Q.血液透析時の穿刺・抜針・止血のコツ・注意点を教えてください。
A. 穿刺のコツは皮膚から血管までを最短にして一気に刺すこと、抜針のコツは素早くまっすぐ抜くこと、止血のコツは血流を止めない強さで行うことです。
穿刺のコツは、適度な血管の怒張・皮膚の伸展・最速・コミュニケーション
よく「痛くない穿刺法はありますか?」といった質問を受けます。最近では痛みを和らげるテープやクリームタイプの麻酔剤がありますが、痛覚がある限り痛みをゼロにすることは難しいと思います。そこで、私が実践している痛みの少ない穿刺のコツを紹介したいと思います。
まず1つ目の適度な血管の怒張ですが、これは適切な力で駆血をするということです。駆血とは静脈の血流を遮断し、血管内の圧力を高めることで、血管を怒張させ刺しやすくする目的で行います。
2つ目の適度な皮膚の伸展は、穿刺方向とは逆方向に皮膚を引っ張ることで血管を固定する目的で行います。この2つは目的が別のようにみえますが、次の最速につながってきます。皮膚から血管までの穿刺距離を最短にするため、皮膚の下の血管を怒張させ、皮膚を伸展させることで穿刺部の皮膚が針でヨレず一気に最短で刺すことができ、痛みを最小限に抑えることができます。
最後のコツですが、普段から患者さんと良好なコミュニケーションをとることで、「このスタッフなら我慢できる・許せる」といった信頼関係を築くことも重要です。
今回紹介した方法は根拠などなく、あくまでも私の経験上でのスキルです。普段、穿刺で苦労しているみなさんの参考になれば幸いです。
抜針のコツは、最速・まっすぐ・抜いてから押さえる
抜針する際、穿刺と同様、ゆっくり行うと痛みを感じる時間が長くなってしまうため最速で行います。また抜く際は、刺入の角度・方向を確認し入っている角度・方向通りにまっすぐ抜きます。さらに抜いた後、ガーゼや止血綿で圧迫をしますが、抜く前から強く圧迫してしまうと、針やカニューレで血管の内膜がこすられ痛みが増します。抜くときはガーゼや止血綿を当てる程度にしておき、まっすぐ一気に抜き、完全に抜き終わってから適切な力で圧迫することが抜針のコツです。
止血のコツは、3本指で押さえ、外出血・内出血させず、血流を止めない強さ
まず、抜針後の止血とは、皮膚の穴・血管の穴を同時に圧迫することで「外出血・内出血」をさせないことをいいます。基本的なことですが、針を刺した場合、皮膚と血管の穴は必ずズレています。皮膚の厚さにもよりますが、10mm前後はズレていることをイメージしながら圧迫する必要があります(図1)。
また、シャント穿刺では通常刺さない末梢向きに穿刺する場合があるため、施設外で出血したときなど、血管の穴がどちらの方向にズレているかわからなくなる場合があります。そのため自施設では患者さん指導の際は、皮膚の穴を中心に3本指で広範囲に圧迫するよう指導しています。
圧迫する強さですが、血流を遮断しない強さで押さえます。強く押さえすぎ血流を遮断してしまうとアクセスの閉塞につながる危険性があるため、指先で拍動・スリルを感じながら(または血流音を聞きながら)外出血・内出血をしない強さが止血のコツです(図2)。