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緑内障への「気づき」と安全運転 ドライバーの視野異常による事故を防ぐためにできることとは

編集 ナースプレス編集部

Webサイト「ナースプレス」編集部

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Gakkai report

2018年5月29日、ベルサール八重洲にて「~全国47都道府県「緑内障に関するドライバー1万人調査」から考える~ 緑内障への「気づき」と安全運転 ドライバーの視野異常による事故を防ぐためにできることとは」をテーマにプレスセミナーが行われました。6月7日は「緑内障を考える日」ということで、講師のたじみ岩瀬眼科 岩瀬愛子先生が緑内障の早期発見・早期治療の重要性などについて解説されました。その様子をレポートします。


日本は緑内障大国

 日本における視覚障害の原因疾患のうち、緑内障は21.0%と最も多く1)、原因疾患の「年間年代別新規認定者推定人数」は年齢が上がるにつれて右肩上がり1)となっています。労働安全衛生法第66条に記載されている一般健康診断の項目には記載されてはいませんが、この結果を受けて、任意ではありますが眼底、眼圧、視野の検査を行う施設も増えてきています。

緑内障はなぜ起こる?

 目の中は房水と呼ばれる水で満たされており、約2.5~3.0μl/分が産生され、循環しています。物を見るためには、房水の量をコントロールし、適切な眼圧になるようにしなくてはなりません。緑内障が起こる理由はさまざまですが、最も多い理由は、房水の循環が上手くいかずに眼圧が上昇し、視神経に障害が起きることによる視神経の機能低下です。視神経繊維は束になっているため、障害が起きた場合はその部分の視野情報が抜け落ちてしまいます。

緑内障は視力に関する病気ではない

 緑内障は「視力」ではなく「視野」に影響する疾患です。目の検査というと「視力検査」を思い浮かべる人が多いように、視力を気にする人は多いですが、視野を気にする人はあまり多くありません。緑内障の症状について、広く周知されていないこともあり、視野に異常があることに気づかないまま症状が進行し、気づいたころにはかなり悪化しているという状況になってしまいます。

自分が緑内障に……自力では気づけない!?

 緑内障による視野異常にはいくつものパターンがあり、人によって場所や部位は違います。人は両目を使って物を見るため、片目に異常が起きると反対の目がカバーします。脳梗塞では異常がある部分は全く見えなくなってしまうので、自分でも気づくことができますが、緑内障では異常がある部分がぼやけているように見えるのが特徴です。そのため、実際に指摘されて初めて疾患があることに気づく緑内障患者が多く、日本人で最も多いとされる正常眼圧緑内障ではその割合は95.5%にのぼります。

加齢で本当に目は悪くなるのか

 緑内障は日本で最も多い視覚障害の原因でありながら、これまで大規模な調査はされていませんでした。しかし、平成12~13年にかけて多治見スタディという世界基準の調査が岐阜県多治見市で行われ、健常であれば加齢による視野、視力には極端な低下はないという調査結果が出ています。しかし、一般的には年を取ると目が悪くなると考えられており、事実と違う考えが広まっているのが現状です。高齢者は、緑内障やその他の視疾患などによる、視野や視力の悪化が生じている割合が若年者よりも多いため、加齢により視力・視野に影響が出るという、間違ったイメージが広がってしまったのかもしれません。

多治見スタディで明らかになったこと

 緑内障の種類は、原発開放隅角緑内障、原発閉塞隅角緑内障、続発緑内障、発達緑内障の4つに分類されます。隅角とは房水の排出路のことで、隅角が閉塞して引き起こされる緑内障を原発閉塞隅角緑内障、隅角は閉塞はしていないが目詰まりを起こし流れづらくなったことで起こる緑内障を原発開放隅角緑内障と呼びます。

 多治見スタディでは、緑内障の人がどの程度いるのかを調べ、型別の有病率を算出しました。その結果、緑内障は高齢者になると増える、眼圧が高いと緑内障にかかりやすい、原発開放隅角緑内障は近視の人に多い、原発閉塞隅角緑内障は遠視の人に多いということがわかりました。

緑内障を知ってうまく付き合おう

 眼圧が高いからといって、全ての人が緑内障になるわけではありません。しかし、40歳を過ぎた人は定期的に眼圧や眼底の健診を受けることで、早期発見、早期治療に繋げることができます。自分が緑内障かどうかを知るためには、きちんと総合判断のできる眼科医のもとで、眼底、視野、眼圧検査を受けることが大切です。

 緑内障であることがわかった場合は「眼圧下降」「神経保護と視野維持」「循環改善」という治療方針のもとで治療を開始します。このとき、治療の中心となるのは点眼薬です。内服薬は忘れず服用しているのに、点眼薬はおろそかになってしまっている、という人も少なくないため、本人だけでなく周囲の人のサポートも重要です。

 緑内障は気づいたときから適切な治療を開始することで、進行を遅らせ「普通に見える状態」を維持することができます。日本は、超高齢社会となりこの先も緑内障患者は増え続けていくことが予想されます。高齢者になってもQOLを低下させず尊厳を保ち続けるために、一人ひとりが緑内障についての正しい知識を持てるよう、啓発活動は続けられています。


【参考文献】
1)若生 里奈,他:日本における視覚障害の原因と現状.日本眼科学会雑誌 2014;118 (6): 495-501.

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