【連載】早期介入がイイのはなぜ? 重症患者の経腸栄養Q&A

第9回 経腸栄養開始後のアセスメントでは何に注意すべき?

執筆 鈴木俊繁

日本赤十字社水戸赤十字病院 救急科部長

Q.経腸栄養開始後のアセスメントでは何に注意すべきですか?

A.逆流や誤嚥のリスクに注意し、投与速度や血糖値、水分バランスを定期的にチェックします。

腹部の観察や胃内残留量で合併症の徴候をチェック

 経腸栄養施行時は、悪心・嘔吐、腹部膨満、腹痛などの消化器合併症が認められることがあります。これらは逆流や誤嚥などといった重篤な合併症を示唆する徴候1)なので、経腸栄養剤の投与速度、投与中の体位、胃内残留量を再度チェックすることが肝要です。そもそも投与前後で排便や排ガスがあるのかどうかについても常に気を配り、腹部の観察を怠らないようにしましょう。
 
 腹痛や排便時には、迷走神経の働きによって、意識を消失(失神)したり、血圧が低下したり、徐脈になったりする場合がある2)ので、重症患者の場合には特に、バイタルサインのチェックが重要です。

■血糖値
 血糖値については、経腸栄養施行中の高血糖や低血糖によって重篤な合併症が生じる可能性があるので、定期的に血糖チェックを行う必要があります。Q8でも触れましたが、重症病態では基本的に高血糖の状態であり、かつ、容易に低血糖になることが知られています。高血糖や低血糖による症状が疑われる場合に、いつでも血糖チェックを行える用意を整えておくことが必要でしょう。

■水分バランス
 投与水分量や尿量、発汗や不感蒸泄なども考慮したうえで、水分バランスをチェックすることが大事です。経腸栄養剤の水分量はおよそ85%である1)ことを押さえ、体重も定期的にチェックします。計測が難しい重症患者の場合は、臥床時でも体重測定ができる吊り下げ式体重計やストレッチャースケールなどの器具を活用します。

■電解質
 嘔吐や下痢などにより喪失が多い場合や腎機能障害がある場合、利尿薬を使っている場合、腹水や胸水などの体内水分貯留がある場合などには、ナトリウム(Na)やクロール(Cl)、カリウム(K)などの電解質異常を来たしやすいので注意が必要です(表)。

電解質異常と症状

■嚥下機能
 高齢者などの場合は、不顕性誤嚥に気をつけます3)。逆流があって誤嚥しても、咳嗽などの反射がないために気づかれない場合もあるからです。そのため、経管栄養の開始前後で嚥下機能もチェックしておくことが重要です。評価が難しい症例では、栄養サポートチームや言語聴覚士(ST)など、専門スタッフの力を借りるとよいでしょう。


参考文献
1)日本静脈経腸栄養学会,編:静脈経腸栄養ガイドライン 第3版.照林社,2013.
2)2011年合同研究会:失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版).
3)寺本信嗣:超高齢社会における誤嚥性肺炎の予防と治療.日本臨床内科学会会誌 2014;29(4):525-9.


この記事はナース専科2017年5月号より転載しています。

ページトップへ