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【連載】検査値の「異常」 それ、ホントに異常なの!?

第3回 腎・尿路系の異常を知る

解説 山崎悦子

横浜市立大学附属病院 臨床検査部部長・准教授

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 日常の看護の中でよく目にする検査値のことをきちんと理解していますか。毎日チェックするのは特定の項目ばかりで、そのほかは自信がない……、そんなことはないでしょうか。確かにいつもの検査項目の異常値がわかれば、すぐに困ることはありません。でも、検査値の変化には理由があり、互いに関連しあっていることも多いのです。目の前の異常値だけでは、異常かどうかがわからないケースもあります。この記事は、基本的な検査項目の異常値からホントの異常を読み取るコツをご紹介します。その値から「今何が起こっているのか」を察知し、一歩進んだ看護に結びつけましょう。


目次


1.検査項目のココを見る!

 腎臓には、血液中の老廃物を濾過して尿として排泄するとともに、必要な物質を再吸収するという重要な働きがあります。腎臓に異常が生じると尿中に存在する細胞や蛋白質、糖などが異常を示すことから、腎障害のスクリーニングには尿検査が重要となります。尿の異常は尿路系の障害でも現れます。腎・尿路系の障害は、血液検査よりも尿検査のほうが迅速に反映されるケースが多いことを覚えておきましょう。

 また、腎以外に、糖尿病、肝臓病、膠原病、骨髄腫などの発見につながることもあります。主に、尿蛋白、尿潜血、尿糖が重要な項目で、尿蛋白と尿潜血が陽性になったら、必ず尿沈渣を行い原因疾患の探索に役立てます。

特に注目! 尿蛋白

 体内には複数種類の蛋白質が存在し、腎・泌尿器系が障害されると尿中に漏出します。尿蛋白は最も異常が出現しやすく、血清クレアチニン(Cr)よりも早期に陽性となります。尿蛋白が陽性であれば、必ずCrや血中尿素窒素(BUN)などを調べて精査する必要があります。
 
 発熱、過激な運動(小児の成長期に起こる体位性蛋白尿もある)、精神的ストレス、蛋白の過剰摂取などでも陽性となる生理的蛋白尿もありますが、これは治療の必要はありません。+1程度の陽性であれば、過敏に反応しないようにしましょう。腎機能検査や尿潜血、尿沈渣の結果を合わせてみて、再検査を考慮します。

 測定法には、蛋白質の量の程度を示す試験紙法と蛋白質の量を測定する定量法があります。

特に注目! クレアチニン(Cr)

 Crは、腎臓の糸球体濾過機能を反映しており、この機能が低下していると高値を示します。ただし、数値が上昇するのは腎機能が50%ほど低下してからであるため、早期や軽度の腎機能低下は評価できません。慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)などの腎機能を評価する場合、糸球体濾過量(glomerular filtrationrate:GFR)をみますが、Crと年齢、性別からも推算することができます[推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtrationrate:eGFR)]。Crと同時にこのeGFRで評価することも大切になります。

【eGFR推算式】(mL/分/1.73m2
男性:194×Cr-1.094×年齢-0.2874
女性:194×Cr-1.094×年齢-0.287×0.7394

特に注目! 血尿(尿潜血/尿沈渣)

 腎・尿路系の炎症や損傷、腫瘍からの出血があると、尿中に血液が混じり陽性を示します。しかし、試験紙法で陽性を示しても、視覚的に認めた赤色尿であっても、血尿とはいえないケースがあります。必ず尿沈渣を併用して確認することが大切です。血尿であるとされた場合には、さらに鑑別診断が必要となります。一方、尿潜血が陽性で、尿沈渣で赤血球が陰性のときは、ミオグロビン尿、ヘモグロビン尿、低張尿、細菌尿、アルカリ尿などが考えられます。逆に尿沈渣で赤血球が認められるものの、潜血反応が陰性の場合、ビタミンC摂取によるアスコルビン酸含有尿や試験紙が劣化している可能性があります(偽陰性)。


