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【連載】基礎から解説!いますぐ実践できる「がんの緩和ケア」

第3回 骨転移の痛みには鎮痛薬と放射線治療、動作の工夫を|がんの痛みと緩和②

執筆 白川峰子

広島大学病院緩和ケアセンター 緩和ケア認定看護師

<骨転移の痛みとは>
骨転移の起こりやすいがんと部位 

 骨転移は、がん細胞が原発巣から遊離し、血管内へ浸潤、骨に着床して適応・増殖することで起こります。がん細胞自体が骨を直接破壊することはありません。

 骨転移の頻度が高いのは、乳がん、前立腺がん、甲状腺がん、肺がんなどです(表1)。一般的に骨転移が起こりやすい部位は、腰椎、胸椎、頸椎、仙骨の順に多く、末梢骨への転移はまれです。

 骨転移が起きると、痛み、病的骨折、脊髄圧迫・麻痺などが生じます。
 
表1 がんの骨転移:疫学
がんの骨転移
Selvaggi G, et al : Crit Rev Oncol Hematol, 2005. より転載一部改変

<アセスメント>
転移部位ごとに、痛みが増強する姿勢・動作を確認する

 まずは、痛みの出現が安静時か体動時かについての評価をします。

 また、転移部位への荷重が最小限になるように工夫する必要があります。どのような姿勢や動作によって疼痛が増強するのかを観察し、疼痛が増強する姿勢・動作をアセスメントします。

 例えば、下肢転移では荷重時、脊椎転移では体幹部の前後屈や捻転時に痛みが出現します。

<骨転移の痛みの治療>
痛みの種類に応じた鎮痛薬と放射線による緩和治療 

炎症性疼痛と神経障害性疼痛

 骨転移の初期は、がんの浸潤に伴う炎症によって骨膜などが刺激されるために炎症性疼痛が生じます。これは、傷害受容性疼痛の体性痛(表2)です(同連載第2回に詳細)。消炎鎮痛剤やオピオイドがよく効きます。転移巣が拡大すると骨破壊の進行により知覚神経の圧排・損傷が生じ神経障害性疼痛を合併します。神経障害性疼痛に対しては、鎮痛補助薬を併用します。
 
表2 痛みの分類と性状
痛みの分類と性状
余宮きのみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本 第2版,p.4,医学書院,2016.

持続痛と突出痛

 痛みには、持続痛と突出痛があります。持続痛は持続する痛みで、オピオイドの徐放性製剤を定期的に投与します。突出痛への対応は、オピオイドの速放性製剤の追加投与を行います。骨転移痛は、体動時に出現する突出痛を、骨転移がある患者さんの大多数が経験しています。この突出痛は予測可能な痛みであり、体動前にレスキュー薬(痛みが強いときに臨時に追加する薬:経口剤では速放性製剤)を使用し、鎮痛薬の効果が最大になったときに活動することで、痛みを和らげることができます。

 このように、体動時に限定されている骨転移痛には、オピオイドのレスキュー薬を使用します。安静時痛がない患者さんにオピオイドを増量してしまうと、安静時のオピオイドが過量になり、眠気などの副作用によりADL低下や転倒を起すので、注意が必要です。

放射線による緩和治療

 放射線治療は、骨転移による痛みの緩和、麻痺の改善、病的骨折や脊髄圧迫を予防する目的で行われます。また病変の進行を抑えます。放射線治療によって、60~90%で痛みの緩和が得られ、鎮痛効果は照射開始後2週程度から出現し、4~8週で最大になる1)と言われています。

 放射線治療による疼痛緩和には時間が必要なので、まずは鎮痛薬を積極的に使用します。

放射線治療による副作用

 骨転移の場合は、放射線をあてる部位によって副作用は異なります。

皮膚炎:日焼けのような症状に対して、塗り薬で対応します。
咽頭炎・食道炎(頸部・胸部の照射):飲み込むときの痛みやつかえ感が出現し、痛みが強いときは、鎮痛薬を使用します。
腸炎(腹部・骨盤の照射):下痢症状が出現することがあります。
骨髄抑制(広範囲の脊髄が含まれる場合)
フレア現象:照射後一時的に痛みが強くなることがあります。

<すぐ実践できる看護>
転移部位ごとに、痛みが増強する姿勢・動作を確認する           

放射線治療体位のための薬剤調整

 痛みが強いと、放射線治療台での治療体位が保持できないことがあります。ベースのオピオイドを調整し、治療前にはレスキュー薬を使用し疼痛緩和を行います。速やかな除痛が必要なとき、高用量のオピオイドが必要なとき、急速な突出痛への対処が必要なときは、注射剤を使用します。

動作方法の工夫や装具の使用

 リハビリテーションの担当科に依頼し、理学療法士・作業療法士との連携のもと、痛みが最小限になるように、日常動作の方法を工夫したり、そのために必要な装具を検討します。転倒や骨折予防のため、安静度を確認したうえで、痛みが生じない骨転移部に負担をかけない姿勢や動作、移動方法を工夫します。排泄は、膀胱留置カテーテルを挿入したり、尿器、ポータブルトイレを必要に応じて使用します。移動時については、コルセット、杖の使用や歩行器、車椅子、ストレッチャーの使用が検討されます。

生活面の指導

 放射線治療の鎮痛効果は、照射開始後2週程度から出現し、4~8週で最大1)になりますが、骨の硬化が得られるには数カ月を要します。骨の硬化が得られたら、病的骨折のリスクが低下することが期待されます。患者さんには、疼痛の緩和と骨硬化の時期がずれていることを説明し、骨折に注意するように指導が必要です。具体的には、骨転移部位に負荷がかからないような装具の使用や起居動作の工夫になります。

精神面の支援

 骨転移のある患者さんには、身体的苦痛だけではなく、病状の進行に対する不安や、動けないつらさが出現しています。また、仕事や家庭での役割を果たすことができなくなり、患者さんのQOLが著しく低下します。患者さんに寄り添い、つらい気持ちを傾聴する必要があります。

放射線治療後の対応

 放射線治療の終了後2週間程度で副作用がピークになるため、治療が終了してからも副作用への対応が必要です。

骨転移の痛みの緩和のポイント

骨転移痛に対する疼痛緩和の対応は、薬物療法だけではなく、放射線治療や装具の利用、リハビリテーションなど包括的なアプローチが必要です。
骨転移痛の対応では、体動時痛をいかに軽減させるかがポイントになります。
放射線治療を開始した後に、痛みが緩和してきた場合は、オピオイドの減量や中止が必要になります。オピオイドが過量になると、副作用として、眠気・嘔気・便秘・せん妄などが出現するので、これらの症状が現れたら直ちに減量していきます。


【引用・参考文献】
1)日本緩和医療学会:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン.金原出版,2014.(2018年8月21日閲覧)https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2014/pdf/pain2014.pdf
●Selvaggi G, et al : Crit Rev Oncol Hematol, 2005.
●大森まいこ,他:骨転移の診療とリハビリテーション.医歯薬出版株式会社,2014.  
●熊谷靖代:第9章 その他の緩和療法 1 放射線治療.高橋美賀子,他編:新装版 ナースによるナースのためのがん患者のペインマネジメント.p101-103,日本看護協会出版会, 2014.
●日本臨床腫瘍学会:骨転移治療ガイドライン,南江堂,2015.(2018年8月21日閲覧)http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/bone_metastasis/bone_metastasis.pdf
●濱口恵子,他:見てできる臨床ケア図鑑 がん看護ビジュアルナーシング.p450,学習研究社,2015.
●余宮きのみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本 第2版,医学書院,2016.

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