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超高齢化社会の到来とともに注目される ATTRアミロイドーシスを取り巻く現状と課題とは

Gakkai report

6月10日の「世界ATTR啓発デー」に先立ち、6月6日に大手町サンケイプラザにて、ファイザー株式会社によるATTRアミロイドーシスに関するプレスカンファレンスが開催されました。第一部は、「進歩目覚ましい神経難病、ATTRアミロイドーシス診療最前線」と題し、国際アミロイドーシス学会理事長で、熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野の安東由喜雄教授が、第二部では患者・家族の会会長が講演しました。そのなかの第一部をレポートします。


希少疾病ATTRは、遺伝性の難治性疾患

 安東先生はまず、「ATTRアミロイドーシスは非常に難病で、患者会や製薬会社など、いろいろな関係者が一体となりここまで来たが、まだまだいろいろな問題があるということを話したい」と冒頭に述べました。

 アミロイドーシスとは、身体の中に溶けていたたんぱく質が、なんらかの機転により、βシート構造というナイロンのような構造に変わることで、アミロイドができる疾患であること、そのために「ナイロン蓄積病」とも言われています。

 アミロイドーシスには「全身性アミロイドーシス」と、1つの臓器にアミロイドが溜まる「限局性アミロイドーシス」の2種類がありますが、全身性アミロイドーシスの中の家族性アミロイドポリニューロパチー(以下、FAP)と、老人性全身性アミロイドーシスについて説明すると述べました。

 FAPとは、トランスサイレチン(以下、TTR)の遺伝的変異によって引き起こされる全身性の遺伝性アミロイドーシスです。未治療の場合、FAPは発症後10~15年で死に至る進行性の重篤な疾患です。

 FAPの症状としては、「消化器症状では流れるような下痢、上肢のしびれなどの末梢神経障害、たんぱく尿などの腎障害、手根管症候群などの整形外科的症状などが全身性アミロイドーシスの典型です」と安東先生は説明します。

 FAPは、1952年にポルトガルの医師により報告され、日本では1968年に熊本県北部に大きな患者集積地があることが報告され、その後、長野県にも大きな集積地があることが報告されました。
現在、TTRの遺伝子変異は日本に50種類ありますが、熊本県と長野県に多いのが、30番目のバリンがメチオニンに変異したタイプ(Val30Met型)です。世界では安東先生が知る限り「147種類の変異体が見つかっている」そうですが、その中でも一番多いのが30番目の変異です。
 さらにポルトガルのFAP患者さんと、日本の集積地出身のFAP患者さんで、TTR遺伝子の変異体が類似していることがわかりました。「おそらく大航海時代にポルトガル人が日本に来て、遺伝子を残していったのであろうと考察している」と話しました。

全国各地からFAPの報告が相次ぐ

 近年、集積地とは全く関係ない30番目のバリンがメチオニンに変異したタイプが、日本全国にあることが「Brain」という雑誌に報告されました。さらにFAPは、ある県にフォーカスされた疾患ではないことがわかり、世界的にも注目され、また世界でも同じようなことが起こっています。

 集積地のFAPの発症年齢は20~30歳代で「若年発症」と呼ばれているのに対し、それ以外のFAPは家族歴がない人が約半数以上、50歳以降の発症であることから「高齢発症」と呼びます(表1)。

表1

若年発症 高齢発症
集積地(熊本、長野)ポルトガル 非集積地(全国各地域)スウェーデン
発症年齢 20〜30歳代 50歳以降
浸透率 90%以上 約50%
自律神経症状 初期から 進行期
心経症状 進行期 初期から

 また、安東先生は「なぜ、FAPが全国で増えてきたかというと、治療薬ができ、肝移植で救われるようになったため、多くの患者さんや医師がこの病気を疑うようになったからだ」と言います。
 
 この6年間に、国内初のTTR変異が6種類、世界初が6種類と、どんどん新しいタイプのFAPが見つかっています。さらに、遺伝的な変異をしたTTRだけにとどまらず、たんぱく質がアミロイド化する現象が起きています。

 安東先生は、「加齢により正常のTTRがアミロイドをつくり、老人性全身性アミロイドーシスを引き起こすという事実がある。我々の調査で、200例ぐらいの心臓のアミロイドの沈着をみると、80歳以上の15%の人の心臓に、ワイルドタイプの正常のTTRが溜まっていることがわかった」と説明しました。

 これまでは遺伝的に変異したTTRが注目されましたが、今はむしろ老人性全身性のアミロイドーシスが注目されています。「これにタファミジスという薬が効いてくれれば、超高齢化社会の中でこれから非常に役立つと思う」と話します。

FAPに対する治療法

 変異型TTRは95%以上が肝臓で産生されることから、1990年にFAPの治療法としてスウェーデンで肝移植が初めて行われ、その後日本でも部分生体肝移植が行われるようになり、10年生存率が100%という疾患になりました1)。しかし、一部の症例では、緑内障や心筋症などの臨床症状は肝移植後も進行します。

 そこでタファミジス(TTR四量体安定化剤)という薬剤が開発されました。TTR四量体は構造が不安定になると単量体になります。これが前アミロイド状態になり、アミロイドたんぱく質になるため、TTR四量体が単量体へ解離することを抑制、つまりしっかりと結合させ、進行を抑制するという薬剤です。

 ここで安東先生は、31歳男性の症例を紹介しました。この人は、「劇症型FAP」といわれるタイプで、発症からわずか数カ月でどんどん下痢、便秘が進み、尿が出にくくなってきました。そこにタファミジスを投与し、その後、肝移植を行った結果、車椅子に乗っていた人が歩けるようになりました。安東先生は「タファミジスと生体肝移植の2つを組み合わせたことが大変よかった」と述べました。

 そして最後に「アミロイドーシスの早期診断には、症候から本疾患を疑い、組織からアミロイド沈着を検出することが重要。神経は一度変性してしまうと、元に戻らないため、早期の治療が大切で、そのためには早期診断が重要である」と結びました。


【引用・参考文献】
1)Yamashita T, et al:Long-term survival after liver transplantation in patients with familial amyloid polyneuropathy.neurology 2012;78(9):637-43.

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