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【連載】基礎から解説!いますぐ実践できる「がんの緩和ケア」

第2回 がんの痛みの種類と原因ごとの薬物療法を知ろう|がんの痛みと緩和①

執筆 白川峰子

広島大学病院緩和ケアセンター 緩和ケア認定看護師

<がんの痛みとは>
がんの痛みにはどのような種類があるか                        

 痛みとは、「組織障害が起こる、または起こりそうなときに表現される不快な感覚体験や情動体験」(国際疼痛学会)と定義されます。痛みの原因を表1に、痛みの分類と性状については表2に示します。

表1 がん患者さんの痛み
がん患者さんの痛み
遠藤久美:3章2 がん患者に多くみられる苦痛症状.田村恵子,編:緩和ケア教育テキスト がんと診断された時からの緩和ケアの推進.p67,メディカ出版,2017.

表2 痛みの分類と性状
痛みの分類と性状
余宮きのみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本 第2版,p.4,医学書院,2016.

<アセスメント>
さまざまな観点から痛みを評価する   

 痛みの評価は、痛みの部位、痛みの性状、痛みの強さ、痛みの経過とパターン、痛みの増悪因子と緩和因子、日常生活への影響、これまでの痛みの治療の反応、レスキュー薬(痛みが強いときに臨時に追加する薬:経口剤では速放性製剤)の効果と副作用など、さまざまな観点から行います。
 
 痛みの強さを把握するために、スケールを使用して尋ねると痛みの状況を把握しやすくなります。ペインスケールを図1に示します。

図1 ペインスケールの種類
ペインスケールの種類

<痛みの治療>
疼痛コントロールは鎮痛薬の効果を適宜評価しながら行う  

 痛みに対する治療の目標は、以下のようになります。
   第一目標:痛みに妨げられることなく夜間の睡眠時間が確保できる
   第二目標:日中の安静時に痛みがない状態で過ごせる
   第三目標:体動時の痛みが消失する

 疼痛緩和の目標設定は患者さんとともに考え、以前の日常生活に近づけられるよう段階的に達成していきます。

 痛みの治療に使用する鎮痛薬には、非オピオイド鎮痛薬、オピオイド、鎮痛補助薬があります。最初は、非オピオイド鎮痛薬から使用します。非オピオイド鎮痛薬を上限まで増量しても痛みが取れない場合、オピオイドを開始します。痛みが強い場合には、非オピオイド鎮痛薬を使用せずに、オピオイドから開始することもあります。

非オピオイド鎮痛薬の種類と目的

 非オピオイド鎮痛薬には、NSAIDsとアセトアミノフェンがあります。痛みの対象と特徴を表3に記します。

表3 非オピオイド鎮痛薬
非オピオイド鎮痛薬

オピオイドの種類と目的

 オピオイドは、主として中枢性に作用します。軽度から中程度の強さの痛みに用いる弱オピオイド(コデイン、トラマドール)と中程度から高度の強さの痛みに用いる強オピオイドに分類されます。強オピオイドの種類については表4に示します。

表4 強オピオイドの種類
強オピオイドの種類
注)1日量であって1回量ではない。経口モルヒネ30mg/日はオキシコドン20mg/日に相当、モルヒネ注10~15mg皮下注(1日量)に相当する

沢村敏郎:緩和医療の基本と実践、手とり足とり教えます がん患者さんの身体と心の痛みの診かた.P72,羊土社,2015.

強オピオイドの特徴について説明します。
 モルヒネ:腎機能障害がある場合、傾眠、せん妄、呼吸抑制などの副作用を生じやすくなるので注意が必要です。
 フェンタニル:モルヒネやオキシコドンに比べ、便秘、悪心、眠気などの副作用が少ないです。腎障害のときに最も安全なオピオイドは、フェンタニルとタペンタドールです1)
 オキシコドン:モルヒネに比べると腎機能障害による影響を受けにくいです。徐放性製剤として最小規格5mgがあり、少量から開始できるため導入しやすいです。
 オピオイドの副作用対策は、当連載第6回で詳しく説明します。

鎮痛補助薬の種類と目的

 鎮痛補助薬とは、鎮痛薬と併用することで、鎮痛効果を高めたり、特定の状況下で鎮痛効果を出現させる薬物のことです。適応となるのは、オピオイドを適切に使用しても除痛が得られない、副作用によってオピオイドが増量できない、副作用によってオピオイドの減量が必要となる場合などです2)。鎮痛補助薬の選択の助けになる情報を表5に示します。

表5 鎮痛補助薬の選択の助けになる情報
鎮痛補助薬の選択の助けになる情報
沢村敏郎:緩和医療の基本と実践、手とり足とり教えます がん患者さんの身体と心の痛みの診かた.P98,羊土社,2015.