Column 見直しておこう-慢性腎臓病(CKD)
 腎機能が低下する代表的疾患に慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD) があります。CKDの診断には、特に尿蛋白、eGFRが重要です。重症度は、①原因疾患、②尿蛋白(尿アルブミン)の程度、③GFR( eGFR)低下によって分類されます。濃縮尿や希釈尿での尿蛋白の検査は、試験紙法での評価が困難なため、「CKD診療ガイドライン2012」では、原則として尿蛋白濃度と尿中Cr濃度を定量し、尿蛋白/Cr比(g/gCr)で評価することが推奨されています。また、糖尿病性腎症の早期ではアルブミン尿で評価するとしています。


【CKDの定義】
①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要

② GFR2

※①、②のいずれか、または両方が3カ月以上持続する

2.異常値を読み取ろう!

尿検査

尿蛋白
 臨床でみる頻度が高いのが、糸球体性蛋白尿で糸球体基底膜の透過性亢進や障害で、主にアルブミン(Alb)が尿に出現します。その障害の程度が重症であればあるほど、蛋白の量は増加します。近位尿細管における再吸収障害と細胞障害では、β2-マイクログロブリンなど低分子の蛋白質が漏出します(尿細管性蛋白尿)。尿路系結石や炎症、腫瘍など腎盂以下の尿路系病変では、病変に起因する滲出液や分泌液由来の蛋白質が漏出します(腎後性蛋白尿)。腎臓や尿路に原因がない場合でも尿蛋白はみられます。大量の溶血や筋組織の破壊、異常な蛋白質が作られる多発性骨髄腫などでは、血中に増加した蛋白質が尿細管での再吸収量の限度を超えて、尿中に漏出します(腎前性蛋白尿)。大量の溶血ではヘモグロビン、筋組織の破壊ではミオグロビン、多発性骨髄腫ではベンスジョーンズ蛋白がみられます。

◆異異常値からコレがわかる!

【陽性】
[腎前性蛋白尿]多発性骨髄腫、溶血、横紋筋融解など

[腎性蛋白尿]糸球体性:糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、ループス腎炎 尿細管性:間質性腎炎、中毒性腎障害、先天性尿細管疾患など

[腎後性蛋白尿]尿路系の結石、炎症、腫瘍など

尿潜血
 試験紙法で陽性であっても、尿沈渣で赤血球の存在を確認し血尿であるかどうかをみることが必要です。尿沈渣法により400倍で顕鏡観察して1視野あたり5個以上の赤血球を認める場合、フローサイトメトリー法で20/μL以上の赤血球が認められるときに血尿と判断します。血尿には糸球体性血尿と非糸球体性(尿路性)血尿があり、各疾患の鑑別診断のため、さらに検査を行うことになります。

◆異異常値からコレがわかる!

【陽性】
[糸球体性血尿]1次性糸球体疾患(IgA腎症、急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、半月体形成糸球体腎炎)、2次性糸球体疾患(ANCA関連血管炎、グッドパスチャー症候群、ループス腎炎、紫斑病性腎炎)、遺伝性糸球体疾患(菲薄基底膜病、アルポート症候群)など

[非糸球体性(尿路性)血尿]炎症・感染症(腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、腎結核)、微小結石による尿細管障害(高カルシウム尿症、高尿酸尿症)、尿路結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石)、腫瘍(腎腫瘍、尿管腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺肥大・がん)、血管病変(ナットクラッカー現象、腎梗塞、腎動静脈血栓症、腎動静脈奇形)、嚢胞腎、腎外傷、水腎症など

[いずれの場合も考えられるもの]尿細管・間質性腎炎、凝固異常[過剰な抗凝固療法、凝固異常症(DIC、血友病)]など

尿沈渣
 尿蛋白、尿潜血が陽性の場合に行います。尿を遠心分離機にかけ、沈澱した赤血球、白血球、尿酸結晶、円柱細胞、細菌などの固形成分の量と種類をみます。赤血球が一定量以上存在している場合は血尿と判断します。白血球が5個/HPF以上みられる場合は膿尿と判断し、腎盂腎炎、膀胱炎などの尿路感染症を疑います。尿路感染症を疑う場合、炎症マーカーであるWBC、C反応性蛋白(CRP)も確認します。円柱細胞は糸球体から漏出した赤血球や白血球が、尿細管で蛋白成分とともに円柱状になったもので、尿細管に病変がある場合に現れます。

◆異異常値からコレがわかる!

