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【連載】Nursing 最前線 ―看護の現場をリポート―

認定看護師が中心になって 認知症患者さんに対応 センターの開設で 院内体制もさらに充実<社会医療法人財団大和会武蔵村山病院>

  • 公開日: 2018/10/15
  • # 注目ピックアップ
  • # 看護師インタビュー

「生命の尊厳と人間愛」を理念に「市民に信頼される市民のための総合病院」を目指している武蔵村山病院では、「認知症疾患医療センター」を開設するなど、認知症患者さんへの取り組みに力を入れています。同センターでは、認知症に対する保健医療水準を向上させるため、医療・介護の連携を図ることで、認知症の鑑別診断、合併症や周辺症状への対応、専門医療相談などを実施しています。同院の取り組みについてご紹介します。


院内認知症対策委員会メンバーの写真
「院内認知症対策委員会」のメンバー(2017年当時)。前列左から5人目が坂牧恵看護師。同院では認定看護師は紺色のナース服を着用し、認定看護師の「見える化」を図っている。右下の写真が小栁貴子看護部長。

 認知症対策に力を入れている東京都では、各区市町村ごとに「認知症疾患医療センター」を整備しています。同院では2011年に「もの忘れ外来」を開設して以来、鑑別診断に力を入れていたことや、認知症患者のケアをチーム活動で対応していた実績があることから、東京都の応募に積極的に手を上げ、2015年9月に東京都の指定を受けて同センターを開設しました。

 センター開設当時、認知症看護認定看護師であり、センター専従相談員として活動した副師長は、「当院の入院患者は高齢者が多く、身体合併症のある認知症患者も多かったため、院内全体で認知症対応に対しての意識レベルは高いものがありました。また、もの忘れ外来を開設していたこともあり、センター申請への手上げはごく自然な流れでした」と言います。

 同センターは、センター長(神経内科医師)、専従相談員(認定看護師)、MSW1人、臨床心理士1人などを配置しているほか、各部門からの協力も得て、放射線医師や理学療法士、作業療法士、薬剤師などの多職種で対応する体制が構築されています。専従相談員には、副師長の後を受けて坂牧恵看護師(認知症看護認定看護師)が就き、活動の幅がさらに広がりつつあります。「『もの忘れ外来の患者家族会』や地域に向けての『オレンジカフェ(認知症カフェ)』、さらには認知症初期集中支援チーム(市の委託事業)など、相談業務以外にも活動が増えました」と話す坂牧さんの言葉にも、活動の充実ぶりがうかがえます。

療養写真
坂牧看護師が企画した「療養病棟の夏祭り」。患者の表情が見違えるほど明るくなった。

療養写真
副師長のアイデアで開始した「院内デイ『つむぎ』」での体操風景。

早期鑑別診断・早期治療を呼び掛け市民講座や家族会、電話相談も実施

 同センターの活動の1つである「もの忘れ外来」(完全予約制)の年間初診患者数は、約150人を超えます。同外来では「1人ひとりの患者さんに時間をかけるのが特徴」(坂牧さん)であり、認知症の程度が進んだ患者さんよりも、グレーゾーンから初期の患者さんが多いといいます。同院には精神科がないため、精神症状や行動症状が強く、入院が必要な患者さんには提携精神病院を紹介していますが、「国も認知症施策に力を入れていることから、早期の鑑別診断・早期治療の流れができてきたと思います」と副師長は言います。

 さらに同センターでは「認知症市民公開講座」を年4回シリーズで開催し、市民に早期の鑑別診断を呼び掛けていることも、この流れにつながっています。隔月で行っている「もの忘れ外来の患者家族会」は、認知症患者の家族として同じ悩みをもつ人が意見交換する場として、参加者からも好評を得ています。

「もの忘れ電話相談」は、看護師のほか、精神保健福祉士、社会福祉士が交代で担当。「もの忘れが気になるが受診したほうが良いか?」「運転免許更新時の診断書を書いてもらえるのか?」など、1カ月平均約300件の相談を受けています。「認知症が進み、運転免許の更新をあきらめざるを得ない方には、バス路線や通販の情報を提供したり、ヘルパーの調整も行っていますが、まさに、生活支援そのものです」と副師長。認知症患者やその家族が集い、お茶を飲みながら交流を深める「オレンジカフェ」も隔月で開催していますが、毎回10人ほどの参加があり、地域にも定着してきています。

坂牧恵さんの写真
患者家族に対して面談する坂牧恵さん

「院内認知症対策委員会」メンバーをはじめリンクナースもケア水準の向上に貢献

「BPSDなどの症状を落ち着かせるためには、薬だけではなく、レクリエーションやリハビリを取り入れて、ほかの人と楽しく交流してもらうことが必要です」(副師長)との考えから開始したのが「院内デイ」です。認知症看護認定看護師を中心に、多職種が連携して週2回、2時間の集団レクを行っています。

「ただ楽しいだけではなく、季節のことや地域のこと、その人がかつて打ち込んだことや趣味などを取り入れて、脳を刺激することを心掛けています」(坂牧さん)。また、酸素や点滴ポンプが付いている患者さんは院内デイに参加することが難しいため、これらの患者さんを対象にした「病棟レク(院内デイミニ版)」を実施するなど、細かい対応にも気を配っています。

 これらの活動のほかに、多職種による「院内認知症対策委員会」(メンバー15人)が組織されているのも特徴です。各病棟の認知症ケアの水準を高めるため、リンクナースとして活動してもらい、多職種が抑制件数や困難事例のなどを話し合っています。まさに、病院を挙げて認知症患者への対応(ケア)に取り組んでいることの表れです。

「“認知症は認知症看護認定看護師が対応すればいい”ではなく、現場の看護師すべてが対応できるようにするのが私たちの努め」と副師長は言います。また坂牧さんも「認知症患者さんやご家族の悩みをできるだけ受け止めて、それにどう対応していくか。私たちの業務にこれで完全というものはありません」と言い、積極的に今後を見据えています。

 看護部長であり、糖尿病看護認定看護師でもある小栁貴子さんは、これら認知症看護認定看護師の活動について「彼らの活躍には本当に満足しています。私が考えていることをすぐに具現化してくれます。100点満点をあげてもいいですね」と話し、日ごろからの高い信頼がうかがえました。

認知症対策委員会の様子の写真
認知症対策委員会の様子。活発な意見交換が行われている。

DATA

社会医療法人財団大和会 武蔵村山病院
東京都武蔵村山市榎1-1-5
開設●1951年
病床数●300床
職員数●239.7人(常勤換算)
看護配置●7:1
日本医療機能評価機構認定病院/東京都地域救急医療センター/地域連携型認知症疾患医療センター/東京都女性活躍推進大賞受賞
社会医療法人財団大和会武蔵村山病院の写真


ニプロ株式会社発行:看護情報誌「ティアラ」2018年10月(no.118)より転載

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