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【連載】検査値の「異常」 それ、ホントに異常なの!?

第2回 肝の異常を知る

解説 山崎悦子

横浜市立大学附属病院 臨床検査部部長・准教授

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 日常の看護の中でよく目にする検査値のことをきちんと理解していますか。毎日チェックするのは特定の項目ばかりで、そのほかは自信がない……、そんなことはないでしょうか。確かにいつもの検査項目の異常値がわかれば、すぐに困ることはありません。でも、検査値の変化には理由があり、互いに関連しあっていることも多いのです。目の前の異常値だけでは、異常かどうかがわからないケースもあります。この記事は、基本的な検査項目の異常値からホントの異常を読み取るコツをご紹介します。その値から「今何が起こっているのか」を察知し、一歩進んだ看護に結びつけましょう。


目次


1.検査項目のココを見る!

 肝の異常を知るための検査は、その目的によって、①肝疾患が存在するかをみる検査、②肝障害の原因を探る検査、③疾患の重症度や進行度をみる検査に分けられます。
 
 肝機能が低下する原因には、肝細胞が障害された場合と、胆道系が障害された場合があるので、まず①では、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、およびASTとALTの比の測定による肝細胞障害のスクリーニングと、アルカリホスファターゼ(ALP)、γ-グルタミールトランスフェラーゼ(γ-GT)、ビリルビン(Bil)によって胆汁うっ滞のスクリーニングを行います。過剰飲酒(γ-GT)、体質性黄疸(Bil)の状態も確認します。②では、肝炎ウイルスマーカー(HBs抗原、HBe抗原/抗体、HBV-DNA定量、HCV抗体、HCV-RNA)と、自己免疫性肝炎を疑い抗核抗体や抗平滑筋抗体などもチェックします。③では、急性肝障害の重症度が確認できるプロトロビン時間(PT)と、慢性肝障害の進展度をみる線維化マーカー[Ⅳ型コラーゲン、ヒアルロン酸、血小板(Plt)]の検査を行います。

 肝の異常をみる場合、患者さんの自覚症状にも着目しましょう。大きく「自覚症状があり、ASTとALTが短期間で変化している」「自覚症状がなく、健診や人間ドックなどで初めて検査値の異常を指摘された」という2つのパターンを想定することができ、前者は急性肝炎、後者は慢性肝炎(肝硬変)を疑います。

特に注目!アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)

 肝細胞障害のスクリーニングでは、ASTとALTの数値をまず確認します。いずれも代表的な逸脱酵素で、細胞が破壊されたときに血中に逸脱して血中濃度が上昇します。ASTは、比較的肝に特異的なALTに比べ、全身のいろいろな臓器に分布しているため、単独の数値のみで判断することは難しい指標です。しかも、肝での上昇度合いが両者で異なるため、どのように比較するかが大切です。肝炎がある場合はいずれも上昇し、ASTのみが高値であれば肝以外の疾患を疑うなど、より正確なスクリーニングが可能になります。

2.異常値を読み取ろう!

尿検査

尿ウロビリノゲン
 肝臓や胆嚢の機能異常を反映させる検査です。ウロビリノゲンは、胆汁内に排出されたBilが腸内細菌によって分解されてできたもので、腸から血中に再吸収され、尿として排泄されます。

◆異異常値からコレがわかる!

【陽性】
溶血、肝炎、肝硬変、肝機能障害など

【陰性】
肝内胆汁うっ滞、閉塞性黄疸など

生化学検査

AST/ALT
 いずれも肝細胞障害に反応する逸脱酵素ですが、ALTはASTよりも肝特異性が高く、単独で判断するならALTが優位です。しかし、分布の違いや半減期の違い(AST10~20時間、ALT40~50時間)などから、両者を組み合わせてみることで、どのような異常が起きているかをより詳しく知ることができます。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加)】
[500U/L以上]急性肝炎(ALT>AST、初期はAST優位)、劇症肝炎、虚血性肝障害(ショック肝、LDも著明に上昇)など

