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【連載】基礎から解説!いますぐ実践できる「がんの緩和ケア」

第6回 オピオイドによる副作用 便秘、嘔気、呼吸抑制etc.対策はしくみを知って行う!

執筆 重山千恵

広島大学病院緩和ケアセンター 緩和ケア認定看護師

Cancer kanwacare

<オピオイドによる副作用とは>
すぐ起こる便秘、嘔気のほか、眠気などへの副作用対策が必須

 がんの痛みの緩和には、オピオイドを使用する場合があります(本連載第2回「がんの痛みの種類と原因ごとの鎮痛薬を知ろう」に詳述)。オピオイドの三大副作用には、便秘、嘔気、眠気があります。そのほか、出現頻度は低いですが、呼吸抑制などの重篤な副作用もあります。

 便秘、嘔気は鎮痛効果が現れる前に出現するため、鎮痛が得られない状況で便秘や嘔吐に苦しむことになると、副作用による不快な症状のためにオピオイドへの抵抗感が強くなり、アドヒアランスが悪くなることがあります。そのため、オピオイドの投与にあたっては、必ず副作用対策を行うことが重要です。


*アドヒアランス:患者さんが治療方針の決定に賛同し積極的に治療を受けること

<副作用症状ごとの治療と看護>
オピオイドの各副作用に対する予防と対策

便秘

 オピオイドを使用する場合、便秘はかなり高い頻度で起こる副作用です。時間とともに薬理効果が減退していく耐性が、副作用の便秘についてはほとんど生じないため、下剤を継続的に使用するなどの対策が必要になります。

 特に、モルヒネ、オキシコドン、コデインは、腸蠕動運動の低下、腸管分泌抑制などにより便秘を生じさせます。便秘には耐性が生じないため、オピオイド使用直後より下剤の投与を行い、継続して投与することが必要です。

 便秘に対しては、便の軟化作用のある浸透圧緩下剤と、腸管の蠕動運動を亢進させる大腸刺激性緩下剤を併用することが基本です。このほか、オピオイドの副作用である消化管蠕動運動抑制を阻害する薬剤も有効です。

浸透圧性緩下剤
 腸管内腔液の浸透圧を高め、腸管内腔への水分の移行を促し、便の水分含有量を増加させる作用があります。
  例:酸化マグネシウム(マグミット®錠、マグラックス®錠)
  ※腎機能障害のある高齢者には投与しないようにします。

大腸刺激性下剤
 大腸の蠕動運動を亢進することで、便秘に対する効果を発揮します。ただし、消化管狭窄が疑われる場合や腸蠕動による腹痛が強い場合は、使用できません。
  例:ピコスルファートナトリウム水和物(ラキソベロン®内用液など)、センノシド(プルゼニド®錠など)

消化管蠕動運動抑制を阻害する薬剤
 スインプロイク®錠はオピオイド誘発性便秘症に対して使用される薬剤です。消化管の末梢μ受容体に結合してオピオイド鎮痛薬と拮抗することにより、オピオイドの副作用である消化管蠕動運動抑制を阻害します。

座薬と浣腸剤
 直腸内に便を認めるが、排出できないときは、テレミンソフト®坐薬やグリセリン浣腸液50%を使用します。

 便秘が改善しない場合は、オピオイドの種類を変更するオピオイドスイッチを考慮します。その場合、便秘の副作用が少ないフェンタニルへのオピオイドスイッチが検討されます。

嘔気・嘔吐

 嘔気・嘔吐は、オピオイドの投与初期や増量時によくみられる副作用です。数日以内に耐性により薬理効果が徐々に減退し、症状が治まってくることが多いです。

 嘔気・嘔吐が出現した場合、オピオイド以外に原因はないかを確認します。便秘が嘔気、嘔吐の原因となる場合もあるので、排便コントロールも確認します。

 制吐剤は、オピオイド開始と同時(または開始前)に予防的に投与することが望ましいです。制吐剤によってアカシジアの副作用が出現することがあるので、長期投与は避け症状を確認しながら、減量・中止をします。

 症状が改善しない場合は、オピオイドスイッチを考慮します。


*アカシジア:錐体外路症状の1つで、ドパミンD2受容体に作用する制吐剤による副作用として、ソワソワ、イライラしてじっとしていられない、足がムズムズするなどの症状が現れるもの

眠気

 眠気も、オピオイドの投与開始初期や増量時に現れることが多い症状です。早い段階で耐性が生じるため、通常、数日以内に軽減または、消失します。

 心地よい眠気の場合は経過観察とし、不快な眠気や日中何かをしたいのにできないなど、生活に支障がある場合は、疼痛の有無を観察して、投与量の調整、オピオイドスイッチを検討します。

 腎機能が低下している患者さんでは、モルヒネの使用によって活性代謝物であるM6Gが蓄積することも眠気の原因となるため、オキシコドンよりも症状発現の頻度が高くなる可能性があります。

せん妄

 がん患者さんには、さまざまな要因によってせん妄などの認知機能障害が現れるため、オピオイドによるせん妄と他の原因との鑑別が重要です。特に高カルシウム血症によるせん妄は見逃されやすいので注意が必要です。

 オピオイドによる幻覚・せん妄は、投与開始初期や増量時にみられることが多いです。

 代謝機能が低下している高齢者や肝機能障害、腎機能障害のある患者さんには、モルヒネ代謝物によるせん妄が発生しやすいといわれています。腎機能低下などの身体的な状態の変化により、モルヒネが過量となることがあるので注意が必要です。モルヒネによるせん妄が強く疑われるときは、減量・中止、オピオイドスイッチを検討します。

呼吸抑制

 オピオイドによる呼吸抑制は、痛みのある患者さんに対して痛みに合わせて少量ずつ適切に使用している場合には起こることはほとんどありません。原則を外れる過量投与や、注射によって血中濃度を必要以上に上昇させた場合、肝機能・腎機能低下、全身状態が悪化した場合、神経ブロックなどを併用して突然に痛みが減少した場合に、呼吸抑制が起こる可能性があります。

 オピオイドの作用は「鎮痛」→「鎮静」→「呼吸抑制」の順でみられますが、フェンタニルの場合は鎮静作用が比較的少ないため、フェンタニルの過量投与の場合、突然呼吸抑制を来たすことがあり注意が必要です1)。貼付剤は安易に増量しやすいため、フェントス®テープやデュロテップ®MTパッチなどの貼付剤を使用する場合は、増量時の注意が必要です。

オピオイドの副作用に対する緩和のポイント

副作用により、オピオイドを継続できなくなることを避けるため、副作用対策は不可欠です。オピオイドを安全に導入するためには薬剤の作用と副作用を把握し、予防と対策を行うことが大切です。

患者さんが安心してオピオイドを使用できるように患者さん・家族に十分な説明を行います。

患者さんが嘔気、便秘を訴えても、すぐにはオピオイドの副作用と結論づけずに、オピオイド以外の原因(消化管閉塞、頭蓋内圧亢進、高カルシウム血症、感染症、高血糖、尿毒症、肝不全、脳転移、抗がん剤、抗菌剤、鉄剤などの薬剤など)を検討し、病態に応じた治療をすることが必要です。  


【引用・参考文献】
1) 佐藤拓道:薬物療法 オピオイドの副作用対策.がん看護2007;12(2):166-171.
●淀川キリスト教病院ホスピス編:緩和ケアマニュアル 第5版.最新医学社,2007.
●日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン委員会:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年版.金原出版,p57‐63.(2018年8月13日閲覧)https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2014/pdf/pain2014.pdf

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