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再発・難治性急性リンパ性白血病における新たな治療選択肢とは

編集 ナースプレス編集部

Webサイト「ナースプレス」編集部

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Gakkai report

2018年4月9日、大手サンケイプラザにて「本邦初かつ唯一のCD22を標的とする抗体-薬物複合体「ベスポンサ®」が承認 再発・難治性急性リンパ性白血病における新たな治療選択肢とは」をテーマにプレスセミナーが行われました。講演は日本造血細胞移植学会理事長 慶応義塾大学医学部 血液内科教授 岡本真一郎先生と東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科客員教授 薄井紀子先生です。その様子をレポートします。


最初に、岡本先生が「成人急性リンパ性白血病の治療-現状と今後-」をテーマに講演されました。

急性リンパ性白血病とはどのような疾患か

 血液中には、赤血球・血小板・好中球などさまざまな種類の血球が存在していますが、これらは骨髄内にある造血幹細胞という細胞が何度も分化・増殖を繰り返して作られます。このサイクルのうち、白血球を作るためのサイクルの中で、遺伝子異常が造血幹細胞からリンパ系幹細胞に分化した部分で起きた状態を急性リンパ性白血病(ALL)と呼びます。未熟で悪性化した白血病細胞は骨髄内から排出されず、どんどん溜め込まれます。そして、新たなものが作り出せなくなると骨髄内から漏れ出て、血液内の白血球の割合は増えます。このため、ALLの患者さんの血液を分離すると、白い部分(白血球)が多くなります。

ALLの第一選択は抗がん剤

 ALLでは、まず初めに抗がん剤を使って治療を行います。白血病治療に用いられる抗がん剤はには大きく分けて2つあり、1つはDNA/RNAを損傷、もしくはその合成を阻害するもので、もう1つは微小管という器官の機能を抑制するものです。抗がん剤は、正常な細胞であれば修復できるが白血病細胞では修復できないような遺伝子の損傷を加えます。そして、その損傷があると、がん細胞は分裂する際に崩壊してしまいます。

抗がん剤治療は時期によって寛解導入療法と寛解後療法に分かれます。寛解導入療法では抗がん剤を使用して白血病細胞を減らし、寛解(がん細胞の存在を確認できなくなった状態)を目指します。寛解に至ったあとも白血病細胞は体内に残っているため、薬剤を変更してさらに白血病細胞を減少させます。これを寛解後療法といいます。この治療法によって2~3割の患者さんは治癒しますが、その他の患者さんはある時期を過ぎると抗がん剤が効かなくなってしまいます。この状態を再発といい、再発した患者さんは化学療法での治癒は望めなくなります。

同種造血幹細胞移植という強力な治療法

化学療法で十分な効果が得られなかった場合には、同種造血幹細胞移植という治療法を検討します。この治療法は非常に強力であり、体内の白血病細胞が根絶するかわりに、正常な造血能・免疫系・組織や臓器が破壊または障害されてしまいます。時期や年齢にもよりますが、同種造血幹細胞移植は、再発後であっても1~3割の患者さんを救うことができます。しかし強力な治療であるため、治療そのものにより身体に障害が出て亡くなってしまうということもあります。

多様化するALL治療

 これまでALL治療では顕微鏡で確認できる限界を超えたMRD(微小残存病変)は把握できないため、どのような治療を行うかということはある程度予測のなかで行わなくてはなりませんでした。しかし、PCR・FCM法でMRDがみえる化されるようになったことで、MRDに合わせて治療法を選択することができるようになり、治療成績も上がりました。

 以前は、ALLの染色体異常であるフィラデルフィア染色体が陽性であることは、予後が悪いということを示していました。しかし、フィラデルフィア染色体陽性ALLで出るBCR-ABLという蛋白に対して特異的に効果のあるグリベックという薬剤が開発され、分子標的療法を化学療法と併用することで治療成績は格段に飛躍しました。

 また、ベスポンサという薬剤は抗体に薬剤を運ばせ、直接ターゲットの細胞まで届けて死滅させます。強い薬剤ですが、このような仕組みにすることで体内で効果を発揮することができます。

 その他にも、T細胞ががん細胞を攻撃しやすくするための薬剤、攻撃までの時間を短縮する薬剤など、免疫反応を介したアプローチをする薬剤も開発されています。

 このように選択肢はさまざまなものがありますが、患者さんに合った治療をどう選択するかがが大切となります。

 続いて、薄井先生が「急性リンパ性白血病治療における新薬の使い方」をテーマに講演されました。

ALL治療アルゴリズム

 ALLには、日本血液学会による治療アルゴリズムがあります1)。アルゴリズムでは、まずフィラデルフィア染色体があるかどうかによって治療法が分かれ、陽性であればイマチニブを併用した寛解導入療法を選択します。陰性の場合、若年者であれば小児プロトコールに沿った治療となり、非若年者であれば寛解導入療法を選択し、寛解かそうでないかによってさらに治療法が分かれます。治療困難な再発・難治性成人ALLでは救援療法が行われます。

治療困難な再発・難治性成人ALL

 再発・難治性成人ALLの標準的治療法はいまだ確立していません。いくつかの抗がん剤を併用する救援療法(サルベージ療法)が取られますが、再発ALLの予後は悪く、長期生存が望めるのは造血細胞移植だけでした。これらの改善のために必要なことは、完全に白血病細胞をなくすためにMRDの除去とALL細胞の分子を標的とした薬剤を使用することでした。

※再発・難治性成人ALL:寛解導入療法の終了までに、完全寛解に至らなかった症例を難治性ALL(治療抵抗性ALL)といい、完全寛解到達後、血液もしくは骨髄(>5%)に芽球の再発や骨髄病変を認めた症例を再発ALLという

イノツズマブ オゾガマイシン使用による治療成績の変化

 イノツズマブ オゾガマイシン(商品名:ベスポンサ 以下ベスポンサ®)とはALLの新規治療薬です。抗体療法に使用されますが、CD22抗原と結合することで細胞内へ直接取り込まれ、細胞の増殖を阻害します。承認に向け、第Ⅰ・Ⅱ相試験が海外で行われ、最終の第Ⅲ相試験には日本人も参加し、有効性が証明される結果となりました。CD22陽性の全ての再発・難治性成人ALLに適応があり、再寛解導入療法の5年生存率は10%以下でしたが、ベスポンサ®使用で1サイクルの使用で9割以上が完全寛解となります。また、MⅮRの陰性化率も既存の化学療法と比べて高いことがわかりました。もちろん副作用はありますが、移植と同様の副作用であり、事前にわかっているのでマネジメントも可能です。

 国内で承認されたばかりの薬剤ですが、適正に使用することで再発・難治性成人ALLだけでなく、ALL全体の治療成績の向上が期待されています。


【引用・参考文献】
1)日本血液学会,編:第Ⅰ章 白血病.造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版.金原出版,2013:p.55.

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