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【連載】今さら聞けない! 基礎看護技術をおさらい

清拭の目的と看護師が行う意義、手順

執筆 菱谷 怜

医療法人社団 成仁病院

監修 野崎 真奈美

順天堂大学大学院医療看護学研究科 教授

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【目次】

日常業務として行っている清拭。目的や看護師が行う意義、清拭の際の観察のポイントなどをおさらいしておきましょう。


目的と意義

 身体の清潔を保持することは人間の欲求であり、日常生活動作の一つでもあります。しかし、何らかの要因でセルフケアが困難となると、清潔の保持が難しくなり、患者さんに社会的・精神的な影響を及ぼすばかりか、皮膚機能の破綻を招き、疾病の回復の妨げになる可能性があります。看護師は清潔援助を行う目的を十分に理解し、かかわる必要があります。

 まず、皮膚には発汗および皮膚血管の拡張・収縮により体温を調整する機能があります。また、外的刺激からの保護機能や、汗腺から出る分泌物は酸性で抗菌作用をもつため感染予防の役割があります。

皮膚を清潔にすることで得られること
1 皮膚のバリア機能を保つことで感染予防に繋がるとともに、体温調節機構も正常に保つことができる
2 温熱刺激や拭くというマッサージ効果により血液循環が促進され、細胞への栄養・酸素供給量の増加や浮腫の軽減が期待できる
3 清拭は、入浴やシャワー浴に比べて呼吸・循環に及ぼす影響が少ないため、入浴による負荷に耐えられない患者さんに対する清潔方法として適用することができる

 施設によっては清潔援助を看護師以外の職員が行う場合もありますが、看護師が直接清拭を実施することでアセスメントに必要な以下の情報を得ることができます。

①皮膚の状態の観察
 発疹や表皮剝離、内出血や熱感の有無、乾燥や湿潤状態などを把握できます。直接触れることでより詳しい状態を知ることができます。乾燥の程度は、使用する洗浄剤の種類を検討する際の情報になります。

②寝衣で隠れている部位の様子の把握
 寝衣に隠れている褥瘡好発部位を観察できるため、早期発見に繋がります。看護師が直接観察するため、何度も患者さんに寝衣を脱いでもらう負担を減らすことができます。

③現在の認知機能や身体機能の把握
 患者さんへの声かけの反応を見ることで、認知機能の把握につながります。また、関節の可動域、ベッド柵に掴まることができるのか、臥位で膝を立てていられるか、動作時の息切れやバイタルサインの変化等、保清中の患者さんの動作から現在の身体機能の変化が把握できます。

 清拭実施前に十分評価はしますが、温度変化や体位変換等により急変のリスクがあります。その際には、迅速な急変対応の必要性があるため、看護師が清潔援助を実施する意義は大きいと言えます。

準備

 清拭の一連の流れの中で、患者さんの安全を守りつつ、安楽が得られるように事前の評価や準備が必要になります。

①清潔援助が実施可能かのアセスメント
 食直後は避け、排泄は済ませているか、バイタルサインなどの全身の変化はないかを確認します。人工呼吸器管理中などの重症患者さんであれば、鎮痛・鎮静管理をしている場合があります。その際は、清拭実施前に適切な鎮痛・鎮静深度であるかの確認も必要です。

 疼痛が強いと血圧上昇や頻脈、頻呼吸などのバイタルサインの変化や不穏をきたす可能性があります。鎮痛剤の調整を事前に行う、または、調整が困難の場合には疼痛を最小限にできる方法をあらかじめ検討しておくことが必要です。鎮静深度はRichmond Agitation-Sedation Scale;RASS等の評価スケールがありますが、穏やかな状態を基準に不穏か鎮静されているか判断します。不穏であれば安静を保てないことにより、清拭中の自己抜去や転落などのリスクが考えられます。一方で過鎮静であれば体位保持などに協力が得られず看護師の介助量が増え、随所で安全性が脅かされるリスクが高まるため、マンパワーの状況も念頭に置いて実施の可否を評価することが必要です。

②実施方法の検討
 方法は清拭で良いか(入浴・シャワー浴はできないか、清拭は負担が大きすぎないか)を検討します。その上で、上記の患者さんのアセスメントを元に、どのような手順で実施するか検討していきます。例えば、安静度の中で体位変換を最小にする方法や、陰部洗浄・洗髪・手足浴を組み合わせる場合の順序等を考えます。

③清拭実施のための環境整備
 寒冷暴露による血圧上昇のリスクがあるため室温の調整(22~24℃)をします。ドアやカーテンを閉めるなど患者さんの羞恥心への配慮、看護師が援助しやすいようにボディメカニクスを考慮したベッドの位置や高さの調整、短時間で実施できるように必要物品の準備、清拭が中断されないように持続点滴の残量や定時処置の有無等の確認をします。

④看護師側の準備
 皮膚・粘膜に触れますので、手指衛生をし、個人防護具を身につけます。

物品準備

  • 温タオル
  • 乾いたタオル
  • 掛け物(バスタオル、タオルケットなど) 
  • 寝衣、肌着
  • 湯を入れる容器
  • 洗浄剤

※皮膚にあたるタオルの表面温度がつねに40~45℃程度を保持できるよう、湯温を看護師の手を入れられる最高温度(50℃程度)に保てるようにします。

手順

 以下は臥床患者さんへの援助の流れですが、さまざまな条件によって順序を変えるなど、臨機応変に対応していきます。

①患者さんがイメージしやすいように手順を説明し、必要な協力があれば依頼します。
※リハビリも兼ねて患者さん自身でできる部位を拭いてもらう場合もあります。

②患者さんの寝衣を健側またはルートのないほうから脱がします。
※タオルケットやバスタオルで清拭部位以外を覆うことで、不必要な露出を避け、羞恥心を最小にするとともに保温に留意します。

