【連載】早期介入がイイのはなぜ? 重症患者の経腸栄養Q&A

第3回 侵襲時の患者さんの腸管はどうなっているの?

執筆 鈴木宏昌

帝京平成大学 健康メディカル学部 医療科学科教授

Q.重症患者の腸管はどうなっているの?

A.腸管の血流は低下し、蠕動運動も抑制されますが、消化吸収機能は維持されています。

血流と運動の低下が顕著に

 侵襲時は、Q1の神経―内分泌反応によりカテコラミンが大量に放出されます。特に、出血性ショックなどの循環血液量減少性ショックではその反応が顕著ですが、他の侵襲でも同様にカテコラミンが放出され、皮膚や腸管の末梢血管は収縮して、重要臓器(脳・心)の血流を維持しようとします。当然、消化管の血流は低下します。また、腸管の運動も交感神経が優位になれば低下し、胃や腸管蠕動運動は抑制されています。重症患者、特にICUで循環管理を要する傷病者では、外因性のカテコラミン(ノルアドレナリンやドーパミン、ドブタミンなど)の投与が必要な場合もあります。

消化管に障害がなければ腸管内容の刺激で蠕動運動は起こる

 かつては、虫垂切除術などの開腹術でも「ガスが出るまで」「グル音が聴取できるまで」経口摂取は禁忌とされていましたが、現在は重症患者でも可能な限り早期に経腸栄養を開始することが望まれています。
 
 経腸栄養が可能になるには、①消化管の蠕動が可能である、②消化管内の栄養素が分解される、③腸粘膜から栄養素が吸収される状態で、消化管の通過障害や吸収障害がないという条件が満たされていることが必要ですが、早期経腸栄養(入室・術後・受傷後24~48時間以内)を行ったほうが、感染性合併症の頻度も死亡率も低下することが報告されています1)2)
 
 さらに、ICU入室6時間以内に投与を開始しても胃内残渣は増加しないことが示されています3)。もともと腸管には腸管筋層反射と呼ばれる自律性があり、腸管内容の刺激があれば自動的に蠕動運動が起こります。

 注意しなければならないのは、こうした反応は術前や発症前に消化管の通過障害や吸収障害がないことが前提であることです。そして、経腸栄養を早期に開始することは、急速に投与することとは違うということです。もともと投与量としては目標量の50%程度が推奨されている時期ですから、投与量は少なくすべきですが、本来のダイナミックな消化管の水分出納(図)を考えると、正常な消化管であれば十分に吸収する能力はあります。
 
消化管内における水の出入り
 


参考文献
1)Early vs. Delayed Nutrient Intake. Canadian Clinical Practice Guideline [serial on the Internet] 2015 Jun [cited on march 2013]. Available from: http://www.criticalcarenutrition.com/docs/cpgs2012/2.0.pdf
2)Doig GS,et al:Early enteral nutrition reduces mortality in trauma patients requiring intensive care:a meta-analysis of randomised controlled trials. Injury 2011;42(1):50-6.
3)Kompan L,et al:Is early enteral nutrition a risk factor for gastric intolerance and pneumonia.Clin Nutr 2004;23(4):527-32.


この記事はナース専科2017年5月号より転載しています。

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