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【連載】酸素の上げどき?下げどき?

HOT患者さんの酸素のウィーニング[成功したCASE]

執筆 伊藤幾代

国立病院機構 西埼玉中央病院 慢性呼吸器疾患看護認定看護師

O2updown

酸素の上げ下げを考えるとき、患者さんが低酸素状態になっているかどうかを見極めなければなりません。ここでは、と成功事例から見極め方を解説します。


事例紹介

70代女性高血圧僧房弁閉鎖不全慢性心不全

●入院に至る経過
5年前より在宅酸素療法(HOT)を導入し、自宅では酸素2.5ℓ/分を吸入している。1週間前より咳嗽・息切れが出現、また3日前より発熱が持続し症状が改善しないため外来を受診。胸部画像所見で浸潤影を認め肺炎の治療目的で入院となった。

●入院時の状態
[バイタルサイン]体温37.5℃、呼吸数28回/分、酸素3ℓ鼻カニューラでSpO2 90%


患者さんの状態と酸素療法

 抗生剤投与や酸素療法(入院時5ℓ/分マスク)により、症状が改善され酸素化も良好となりました。主治医からは「SpO2が96%以上になったら酸素を減量」という指示が出ていました。入院4日目、ベッド上酸素3L/分鼻カニューラでSpO2 98%、患者さんに呼吸苦はみられませんでした。同日の夕方16時、受け持ちの新人看護師からリーダーナースへ次のような申し送りがありました。「10時の検温時にSpO2が98%だったので酸素を3Lから2Lにしました。午後の再検時でもSpO2は低下していなかったので14時に2Lから1Lにしました。1時間後様子を見に行くと、患者さんが酸素カニューラを外していたので慌ててSpO2を測ったのですが、室内気下でも96%キープできていたのでそのまま酸素をoffしました」
 
 この場合、HOT導入患者さんの酸素をoffにしていいのでしょうか。

酸素療法の上げ下げのポイント

酸素投与の目的を考え上げ下げを判断

 安静時の患者さんのSpO2値だけで酸素投与量を判断してしまったケースです。入院中は安静にしていたためSpO2が低下しなかった、あるいは、もともとトイレ歩行程度ならSpO2は低下しない患者さんだったのかもしれません。

 しかし、患者さんは肺炎によって起きた低酸素血症への治療としてのみ酸素を吸入していたわけではありません。慢性心不全患者さんへのHOT導入の効果には、肺高血圧症の改善や右心不全予防、あるいは多血症の改善といった生理学的な効果のほかに、入院期間短縮、ADLの改善、精神・心理的な改善、息切れの改善、生存期間の延長があります。その患者さんにとっての酸素療法の目的は何かを理解して酸素投与量を調節する必要があります。

労作負荷をかけた状態で上げ下げを判断

 もともとHOTを導入している患者さんであるため、患者さんの状態が安定したときに酸素がoffになってしまわないよう、酸素投与量をHOT量までの下げ止まりの指示に医師に変更してもらいます。

 酸素投与量の減量が可能かどうかは、自宅にいるときと同じ労作負荷(食事、整容、更衣、トイレ動作、入浴、歩行)でSpO2を測定し、動作中のSpO2の変動や症状を観察して評価していきます。

 また、6分間歩行試験や労作負荷の結果SpO2値が下がらない場合、HOT量の変更を提案してもいいでしょう。

(ナース専科マガジン2015年3月号より転載)