつでも元気』2003年5月号 特集2「睡眠時無呼吸症候群 診断と治療」より転載

鼻腔の検査

 CPAPやASVの治療を受ける場合には、鼻または鼻と口にマスクをあてて陽圧の空気を吸い込むことになります。鼻腔から後鼻腔に障害が無くスムーズに吸気呼気が通ることが理想ですが、中には鼻腔内の構造によって睡眠中長時間の鼻呼吸ができない場合もあります。そのため、可能であれば鼻腔の通気試験をあらかじめ受けることが勧められています。
 鼻腔通気試験は主に耳鼻科で受けられる検査なので、耳鼻科の診療が無い病院でCPAPの治療を新しく始める場合には慢性的な鼻閉があるかどうかは問診で確認します。必要に応じて耳鼻科を受診して検査を受けてもらうこともあります。

【事例つづき】
そして、
 Aさん「わかりました、先生。
僕はESSの質問票ではあんまり自分で気になる症状が無くて5点だけだったけど、妻にはいびきがすごいって言われて簡易検査を受けたら、AHIが23点で睡眠時無呼吸症候群は確定的ってことですね。
いくつか治療法があるけど、一番効くCPAPの治療を健康保険で使うためには入院してPSG検査を受けないとダメで、それでAHIが20以上あったら保険が効くってことですよね」

「でも先生、CPAPのことばっかり言われましたけど、インターネットで調べたら手術で治した人もいるし、そもそも痩せれば治るって言ってる人もいますよ。一番早く治せる治療法を教えてください」

医師「それでは、次に治療法を説明しましょう」


【参考文献】
・高橋和代、勝木達夫, 坂下真紀子:簡易無呼吸検査と睡眠ポリグラム検査の比較検討.心臓リハビリテーション 2016;21(1/3):p.37-40.

・和泉匡洋, 二木 克之, 平源善宗,ほか:当院人間ドックにおける睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病との関連性の検討. 近畿中央病院医学雑誌 2013;33:p.9-18.

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