【連載】入院治療中の糖尿病患者さんの血糖コントロールが難しい理由 血糖コントロールの疑問Q&A

輸液へのインスリン製剤投与、混注時の注意点は?

執筆 藤田成裕

日本赤十字社長崎原爆病院 内分泌・代謝内科部長

Q.維持点滴内にインスリン製剤を混ぜることがありますか? また、そのとき注意することはありますか?

A.治療状況によっては混注することもあります。メリットもありますが、デメリットもあり、施設によっては行わないところもあります。インスリン製剤使用中の患者さんには、必ず血糖値測定を欠かさないことが大切です。

シリンジポンプを使うときのリスクと注意点を理解しよう

 絶食中の患者さんに輸液を行うことはよくあることです。輸液にはブドウ糖を含んでいるものも多いため、血糖上昇の原因となり得ます。ブドウ糖による血糖上昇を抑えるためにはインスリンの作用が必要ですが、このときにインスリン製剤の投与方法が問題となります。
 
 血糖値の上昇が軽度の場合は、スライディングスケール*によって対応することもありますが、これですべてに対応することはできません。この場合、インスリン製剤を経静脈的に投与する必要があります。やり方には、シリンジポンプを使用して持続的にインスリン製剤を使用する方法と点滴ボトル本体内にインスリン製剤を混注する方法があります。
 
 シリンジポンプを使用する方法は、生理食塩水49.5mL内に速効型インスリンを50単位混注することで50単位/mLの生理食塩水をつくります。これを時間当たりの流量で投与することで、インスリン製剤の投与量を調整することができます。血糖値に合わせ流量を調整することで、適切な血糖コントロールをすることが可能です。ただし同時に、シリンジポンプを用いた回路の設定やまめな流量調整などが必要となります。また、本体の輸液メニューが変更されると、含有しているブドウ糖の濃度や流量も変化するため、思わぬ高血糖や低血糖を生じてしまいます。
 
 一方、本体の輸液にインスリン製剤を混注する場合は、おおよそブドウ糖10gに対して速効型インスリンを混注します。本体に混注後、実際に血糖コントロールが十分に可能かは、血糖値を測定してみないとわかりませんので、これにスライディングスケールを併用します。スライディングスケールにかかるようであれば混注するインスリン製剤の増量を行い、徐々にスライディングスケールにかからないようにコントロールを行います。最初から多い量を混注してしまうと低血糖が生じた場合に、輸液全部を破棄する必要があるため、少ない量のインスリン製剤から混注していきます。
 
 なお混注した場合、インスリン製剤がボトル内に吸着する可能性があるため、混注したすべてのインスリン製剤が効果を発揮しているわけではないことにも注意が必要です。
 
 混注量を間違えることで低血糖が生じることが心配されるケースもありますが、これはインスリン製剤用の注射器が通常のものと異なっていることに伴うもので、注意が必要です。シリンジ内に投与するときも同様ですが、注射器の違いによる投与量の間違いには、気をつける必要があります。最近はボトルに入ったタイプのインスリン製剤を使用するケースが減ってきたことが背景にありますが、かかわる人たちが十分に気をつけること、そして何より血糖値をまめに測ることが最も重要であることは間違いありません。

 これらの方法には、両者ともに長所・短所があります。まず、本体中にインスリン製剤を混注する場合、間違って多い量を投与してしまうと低血糖を生じることとなります。別ルートで投与した場合では、本体の輸液をストップしたり高カロリー輸液が通常の末梢輸液に変更になった場合に、同時にシリンジポンプを止めずにおくと低血糖となることもあります(図)。

末梢輸液に変更になった際のインスリン製剤の投与法

 両者いずれについても血糖値を確実に測ることが基本であり、そこを理解していれば、いずれの方法にもメリットがあるため、対応可能とすべきでしょう。
 
*スライディングスケール法:血糖値を測定し、目標値との乖離具合によって次回のインスリン投与量を調節する血糖値コントロール法。


この記事はナース専科2017年11月号より転載しています。

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