③熱布清拭を行う場合は先に目的部位に熱布を貼用し、その間に他の部位を拭きます。
※熱布清拭とは身体の一部に温かいタオルをあてバスタオルで覆い圧し拭きをすることですが、入浴に近い感じが体感できるとともに、腹部・腰背部への貼用は腸蠕動促進効果が得られるとの報告もあります1、2)

④患者さんの体力の消耗を最小限に抑えたい場合、仰臥位でできる部位から実施し、体位変換を最小限にします。
※呼吸困難時の起座呼吸、うっ血性心不全のファウラー位など限られた体位しか取れない場合もあるため、状態に合わせて適切な体位に調整します。
※顔、頸部、上肢、胸部、腹部、下肢のあと側臥位にして背部、臀部と進めていくと体位変換が少なくて済みます。

⑤四肢は末梢から中枢に向かって清拭します。
※四肢の拭く方向として「末梢から中枢」「末梢中枢の往復」「中枢から末梢」で比較した研究では、拭く方向の違いによる皮膚血液量の変化には相違はないが、「末梢から中枢」方向で拭く場合が最も快感と捉えやすいという報告もあります3)

⑥同一部位について、予洗い→洗浄剤を泡立てて擦拭→洗浄剤の拭き取り→乾タオルで水分の拭き取りの順序で拭いていきます。
※洗浄剤には親油基と親水基からなる界面活性剤分子があり、親油基が皮脂や汚れを皮膚から剥がし、ミセルを形成し水中に分離されます。ミセルは泡に集まるため十分に泡立てることでより効果的に洗浄できます。ただし、脱脂作用もあるため、乾燥状態の皮膚では皮脂による保護作用がさらになくなるため掻痒感が増強する可能性があります。皮膚の表面は弱酸性のためアルカリに過敏性を示す場合には中性や弱酸性の洗浄剤の利用を考慮する必要があります。

※弱アルカリ性の固形石鹸を用いた実験では、石鹸を泡立てた場合は4回拭きとることで、清拭前の皮膚pH値に戻るが、泡立てなかった場合には戻らなかったという結果からも、石鹸を泡立てて使用することで拭き取り回数を減らすことができ、皮膚への物理的刺激の軽減につながることが示唆されます4)

⑦仰臥位で拭ける部位が終わったら、患者さんに側臥位を取らせ、背部・臀部を拭いていきます。
※側臥位時は看護師が支えますが、不安定な姿勢に恐怖心を抱く患者さんもいるため、ベッド柵を用意し、掴まってもらうことも考慮します。
※ICU等、ルート類が多数挿入されている患者さんの体位変換の場合は、誰がどのルートの安全を確認するのか、モニター上のバイタルサインの変動を確認するのか、役割を決めてから実施します。多数のルートの安全を確保しきれないときは、体位変換時に援助者を増員できるよう事前に調整もしておきます。

※事前に陰部洗浄・洗髪・手足浴等の組み合わせを検討していた場合にはそれらを実施します。特に尿道カテーテルの留置30日後にはほぼ100%の患者さんに細菌尿が認められ、尿路感染症との関連も深いです。院内感染症の40%は尿路感染とも言われており5)、清潔の保持は必要になります。

清拭のイメージカット

⑧清拭後は拭き残しがないか確認し、保湿のためのスキンケアを行います。
※皮膚に水分が残っていると皮膚表面から気化熱を奪うため注意します。

⑨清拭の実施後の評価をして必要事項をカルテに記録します。患者さんの疲労、症状の悪化やバイタルサインの変化がないか、気分不快はないか、爽快感・満足度は得られているか、実施方法に問題はなかったか観察します。
※清拭の温熱効果による循環血液量の変化や不感蒸泄増加などによる循環動態の変化、動作に伴う酸素消費量の変化による呼吸状態の悪化をきたす可能性があるため注意します。

清拭後チェックリスト

⑩環境を清拭実施前の通りに整えます。


【引用・参考文献】
1)板橋喜久代,他:腹部熱布清拭が腸蠕動に及ぼす影響.北関東医学 1999;49 (5):347-351.
2)菱沼典子,他:熱布による腰背部温罨法が腸音に及ぼす影響.日本看護科学学会誌 1997;17 (1):32-39.
3)松田たみ子:生活への援助技術を科学する -清拭の四肢の拭き方の検討から-.日本看護研究学会雑誌 1998;21(5):33-7.
4)深田美香,他:石鹸清拭の効果的な方法に関する検討 -石鹸の泡立てによる石鹸成分の除去効果について-.日本看護研究学会雑誌 2003;26(5):169-78.
5)日本泌尿器科学会,泌尿器科領域における感染制御ガイドライン作成委員会:泌尿器科領域における感染制御ガイドライン.日本泌尿器科学会誌 2009;100(4):1−27.
6)任 和子:系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学〔3〕 基礎看護技術Ⅱ 第17版.医学書院,2017,p.153—70.
7)岡田淳子:清潔ケアのエビデンスー入浴・清拭ー.実践へのフィードバックで活かす ケア技術のエビデンス 第1版.深井喜代子,監.へるす出版,2006,p.65-76.

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