[100~500U/L]慢性活動性肝炎(ALT>AST)、薬剤性肝障害(ALT<AST、胆道系酵素の上昇)、アルコール性肝炎(ALT<AST、γ-GTの上昇)、胆汁うっ滞(胆道系酵素優位の上昇)、溶血・心筋梗塞(ALT<AST)など

[100U/L以下]慢性肝炎(ALT>AST)、脂肪肝(脂質異常、糖代謝異常を伴うことが多い)、肝硬変(ALT<AST、Albの低下、Pltの低下)、うっ血肝(ALT<AST)など

ALP
 全臓器に広く分布しますが、肝臓や小腸、骨、胎盤に特に多く含まれる酵素です。肝・胆道系障害により、胆汁がうっ滞すると数値が上昇します。6つのアイソザイムに分類され、それを測定することで障害組織を推定することができます。肝臓由来はALP1とALP2です。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加)】
肝外胆道閉塞(胆管胆石症、胆管がん、膵頭部がん、肝がん、胆管炎など)、肝内胆汁うっ滞症(原発性胆汁性肝硬変症、薬剤性肝障害、細胆管炎性肝炎、胆管がん、肝がんなど)、肝膿瘍、原発性・転移性肝がん、骨芽細胞増殖性疾患(骨肉腫、骨への転移がんや多発性骨髄腫、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症など)、妊娠など
 
γ-GT
 アミノ酸の代謝にかかわる酵素です。腎、膵、肝の順で多く分布していますが、血中γ-GTが腎疾患で上昇することはなく、肝・胆道系障害による上昇がほとんどです。そのため肝・胆道系障害のマーカーとして用いられます。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加)】
閉塞性黄疸、肝細胞障害(急性肝炎:低め、慢性肝炎:著明)、肝がん、アルコール性肝障害、過栄養性脂肪肝・非アルコール性脂肪肝(軽度~中等度)、膵がん、抗てんかん薬(フェニトイン、フェノバルビタール)服用など

Bil
 古くなった赤血球の崩壊時に生成される物質で、胆汁色素の主成分となります。肝臓で処理をされて無毒化されますが、処理前を間接ビリルビン、処理後を直接ビリルビン、両者を合わせたものを総ビリルビン(Bil)といいます。Bilが2.0~3.5mg/dLになると顕性黄疸が現れますが、間接型と直接型の優位性によって原因疾患が変わります。臨床的には、直接型のケースが多くなります。視覚的に黄疸がわからない不顕性黄疸もあり、その場合は皮膚掻痒感、全身倦怠感、食欲不振などの症状がみられます。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加)】
[間接型優位]溶血性貧血、体質性黄疸、シャント高Bil血症、進行肝硬変、肝不全など

[直接型優位]肝実質性黄疸(ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、薬剤性肝障害、アルコール性肝障害、肝硬変、転移性肝腫瘍など)、肝内胆汁うっ滞型黄疸[急性:アルコール性、薬剤性 反復性:良性反復性、妊娠性反復性 慢性:原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、薬剤性、アルコール性、自己免疫性膵炎(AIP)、IgG4関連疾患]、閉塞性黄疸(悪性腫瘍、結石、炎症、AIP、IgG4関連疾患)、体質性黄疸、敗血症、血球貪食症候群など

Alb
 血中蛋白質の50~60%を占め、比較的長期の栄養状態・健康状態を反映して変動し、経過観察や治療効果の判定に用いられます。主に肝臓でつくられるため、肝臓に強い障害が生じるとAlbの産生能力は低減し、その数値が下がるため、肝障害を判断する材料にもなります。

◆異異常値からコレがわかる!

【低値(減少)】
肝障害(肝硬変、肝がん、肝炎)、急性・慢性炎症、栄養障害など


この記事はナース専科2016年7月号より転載しています。

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