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【連載】基礎から解説!いますぐ実践できる「がんの緩和ケア」

第7回 不安・不眠|強く現れたときにすぐ介入できる日常的な精神ケアとは

執筆 槙埜良江

広島大学病院緩和ケアセンター がん看護専門看護師

Cancer kanwacare

<不安・不眠とは>
強いストレスを受けた際に生じ、がん患者さんでは適応障害につながる例も多い

 不安は、人間の感情の1つで、「脅威を感じる状況では正常な情動反応」1)です。

 ほとんどのがん患者さんは、がんの診断から続く各過程で不安や不眠を体験します。不安や落ち込む状態が長引き、日常生活に影響をきたすほどであれば適応障害としての対応を検討します。適応障害とは、「心理的ストレスを受けた際に、予想されるよりも強い不安や抑うつを呈し、日常生活や仕事上で支障をきたすもの」2)です。がん患者の20%ぐらいが適応障害やうつ病を経験する3)といわれています。

 不眠(または熟睡感がない状態)も、がん患者さんに限らない症状ですが、その原因に不安や身体的苦痛があります。また、不眠や睡眠覚醒リズムの乱れはせん妄の初期の症状としてみられることもあり、その鑑別には注意が必要です4)。がん患者さんの不安や身体的苦痛を理解し、不眠などの症状をアセスメントすることが重要です。以下に筆者が介入したがん患者さんの不安や不眠に関する主な言葉(表1)を紹介します。

表1 がんの過程における不安や不眠に関する患者さんの言葉
がんの過程における不安や不眠に関する患者さんの言葉

<アセスメント>
日常生活に影響を及ぼしていないか継続的に確認する

 不安や不眠は日常的に体験することでもあり、がんという重い病気であれば当たり前のことと患者さんや家族はとらえがちです。痛みなど身体的問題と同様に医療者に伝えてもよい症状であると知らなければ、患者さんは表現するのを控えることがあります。また、患者さんは、家族に心配かけさせたくないという思いから一人で不安を抱えていることがあります。

 不眠に対しては、昼寝をするなど、患者さん自身が何とかしようと対処することもあります。不安で眠れず、眠れない間に病状悪化を想像して不安になる、という悪循環に陥ることもあり、不眠が続くと体力消耗につながります。また、不眠は、ほとんどの精神疾患に伴う症状4)といわれており、精神疾患の発見につながる症状として重要視すべきです。不安も不眠も、日常生活に影響を及ぼす程度になれば治療の対象になります。

 看護師は、不安と不眠の症状に注意を払い、患者さんが一人で不安を抱えていないか、眠れているか、日常生活に影響をきたしていないかを継続的に確認し、不安や不眠をまねく身体的苦痛を有していないか観察します。がん患者さんの不安の程度を客観的に5段階で評価するSTAS-J(Support Team Assessment Schedule Japan)(表2)を用いて専門的ケアの必要性をアセスメントすることもあります。

表2 STAS-J評価表
STAS-J評価表
STASワーキンググループ,編:STAS-J(STAS日本語版)スコアリングマニュアル第3版.p.24,日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団,2007.(閲覧2018年9月18日)http://plaza.umin.ac.jp/stas/stas_manualv3.pdf より作成

 不安について、「通常の不安と病的な不安を区別するポイント」(表3)、不眠の観察ポイント(表4)を示します。

表3 通常の不安と病的な不安を区別するポイント
通常の不安と病的な不安を区別するポイント
清水研:7 不安.小川朝生,他編:精神腫瘍学クリニカルエッセンス.p.67,創造出版,2012.より引用

表4 睡眠の観察ポイント
睡眠の観察ポイント

<すぐ実践できる看護>
症状が現れたら、医療者に伝えることが大切

 不安や不眠は、がんの診断時から再発、終末期に至る各過程で出現しやすいため、まずは、患者さんが医療者にその都度伝えることができるよう、不安や不眠も重要な症状であると説明することが必要です。看護師はその症状が日常生活に影響を及ぼす程度かどうかをアセスメントし、必要であれば、早期に精神の専門家につなぐように調整します。
 

不安・不眠の緩和ケアのポイント

不安や不眠は、症状が悪化しないよう看護師の継続的なモニタリングや必要時の専門家への連絡・調整が重要です。


【参考文献】
1) 宇佐美しおり,他編:不安・焦燥.精神科薬物療法.本専門看護師協議会,監:精神看護スペシャリストに必要な理論と技法.p.108,日本看護協会出版会,2009.
2)大阪巌,編著:11適応障害.苦痛症状+治療・処置別 そのまま使える緩和ケア患者説明ガイド.p.86,メディカ出版,2017.
3)小川朝生:がん患者さんとご家族の心のケア.大腸がん情報サイト.
(閲覧2018年9月18日)http://www.daichougan.info/interview/ogawa01_02.html
4)上村恵一,他編:不眠.がん患者の精神症状はこう診る 向精神薬はこう使う.p.46,じほう,2015.
●STASワーキンググループ,編:STAS-J(STAS日本語版)スコアリングマニュアル第3版.日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団.2007.(2018年9月18日閲覧)http://plaza.umin.ac.jp/stas/stas_manualv3.pdf
●小川朝生,他編:精神腫瘍学クリニカルエッセンス.創造出版,2012.
●厚生労働省健康局:健康づくりの睡眠指針2014.2014年3月.(2018年9月18日閲覧)http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf 
●日本サイコオンコロジー学会教育委員会精神腫瘍学の基本教育に関する小委員会:気持ちのつらさ.(2018年9月18日閲覧)www.jpos-society.org/ver1/JP0S基本教育気持ちのつらさスライド公開ver2.0.pdf

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