【連載】早期介入がイイのはなぜ? 重症患者の経腸栄養Q&A

第8回 病態によって栄養剤の選択はどう異なるの?

執筆 鈴木俊繁

日本赤十字社水戸赤十字病院 救急科部長

Q.病態によって栄養剤の選択はどう異なるの?

A.成分、浸透圧、濃度など、病態に配慮して栄養剤を選択します。

糖尿病には血糖コントロールに有効な栄養剤も

 経腸栄養は、病態に応じて、投与する成分、濃度など適切な内容を選択します。栄養剤のなかには、病態に配慮した機能的な成分構成をとっているものもあります(表)。

病態別に用いられる経腸栄養剤
*オキシーパは販売中止となる可能性があります(2018年9月時点)

■急性膵炎
  Q4で述べたように、重症例であっても24時間から48時間程度の早期に経腸栄養を開始すれば、腸管機能の維持や感染性合併症を抑制するなどのうえで、静脈栄養より優位性があることがメタアナリシスで確認されています。そのため、遅くとも入院後48時間以内に経腸栄養を開始することが推奨されています。腸管に合併症があって使用できない場合以外は、経腸栄養を積極的に考慮しましょう。

 急性膵炎診療ガイドライン2015によれば、成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤いずれを用いても大きな差はない1)とされています。浸透圧や粘性などを考慮して、病態に応じて可及的早期に少量投与から始めましょう。
 
 この場合、経鼻チューブから投与されることが多いですが、チューブ先端はトライツ靭帯を越えた空腸内にあることが原則です1)。患者さんの状態によってチューブの先端を空腸内に留置することが困難な場合は、先端が胃内にあっても許容されるでしょう1)。一般的に、経鼻チューブの先端が空腸内にあることにこだわりすぎると経腸栄養の開始が遅れる2)ので、開始時には先端が胃内でもよいと思われます。

■水分制限時
 心不全や腎機能障害がある患者さんなどで、摂取できる水分が制限されている場合には、1mL=1kcalの栄養剤だけではなく、1mL=1.5~2.0kcalの濃縮タイプの経腸栄養剤を選択すると、少ない注入量でより多いエネルギー量を投与できます。

■糖尿病
 糖尿病の患者さんに対する栄養管理においては、高血糖に伴う症状や、感染症、創傷治癒遅延などの合併症を抑制する目的で、血糖値をできるだけ正常値付近にコントロールすることが大事です。あまり厳重な目標値を設定すると、低血糖を招く危険な因子となるので、目標値としては随時血糖の上限180mg/dL程度が現在のコンセンサスとされています2)
 
 また、血糖コントロールを目的とした経腸栄養剤は、平均血糖値やインスリン必要量などの観点から有利といわれています。さらに、十分量の食物繊維の摂取が血糖コントロールに有効であるとされています。
 
■重症外傷・熱傷
 外傷・熱傷による重症患者は、気管挿管や人工呼吸器による呼吸管理、および循環器モニターが必要となる場合が多く、加えて点滴ラインやドレーン類などが多く挿入されており、患者さんの身体所見が取りにくい状態です。そのようななかでも、他の重症例と同様、重症外傷・熱傷の患者さんに早期に経腸栄養を開始するメリットを考え、安易に点滴を選ばずに経腸栄養を検討します。

 その際、腸管が使える状態にあるか、消化管の通過障害や吸収障害がないか、観察がとても大切になります。加えて、侵襲に対する生体反応の正しい理解が求められます。重症病態では、生体の防御反応として異化が亢進していること、インスリン感受性低下による高血糖と耐糖能の低下が認められること3)を理解しておくことが重要です。栄養投与量は少なめのエネルギー量から始める2)ことの理論的な背景でもあります。
 


参考文献
1)急性膵炎診療ガイドライン2015改訂出版委員会:急性膵炎診療ガイドライン2015.金原出版,2015.
2)日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会:日本版重症患者の栄養療法ガイドライン.日集中医誌 2016;23:185-281.
3)並川努,他:侵襲早期の至適血糖管理.外科と代謝・栄養 2016;50(2):157-61.


この記事はナース専科2017年5月号より転載しています。

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