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【連載】検査値の「異常」 それ、ホントに異常なの!?

第4回 糖代謝異常を知る

解説 山崎悦子

横浜市立大学附属病院 臨床検査部部長・准教授

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 日常の看護の中でよく目にする検査値のことをきちんと理解していますか。毎日チェックするのは特定の項目ばかりで、そのほかは自信がない……、そんなことはないでしょうか。確かにいつもの検査項目の異常値がわかれば、すぐに困ることはありません。でも、検査値の変化には理由があり、互いに関連しあっていることも多いのです。目の前の異常値だけでは、異常かどうかがわからないケースもあります。この記事は、基本的な検査項目の異常値からホントの異常を読み取るコツをご紹介します。その値から「今何が起こっているのか」を察知し、一歩進んだ看護に結びつけましょう。


目次


1.検査項目のココを見る!

 糖質の中でもグルコース(血糖:Glu)は、生体内の細胞のエネルギー源です。肝臓における代謝、消化管での吸収、筋肉や脂肪などの末梢組織での利用、インスリンなどのホルモンによる調節などによって、血中量が維持されています。この代謝機能が正常に働かなくなるとGluが異常を示します。
 
 糖代謝異常は、日常的検査の血糖や尿糖の値から知ることが少なくありません。いずれも生理的変動による場合があるので、何度か検査を行ったうえで、高血糖・低血糖であると判断します。高血糖の場合、まずは代表的疾患である糖尿病の確定診断を行うため、空腹時血糖値、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値、随時血糖値、過去1~2カ月間の平均血糖値を反映するHbA1cをみます。OGTT時にインスリンやCペプチド(CPR)を測定することもあります。低血糖に関しては、インスリン注射や経口糖尿病治療薬の影響を除くと、インスリノーマ(インスリン産生膵島細胞腫瘍)や重症肝疾患などの原因疾患を鑑別する検査等が必要となります。

特に注目! 血糖(Glu)

 Gluが高値の場合、代表的な原因疾患は糖尿病(1型・2型・妊娠)で、ほかに、膵疾患、内分泌疾患、肝疾患、薬剤(副腎皮質ステロイド薬、インターフェロン)などとなります。低値の場合多い原因は、インスリンや糖尿病治療薬の影響です。疾患として代表的なのはインスリノーマで、膵臓の腫瘍がインスリンを過剰に産生することにより低血糖となります。重症肝疾患に関しては、肝臓に糖を十分に蓄えることができないため食前に低血糖になることはありますが、食後には急激な血糖上昇がみられます。

特に注目! 尿糖

 尿糖は、腎臓の糸球体で原尿として濾過され、尿として排出される前に近位尿細管で再吸収されます。そのため、尿中に糖が現れることはありません。しかし、糖が腎臓の再吸収量を超過したり(高血糖)、腎臓の再吸収機能が低下すると(非高血糖)、尿中に糖が排泄されるようになります。そのため、非侵襲的検査の中でも、尿糖は糖代謝異常をみるには有効な項目の1つです。

2.異常値を読み取ろう!

尿検査

尿糖
 陽性の場合は、まずは糖尿病などGluが上昇する病態を疑い、Glu、HbA1cを確認します。腎臓が再吸収できる血糖の限界(腎臓の糖排泄閾値)は180mg/dLとされ、尿糖の存在はこの閾値以上のGluであることを示唆しています。高血糖によるものではない場合、原因疾患として腎性糖尿、妊娠高血圧腎症が考えられます。また、新生児でも非高血糖によって尿糖が陽性を示す場合があります。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加)】
糖尿病、膵組織の荒廃(急性膵炎、膵結石、膵線維化、広汎な膵がん、ヘモクロマトーシスなど)、肝疾患(特に慢性肝疾患)、内分泌疾患(インスリン拮抗ホルモンの優勢)、中枢神経系疾患(頭蓋内圧亢進をきたすもの:脳腫瘍、脳血管障害、髄膜炎、頭蓋骨折など)、代謝性疾患(リポジストロフィー、肥満症、肝疾患、アミノ酸尿、アシドーシス、尿毒症など)、心筋梗塞、食事性高血糖、グリコーゲンの分解亢進など

尿ケトン体
 ケトン体は肝臓で脂肪を分解したときに産生されます。エネルギー補給のためにブドウ糖などの糖質よりも脂質を利用している場合に、その代謝過程においてケトン体が増加します。強陽性では糖尿病性ケトアシドーシスを示唆します。糖尿病の場合、陰性であれば血糖コントロールが順調であることがわかります。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加)】
糖尿病、高脂肪食、飢餓(または絶食)、運動、外傷、手術侵襲、発熱など

生化学検査

Glu
 血糖はインスリンとインスリン拮抗ホルモンの協調によって恒常性が保たれています。インスリンは膵臓から分泌されて血糖値を下げます。インスリン拮抗ホルモンには血糖値を上げる働きがあり、グルカゴン、コルチゾール、カテコラミンなどがあります。これらのホルモンの分泌や作用に異常をきたすと、糖の代謝機能が維持できなくなり、血液中のGluの量が変動し、Gluが上昇、もしくは低下します。
 
 血糖値は食事の影響が強く食後には必ず上昇するので、採血のタイミングが重要となります。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加)】
糖尿病(1型・2型)、遺伝子異常が同定されている糖尿病、膵疾患(膵炎、外傷・膵摘出術、腫瘍、ヘモクロマトーシスなど)、内分泌疾患(クッシング症候群、先端肥大症、褐色細胞腫、グルカゴノーマ、原発性アルドステロン症、甲状腺機能亢進症など)、肝疾患(慢性肝炎、肝硬変など)、薬剤や化学物質(グルココルチコイド、インターフェロンなど)、感染症、遺伝的症候群など

【低値(減少)】
[器質的低血糖]膵疾患(インスリノーマ、膵島の増生・肥大)、肝疾患(肝炎、肝硬変、肝がん)、内分泌疾患(下垂体機能性低下症、副腎皮質機能低下症、甲状腺機能低下症など)など

[機能性低血糖症]反応性低血糖(インスリンの分泌・感受性の亢進)、胃切除後の食事性低血糖、ロイシン低血糖、絶食、腎性糖尿、授乳、激しい運動など

[先天性代謝異常]グリコーゲン蓄積症(糖原病)Ⅰ・Ⅲ・Ⅵ型、ガラクトース血症、果糖不耐症など

[医原性・薬剤性]インスリン注射、経口血糖降下薬(スルホニル尿素類)、アルコール、その他の薬剤など

HbA1c
 HbA1cとは、ブドウ糖と結合したヘモグロビン(Hb)のことです。赤血球の寿命は約120日間でその間にHbはブドウ糖と結合します。過去1~2カ月間の平均血糖値を反映し、糖尿病など高血糖状態が続くことで高値を示します。そのため、糖尿病の診断やコントロール状態を評価する指標として用いられています。ただし、赤血球の寿命が短くなる溶血性貧血や肝疾患では低値になるため、その場合は、HbA1cよりも短期(1~2週間)の血糖の状態がわかるグリコアルブミンを測定します。

◆異異常値からコレがわかる!

【高値(増加)】
糖尿病、耐糖能異常、腎不全、鉛中毒、アスピリン服用、アルコール中毒、高Bil血症など

【低値(減少)】
低血糖持続時、赤血球の寿命短縮(溶血性貧血・出血)、鉄欠乏性貧血治療開始後など


この記事はナース専科2016年7月号より転載しています。

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