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【連載】注射・採血・輸液の手技徹底攻略!

点滴より末梢側での採血はOK? NG?

執筆 小池祥太郎

青森県立保健大学 健康科学部 看護学科 基礎看護学領域

Saiketu chusha tenteki

Q.点滴より末梢側で採血をすれば、検査数値に問題はないと思うのですが実際はどうなのでしょうか。

A.点滴より末梢側から採血をすれば、血液データは点滴の影響を受けない


点滴をしていない側の上肢から採血できないケースもある

点滴をしている上肢から採血すると、点滴成分が採血管に入ってしまうことで、患者さんの生体機能を反映した正しい検査結果が出ないのでは? という疑問は多くの看護師が長年感じていたことだと思います。点滴をしていない側の上肢で採血すれば、それで済む話ではと思われがちですが、そうもいかない状況が臨床現場にはあります。思いつく限り例を挙げてみます。

  1. 点滴をしていない側の上肢にシャントがある(シャント側からの採血は禁忌)。
  2. 点滴をしていない側の上肢はリンパ節郭清を伴う乳房切除術後である(乳房切除術側からの採血は禁忌)。
  3. 点滴をしていない側の上肢には採血に相応しい血管がない。
  4. 両腕で点滴している。

 こんなところでしょうか。こういった場合、多くの看護師は下肢から採血することが多いようです。しかし、下肢からの採血は血栓形成のリスクがあるといわれており、決して推奨される部位ではありません。さらに、下肢から採血するときの患者さんの不安や疼痛の訴えが、上肢からの採血と比較にならないことは、多くの看護師が知っていると思います。

点滴より末梢側での採血データを検証

 そこで、点滴している側から採血しても患者さんの生体機能を反映した正確なデータが得られれば、安全・安楽とは言えない下肢から採血する必要がなくなるのではと考えました。点滴は静脈から行うため、点滴成分は静脈の流れに乗り中枢側へ流れていきます。よって、点滴をしている末梢側から採血すれば点滴成分が採血管に入ってこないのではという仮説を立ててみました。そして、次のような実験を行いました。

実験①1、2)
 ウサギの耳介静脈に点滴をして、点滴をしている中枢側と末梢側、そして点滴をしていない反対側の耳介静脈(以下、反対側)から採血をして血球検査・生化学検査の39項目を分析しました(写真1)。ウサギ7匹に実験を行い、中枢側と反対側、末梢側と反対側のデータを比較したところ、ものの見事に点滴の中枢側は点滴の影響を受ける結果となりました。しかし、末梢側は近すぎると影響を受ける検査項目もありましたが、5cm離れた末梢側では点滴の影響がまったくありませんでした。この研究から点滴をしている末梢側から採血しても、点滴が影響しない血液データが採血できる可能性を見出すことができました。

末梢側からの採血

実験①の結果から今度はヒトを対象とした研究に進みました。

実験②3)
 男性5名に対して、前腕からソリタT3Gを輸液し、点滴をしている15cm末梢側と点滴をしていない反対側から同時に採血した血液データを比較してみました。実験①で5cm末梢側から採血しましたが、前腕から点滴をすると5cm末梢側の位置が手関節になることが多く、15cm末梢側であれば手背となることから、15cm末梢側としました。その結果、末梢側と反対側で差はなく、点滴をしている末梢側であれば、点滴成分の影響を受けずに採血できることが明らかになりました(表1)。

各採血部位の平均値と標準偏差
(クリックして拡大)

もちろん、多少は違いますが、臨床的に血液データを判断する上では問題にならない差です。

 看護師もよくアセスメントする検査項目として、総蛋白を例にすると、点滴をしている末梢側の平均値は7.2g/dLで、点滴をしていない反対側は7.3 g/dLです。つまり、この程度の差であれば、点滴の影響による差ではないといえるでしょう。ちなみに、ソリタT3Gは7,500mg/dLのグルコースを含む輸液で、人間の血糖値よりはるかに高い濃度ですが、末梢側の血糖値の平均値は96.2 mg/dLで反対側は94.8 mg/dLとほとんど変わりありません。このデータからも点滴の末梢側では、点滴の影響を受けずに採血できることがわかります。ちなみに、写真2のようにして採血しました。

点滴末梢からの採血

以上の実験から、点滴をしている末梢側からも点滴の影響をうけない血液データが採血できることが明らかとなりました。


【引用文献】
1)小池祥太郎、武田利明:輸液中における適切な採血部の選択に関する基礎研究.日本看護技術学会誌 2015;14(3):223-230.
2)小池祥太郎、武田利明(2014):輸液投与下における適切な採血部位の基礎研究.日本看護科学学会学術集会34回 2014:372.
3)Koike Shotaro, Takeda Toshiaki(2017):Experimental research of blood collected from the peripheral side of the fluid infusion site that is not affected by fluid infusion.Journal of Hematology;6(1):1-5.