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急変時の対応

編集 ナースプレス編集部

Webサイト「ナースプレス」編集部

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Kyuhen matome

【目次】

 急変は、いつ誰に起こるのかわからず、予測できないことも多くあります。まったく同じ急変というものはなく、その時々の状況に応じて臨機応変に対応することが求められます。

 急変時はさまざまなことを同時に行わなくてはなりません。急変した患者さんを見つけたあとの対応には、迅速評価・報告応援要請・情報共有・一次評価を行う(ABCDEを評価する)・医師への報告などがありますが、まず最初に行うのが迅速評価です。

【急変対応の流れ】
・急変時に行う「迅速評価→1次評価(ABCDE)→2次評価(SAMPLE)」とは?

迅速評価

 迅速評価は患者さんと接した瞬間から始まります。キラーシンプトムという、命に直結するような徴候がないかを呼吸・循環・外見と意識の状態から判断しますが、これらの評価は器具を使わず行えます。なるべく早く評価し(数秒以内)、呼びかけがなく十分な呼吸がなければ、応援要請・一次救命処置(BLS(CPRとAED))を開始して、反応がなければ二次救命処置(気管挿管・静脈路確保・薬剤投与などの救命処置)へ移行します。呼吸・循環が維持されている場合は、そのまま一次評価を行います。

【キラーシンプトムや急変時の考え方についてもっと読む!】
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・急変の危険性を示唆する徴候「キラーシンプトム」とは?
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報告・応援要請(医師への報告・情報共有)

 評価の結果、必要があれば医師や他の医療者に応援を要請します。急変が病室であればナースコール、病室外であれば大声で周囲の人に呼びかけます。応援要請は漠然としていると重大さが伝わりづらくなってしまうので、できるだけ簡潔かつ具体的に状況を伝えます。スタッフを集めることが困難な場合は、院内のホットラインを使うこともあります。

 医師への報告は「5W1H」または「SBAR」で行います。5W1HやSBARを使用すると、必要な情報を要領よく、手短に報告することができます。

S:Situation(患者の状態)
B:Background(臨床経過)
A:Assessment (状況評価の結論)
R:Request(提言または具体的な要望・要請)

 応援(または医師)が来るまでの間にも、患者さんの状態を確認しながら治療のための準備をすることで、その後の治療の開始を早めることができます。
看護師ができる治療に向けた準備には

  • ベッドをフラットにして高さを上げる
  • 患者さんの枕を外す
  • 輸液ポンプだけでなくシリンジポンプも用意
  • 気道確保しながら吸引(口腔内・気管内)
  • 静脈ルートがなければ確保 

などがあります。

【急変時の報告についてもっと知りたい人にオススメ】
・急変時の報告を事例でイメトレしてみよう!
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一次評価

 一次評価ではABCDEのチェックを行います。AからEまで順番に評価していきますが、一次評価の途中でも、生命危機の徴候があれば必要に応じて救急処置を開始します。

A(Airway:気道)
気道閉塞があれば気道を確保します。

B(Breathing:呼吸)
呼吸数・呼吸パターン・パルスオキシメーターを装着しSpO2を確認します。 

C(Circulation:循環)
血圧・脈拍を確認します。収縮期血圧は、頸動脈では60mmHg、橈骨神経では80mmHg程度だといわれています。心電図モニターを装着して心拍数とリズムが整または不整であるかを確認します。

D(Disability:中枢神経)
JCS・GCSで意識状態を確認します。初期評価法としてAVPU法※1があります。瞳孔の状態も確認します。

※1 AVPU法とは意識レベルをA(Alert:意識清明)V(Voice:呼びかけに反応)P(Pain:痛みに反応)U(Unresponsive:反応なし)の4種類で簡潔に評価する方法

E(Exposure:脱衣と外表、体温)
皮膚(体表)の確認をします。また、体温を測定して低体温であれば保温に努めます。

二次評価

 患者さんが危機的な状態を脱し、救命のための治療が終了したあとに行う評価を二次評価と呼びます。再度、頭からつま先まで身体診察を行い、病歴とその他情報を聴取します。このときに知っておきたいのがSAMPLEです。これらは、情報収集しておくべき内容の各項目の頭文字を取ったものです。

S――Signs and Symptoms 徴候と症状
A――Allergy アレルギー歴
M――Medication 薬物療法の情報
P――Past medical history 既往歴
L――Last meal 最後の食事
E――Event leading to presentation イベント

記録

 患者さんの急変時にはできるかぎり詳細に経時記録を残します。1人で対応しているときは記録を作成する時間がないため、ひとまずメモをとっておきます。そして、応援の医療者が集まってから役割分担をし、正確な記録を開始します。

記録をするときのポイント

  • 推測は含めず事実のみを記載する
  • チームメンバーは記録係に行ったことを報告する
  • 迅速評価、一次評価、二次評価について記載する
  • 患者さんの状態だけでなく、医療者の行ったことも記録に残す

【急変時の人員確保についてもっと読む!】
・急変対応時の人員確保と役割分担

注意点

 血液や体液に触れると感染のリスクがあるため、急変時であってもスタンダードプリコーションは大切です。マスクやビニールエプロン、手袋などを装着し予防に努めます。

疾患・症状別急変対応

ショックへの対応

ショックとは、なんらかの原因で急性循環不全を起こし、末梢組織に酸素供給ができない状態を指します。
ショック症状であるかを判断するため、ショックの5徴候を確認します。

<ショックの5徴候>
1. 皮膚蒼白
2. 虚脱
3. 冷感
4. 脈拍不触 
5. 血圧低下

 症状のうち「皮膚の蒼白」「末梢のチアノーゼ」は目で見て評価することができ、「冷感」「冷汗」は触って評価することができます。これらの特徴は同時に発現するとは限りません。

