1. トップ
  2. 看護記事
  3. 看護クイズ・読み物
  4. 書籍紹介
  5. 【書籍紹介】「燃えつきない自分」をつくる3つの発想

【書籍紹介】「燃えつきない自分」をつくる3つの発想

  • 公開日: 2018/9/6

看護師ほど陥りやすい「共感力」のワナ

 ストレスフルな社会に生きる現代人。とりわけ看護師をはじめとする医療職や対人の職業は過剰な共感を自分に課しやすい傾向があり、慢性的な疲労感や心当たりのない体調不良といった変調をきたす「共感疲労」という現象に陥りやすいことが指摘されています。

 本書は、看護師の職務上の必要なスキルとされてきた「傾聴・共感」が引き起こす共感疲労という現象を紐解き、「燃えつき症候群(バーンアウト)」の予防に迫ろうとしたものです。精神科医、心理療法家、僧侶がそれぞれの専門家の視点から、ストレス要因を遠ざける「慈悲喜捨」「健全思考」「レジリエンス」という3つの発想を提案しています。

「共感する看護」から「慈悲のある看護」へ

 まずpart1では、医療職の共感疲労について詳しく解説され、傾聴と共感がもたらした課題や、「共感」と「慈悲」の違いについて触れながら、共感から一歩進んだ「慈悲のある看護」への転換を促しています。仏教徒がめざす4つの心の状態(慈・悲・喜・捨)を四無量心といい、これは慈悲そのものと解釈されることもあります。燃えつきや共感疲労の予防には、特に「捨」の視点を取り入れることを勧めています。慈悲の考え方を身につけるための具体的な方法も掲載され、慈悲の極意に触れることができます。

「ねばならない思考」からの転換、自分をもてなす「健全思考」

 次にpart2では、看護師が臨床で抱きがちな「ねばならない思考」の転換には、自身に思いやりや優しさを向け、いたわる姿勢を基本とする「健全思考」を勧めています。喜びや幸せな気持ちを経験することは、前向きさや自分らしさを引き出すことにつながり、ケアをされる患者さんにもよい影響をもたらします。時間や場所を選ばず、手軽に実践できる「ビリーフワーク」の取り組み方も紹介されており、感情のストレス度チェックにも役立ちます。

仏教に学ぶ「苦悩」の対処法と幸せ感を生み出すヒント

 最後にpart3では、僧侶である著者が仏教の教えになぞらえ、本来人間に備わっている「レジリエンス(防衛や抵抗力)」を高め、幸せ感をつかむヒントを解説しています。精神療法の分野でも注目されている瞑想の理論に加え、五感を用いて身体をほぐす基本のレッスン、目標とする心の状態に導く4つの瞑想メソッドといった、具体的な習得方法も伝授しています。

 日頃の自分の状態を見つめ直すきっかけにもなり、セルフケアの実践に欠かせない多様な視点がちりばめられている1冊。ストレスから抜け出し、こころの元気を取り戻すための発想を取り入れてみませんか。


『3つの習慣で私が変わる 「慈悲喜捨」「健全思考」「レジリエンス」』
著:保坂 隆・川畑のぶこ・大下大圓
発行:日本看護協会出版会
定価:1,600円(税別)
判型:A5判
ページ数:176ページ

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

ポジショニングについてしっかりと学べる1冊

豊富な図で基礎から実践まで学べる  本書はセミナーや学会などで長年ポジショニングにかかわってきた田中マキ子先生が監修したポジショニングの基礎から実践まで必要な知識がまとめられている1冊です。改訂第2版となる今回は、スモールチェンジの効果など最新の知見も追加されています。

2024/2/7

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
8位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
9位

SIRS(全身性炎症反応症候群)とは?基準は?

*この記事は2016年7月4日に更新しました。 SIRS(全身性炎症反応症候群)について解説します。 SIRS(全身性炎症反応症候群)とは? SIRS(全身性炎症反応...

250839
10位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949