【陽性】
[赤血球]非糸球体性(尿路性)疾患による出血、糸球体性疾患による出血など

[白血球]
好中球:尿路の全般的な疾患 
リンパ球:慢性的な尿路の炎症、尿路の腫瘍・結核、乳び尿
好酸球:アレルギーによる尿路疾患、尿路結石、尿細管の間質の障害 
単球:慢性的な尿路の炎症、尿路の腫瘍など

[上皮細胞]
尿細管上皮細胞:尿細管・集合管・腎乳頭の炎症・機械的損傷
尿路上皮細胞:腎杯・腎盂・尿管・膀胱・尿路前立腺部の炎症・機械的損傷
円柱上皮細胞:(男)尿道・前立腺の炎症・機械的損傷、(女)尿道・子宮内膜の炎症・機械的損傷
扁平上皮細胞:外尿道口の炎症・機械的損傷など

[円柱]
赤血球円柱:ネフロンからの出血・炎症 
白血球円柱;ネフロンからの感染・炎症 
硝子円柱:腎実質性障害の初期、脱水、運動後 
顆粒円柱:腎実質性障害の慢性化・末期 
ろう様円柱:腎実質性障害の慢性化・末期など

[結晶]
尿酸結晶:尿路結石、高尿酸血症 
ビリルビン結晶:閉塞性黄疸 
コレステロール結晶:ネフローゼ症候群、嚢胞腎など

生化学検査

Cr
 筋肉のエネルギー源であるクレアチンリン酸の終末代謝産物で、筋肉中、特に骨格筋に最も多く存在します。Crは糸球体で濾過された後、尿細管で再吸収されず尿中に排出されます。そのため、腎機能が低下すると、尿にCrが排出されず血中の濃度が上昇します。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加)】
糸球体基底膜障害や尿細管障害による糸球体濾過量の低下、溶血など

【低値(減少)】
肝障害、筋疾患(筋ジストロフィー、長期臥床者など)、尿崩症など

BUN
 血液中の尿素に含まれる窒素成分で、蛋白質の最終代謝産物です。腎機能の指標として用いられ、腎機能が低下していると十分に排泄されずに血中濃度が上昇します。腎機能低下のほか、組織蛋白の異化亢進、蛋白質摂取量の増加、消化管出血、有効循環血液量の減少(動脈系の脱水)などでも上昇するため、Crとの比較(BUN/Cr比)をみることが重要です。BUNがCrと連動せずに急激に上昇する場合、消化管出血の可能性があります。なお、GFRが正常の場合、BUNは数日間のうちに元の値に戻ります。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加】)
腎血流量の減少(重症心不全、ショック)、腎障害(腎疾患による尿素排出機能の障害、腎毒性のある抗生物質の投与)、尿路の閉塞(結石、がん、前立腺肥大)など


column 見直しておこう-糸球体濾過量の評価

 腎機能は、糸球体濾過機能つまり老廃物の排泄能力をみることで評価します。そこで指標となるのがCrの項で登場した糸球体濾過量(GFR)です。これは、腎臓のすべての糸球体で濾過される血漿量を単位時間当たりで表したもの。しかし、糸球体から直接原尿を採取することができないため、そのものを求めることは困難です。
 
 そこで登場するのがeGFRです。Crと年齢、性別から推算することができます。尿中のCrの量は、糸球体の濾過量を反映するとされています。
 
 ただし、Crの血中濃度が上昇するのは、腎機能が50%ほど低下してからであるため、Crでは早期や軽度の腎機能低下を評価できません。そこで最近では、Crに代わって血清蛋白質の一種である血清シスタチンCを用いることもあり、その推算式はeGFRcysと呼ばれます。
 
【eGFRcys推算式】(mL/分/1.73m2
男性(104×シスタチンC-1.019×0.996年齢)-8
女性(104×シスタチンC-1.019×0.996年齢×0.929)-8


この記事はナース専科2016年7月号より転載しています。

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