【連載】「困った」を解決する!心電図の読み方のコツQ&A

心室性不整脈の分類と波形の特徴

執筆 田中喜美夫

田中循環器内科クリニック 院長

目次

Q.心室性不整脈は危険だと聞きました。どのように判読すればよいですか?

A.心室性不整脈は、心室を起源とする不整脈です。発生部位から興奮が伝播するので、ヒス束-脚-プルキンエ線維という高速道路は通りません。そのため、興奮が心室に行き渡るのに時間を要し、幅の広い、正常とは形の違うQRS波となります。

 心室性不整脈は、洞調律とは異形の幅の広いQRS波が特徴です。心室起源で正常の伝導路を通らないため、心室全体に電気信号が行き渡るのに時間を要し(QRS波が幅広)、興奮順序が異なります(QRS波が異形)。
 
 心室性不整脈には、心室性期外収縮と心室頻拍、心室細動があり(表)、究極は心室細動で、循環停止となります。

心室性不整脈

心室性期外収縮

 心室性期外収縮(以下、PVC)では、心房のリズムとは無関係に、正常QRS波ではない幅広で異形のQRS波がみられます。心室内からの異所信号発生が原因です。

 図1をみてください。3拍目まではP・PQ・QRS波は正常ですが、4拍目に、幅が広い形の異なるQRS波が、洞周期よりも早いタイミングでみられます。心室起源の電気信号なので、心室内の興奮伝導に時間を要し(幅広)、通常の経路を通らないので形が違います(異形)。
 
心室性期外収縮の例
 
 またPVCにも、心房性期外収縮(PAC)と同様に段脈(正常調律数回目に期外収縮1回のパターンを繰り返す)がみられます。
 
 図2の場合は、洞調律が1回みられた後、2回目はPVCというパターンを繰り返しています。PVCの2段脈です。
 
心室性期外収縮(2段脈)
 
 図3の場合は、洞調律2回で3回目にPVCが出現するパターンを繰り返しており、PVCの3段脈であることがわかります。
 
心室性期外収縮(3段脈)
 
 さらに、期外収縮が2連続以上発生することを連発といいます。
 
 図4の場合、3拍の洞調律の後、洞周期より早く、幅広で異形のQRS波が3連続で出現しています。これは、PVCの3連発です。

心室性期外収縮(3連発)

 図5では、PVCが4連発現れ、1拍洞調律を挟んで再び4連発となっています。PVC連発ではその周期も重要で、この場合PVCのRR間隔は10mm(0.4秒)で、これが持続すれば1500÷10=150回/分の心拍数となり、心室頻拍(VT)です。

心室性期外収縮(4連発)

 ちなみに、3連発以上で持続しないPVCを非持続性心室性頻拍(non sustained VT:NSVT)またはショートランといいます。
 
 PVCには、多源性と呼ばれるパターンもあります。2カ所以上に期外収縮の起源があるものをいい、心電図上は、心室内の電気信号の伝導のしかたが違うため形の違うPVCがみられます。
 
 図6でいうと、2、5、11拍目は下向きのPVC、7、8拍目に上向きのPVC(2連発)を認めます。形が違うということは、起源が違うPVCであることを示しており、この場合は2カ所の起源が読み取れます。

心室性期外収縮(多源性a)

 先行QRS波からT波頂上付近に出現する場合は、R on T型といわれ、早いタイミングで出現するPVCです。
 
 図7では、P・QRS・T波と正常波形が6拍連続し、6拍目のT波の頂上付近に幅広で下向きのQRS波がみられます。心室の収縮直後は心室筋が不安定な状態(受攻期)で、そこに刺激が入ると、心室細動(VF)をきたす危険性が高くなります(図8)。

心室性期外収縮(多源性b)

R on T型PVCから心室細動を発症した例

心室頻拍

 心室頻拍(以下、VT)とは心拍数100回/分以上で心室が興奮を繰り返す状態をいいます。心電図では、幅広のQRS波が連続してみられます。
 
 VTは、心機能の状態や基礎疾患等によって、血圧が保たれていて、無症状の例から意識消失をきたす例(無脈性心室頻拍:pulseless VT)までさまざまですが、心室細動(VF)に移行する場合があり、緊急対応が必要な不整脈です。
 
 図9でみると、下向き幅広のQRS波が繰り返し出現しています。RR間隔は8mm(0.32秒)で190回/分程度の心室頻拍となります。
 
心室頻拍
 
 図10は、QT延長からトルサード・ド・ポアンツ(torsade de pointes:TdP)という多形性のVTをきたしている例です。

トルサード・ド・ポアンツ(TdP)をきたしている例


column1 心室細動(VF)が起きる特別なリスクはありますか?
 心室性不整脈の究極の形は心室細動(VF)です。VFをきたすリスクがある状態は以下の2つです。病歴や症状、バイタルサインなど患者さんの状況を把握して厳重に監視しましょう。

●心疾患がある場合:虚血性心疾患、重症弁膜症、左心室機能不全、肺高血圧症など
●心臓を取り巻く環境が悪い場合:電解質異常、低酸素血症、脱水、感染症など
 
 ちなみに、心室性期外収縮(PVC)は健康で心疾患のない人にもみられる不整脈で、心室細動に移行することはないと考えてよいでしょう。
 
column2 電解質異常のある患者さんの場合、心電図はどのように変化するのですか?
 低カリウム血症、低カルシウム血症ではQT延長に注意します。QT時間が延長すると、収縮後の心室が不安定となり、トルサード・ド・ポアンツ(TdP)という特殊な心室頻拍(VT)が誘発されることがあります。


この記事はナース専科2017年6月号より転載しています。

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