【ショックについてもっと詳しく知りたい人にオススメ】
・ショックの定義、症状、診断基準と見極め
・心外閉塞・拘束性ショックの病態とその対応
・血液分布異常性ショックの病態とその対応
・心原性ショックとは?症状・看護のポイント
・出血性ショックとは? 症状と看護のポイント
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胸痛への対応

 胸痛は突発的で致死的な疾患の症状であることが多いため、的確で迅速な判断が必要です。

 随伴症状も呼吸器系・循環器系・消化器系とさまざまであるため、問診での情報収集が重要です。以下のようなことを確認しましょう。

  • 胸痛の起こり方(誘因、性状、程度、持続時間)
  • 関連痛や随伴症状
  • 既往歴(心疾患、高血圧、高脂血症、糖尿病など)
  • 喫煙歴や飲酒歴

 患者さんが胸痛を訴えているときは、不安の緩和のために、まず楽になるように介入します。衣服による圧迫を取り除き、訴えを聞いて共感します。呼吸器疾患の場合は呼吸を楽にするため起座位に、また、体動で痛みが増強する場合は安静を促します。

【胸痛のアセスメントを極める!】
・胸痛のアセスメント|問診で原因疾患と緊急度を鑑別しよう!
・胸痛のアセスメント

腹痛への対応

 急性腹症は、腹腔内臓器が炎症や出血を起こした場合や腹腔内臓器の血流が障害されて起こる痛みをはじめとした急激な腹部の症状を指します。痛みの性状も種類が多く、原因疾患も多岐にわたるため特定が難しくなります。

 腹部所見は、問診・視診・聴診・打診・触診で確認します。
問診:発症時間や誘因、部位、性質、嘔気・嘔吐の有無、便や尿の性状、内服薬と飲酒歴など
視診:腹壁の膨隆、腹部の拍動、腹式呼吸の有無
聴診:蠕動運動など
打診:鼓音の有無
触診:圧痛・筋性防御・ブルンベルグ徴候の有無

 嘔吐がある場合は誤嚥に注意します。内容物誤嚥防止・イレウスの減圧を目的とし、医師の指示のもと吸引を行います。

 必要に応じて冷罨法・温罨法を実施しますが、炎症性の腹痛の場合は悪化することもあるので原則として行いません。

【腹痛のアセスメントを極める!】
・腹痛を訴える患者さんへの問診・急変対応
・【病態と原因】腹痛とは? 腹痛の種類、内臓痛・体性痛・関連痛とは?
・温罨法とは|温罨法の基礎知識(目的・効果・注意点)〜根拠がわかる看護技術
・温罨法の手順〜根拠がわかる看護技術
・クーリング(冷罨法)とは|目的と方法〜根拠がわかる看護技術

頭痛への対応

 頭痛は一次性と二次性に分けられます。一次性頭痛(機能性頭痛)とは検査でも異常のない慢性の頭痛ですが、二次性頭痛(症候性頭痛)は器質的疾患に起因しているものであるため、見逃してはいけません。頭痛を訴える患者さんの評価ポイントは、バイタルサイン・病歴・身体所見です。

①バイタルサイン
・クッシング現象(高血圧・徐脈ではないか)
・低血糖(低血糖でも頭痛は起こるため、否定しておく)

②身体所見
・対光反射、瞳孔不同
・意識レベル
・痛みの左右差
・髄膜刺激症状の有無(項部硬直・ケルニッヒ徴候・ブルジンスキー徴候)

③病歴、その他
・痛みの程度、頻度、部位(これまでに経験した中で最大の痛み、など痛みが強い場合はクモ膜下出血を疑う。脳梗塞では痛みが出現しないこともある)
・緑内障の既往の有無
・めまい など

 症状が急性または亜急性に発症し、進行性で神経症状を伴う場合はただちにCTを行います。

【頭痛のアセスメントを極める!】
・頭痛とは?原因と鑑別(機能性頭痛・症候性頭痛)
・激しい頭痛を訴える患者さんへの問診・看護

呼吸困難への対応

 なんらかの原因で体内に空気(酸素)を取り込めなくなっており、患者さん本人が呼吸に不快感や努力感を自覚している状態を指しますが、明確な診断基準がないため評価が難しくなります。呼吸困難の原因は、気管支喘息、気胸、心不全、塞栓症、アナフィラキシーショックなどさまざまで、臨床症状や検査などで鑑別を行い、原因に応じた治療を開始します。気道閉塞がある場合は急いで気道確保をし、低酸素状態であれば酸素を投与します。また、呼吸困難のあとに意識障害があれば、心停止直前と考えられます。

【チェック項目】

  • ショック状態かどうか
  • 呼吸停止の有無
  • SpO2値(SpO2値に合わせ、酸素を投与)
  • 呼吸パターン
  • 呼気、吸気のどちらで呼吸困難があるか
  • 血圧(上昇していないか)
  • 脈拍(上昇していないか)
  • 意識状態(JCS・GCS)
  • 精神的動揺(不安、疼痛など)

 バイタルサインに著しく異常がある場合や、会話不能となっている場合は気管挿管を検討します。


【参考文献】
●松月みどり,監:写真でわかる 急変時の看護アドバンス.インターメディカ社,2005,p18-23.
●日本医療教授システム,監:患者急変対応コースfor Nurseガイドブック.中山書店,2008,p.43.
●東京医科大学病院看護部,編.ナース必携!知っておきたい 急変のシグナルと対応 第1版.中央法規,2005,p8-16.
●藤野智子,他,編:急変の見方・対応とドクターコール.南江堂,2011年,p134-35、p140-41.
●佐々木勝教,監:救急・急変看護 ポケット事典.成美堂出版,2011年,p92-95、124-29.