*アロデニア:通常では痛みの原因にならない微小刺激によって、強い疼痛がもたらされること。異痛症

鎮痛効果の評価 

 疼痛コントロールにおいて、鎮痛効果を評価することは、24時間患者さんの側にいる看護師の大事な役割と言えます。
定期鎮痛薬(時間を決めて定期的に使用する鎮痛薬)開始後の鎮痛効果の評価は、患者さんの実感や満足感、痛みの強さ(ペインスケール)の変化、日常生活動作の拡大、表情、食事量、睡眠状況などから行います。

 痛みの評価は、継続的に行う必要があります。

 評価のための観察ポイントは、持続痛があるか、定期鎮痛薬の切れ目に痛みがあるか、レスキュー薬の効果(効いてくるまでの時間を含む)や使い方(痛みが強いときに使うのか、痛みの出現が予測されるときに使うのか)、使用回数と使用時間、鎮痛薬の副作用の有無などです。これらは、鎮痛薬を調整する際の大事な指標になります。

 痛みのコントロールがうまくいっていないときは、レスキュー薬の効果的な使用方法を患者さんとともに考えます。患者さんの日常生活で、痛みの出現が予測されるとき(体動、嚥下、排尿、排便)は予防投与方法を説明し、鎮痛薬の効果が最大になったときに動作できるようにします。
 
 持続痛がある場合、また、鎮痛薬の切れ目の時間が長かったり強い場合、レスキュー薬の使用回数が多かったり増えている場合などは、定期鎮痛薬の増量を行います。それでも痛みのコントロールができないときや、副作用がコントロールできない場合は、定期鎮痛薬の変更を行います。

 また、薬剤調整だけではなく、予測できる痛みに対しては、痛みの出にくい動作方法を工夫する必要もあります。

<すぐ実践できる看護>
マッサージや安楽な体位など、痛みの閾値を上げるケアをする 

 痛みの閾値(その患者さんが痛さを感じ始める痛みの最小値)に影響する因子には、低下させる因子(痛みを感じやすくする因子)と上昇させる因子(痛みを感じにくくする因子)があります。閾値を低下させる因子には、不快感、不眠、疲労、恐怖、怒り、悲しみ、うつ状態、倦怠感、孤独感、社会的地位の喪失などがあり、閾値を上昇させる因子には、睡眠、休息、周囲の人々の共感、理解、気晴らしとなる行動、鎮痛剤、抗不安薬、気分の高揚、緊張感の緩和などがあります。

 痛みの閾値を低下させる因子を少しでも弱め、閾値を上昇させる因子を強めるケアを行うことが看護ケアになります。マッサージによって血液循環を促したり、筋の緊張を和らげたりする、安楽な体位を工夫する、温罨法、冷罨法など、患者さんが心地よさを得られる方法を選択するといったケアが有効です。痛みをもつ患者さんは不安も抱えているので、看護師が側にいて安心感を与えることも大切です。

痛みの薬物療法のポイント

鎮痛剤を使用しても、痛みをゼロにすることは困難です。そのため、痛みを抱えながらも患者さんが日常生活を過ごせるように、また、痛みへのセルフコントロールができるように、患者教育を行うことが必要です。
患者教育の具体的な内容は、痛みの伝え方、鎮痛剤の知識・評価、痛み日記の記載、内服管理、レスキュー薬の効果的な使用方法、オピオイドの副作用対策、日常生活の工夫などです。
患者さんが鎮痛薬を自己管理できない場合は、家族への指導が必要です。


【引用・参考文献】
1)余宮きのみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本 第2版,p120,医学書院,2016.
2)田村恵子,編:緩和ケア教育テキスト.p76,メディカ出版,2017.   
●高橋美賀子,他編著:新装版 ナースによるナースのためのがん患者のペインマネジメント.第6章 ペインマネジメントに役立つ看護技術.p.65-74,日本看護協会出版会,2014.
●沢村敏郎:緩和医療の基本と実践、手とり足とり教えます がん患者さんの身体と心の痛みの診かた.羊土社,2015.
●余宮きのみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本 第2版,医学書院,2016.
●田村恵子,編:緩和ケア教育テキスト.メディカ出版,2017.

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